はじめに
アイリスオーヤマ(仙台市)が、働き方改革の一環として、「会社内で座ったままのパソコン作業は禁止」というルールの導入を始めました。果たして真の目的は何なのでしょうか。
集中力が養えるわけがない
「今月中旬から、パソコンを立って使うための「スタンディングテーブル」の導入を始めた」とのことです。しかし、スタンディングテーブルの設置のために無駄にスペースが割かれるのがもったいないと思います。パソコンを必要とする作業に移行するときに席を立つ動作が無駄なような気がします。「立ちっぱなしだと疲れるため、その作業にパソコンが必要かを見極めるようになった」とのことですが、社員を疲労させるようにわざわざ誘導しなくとも、座った状態でその必要性を見極めることは可能だと思います。そこまでしなければ、無駄なパソコンいじりが減らないほどモラルハザードが横行していたのでしょうか。
クリエイティブになるはずもない
豊かな発想や斬新的なアイディアは潜在的阻害要因が少ない時に生じやすいことが心理学の研究から明らかにされています。 潜在的阻害要因の代表的なものに、長時間労働による睡眠不足が挙げられます。立ち作業による足の筋肉への乳酸の蓄積が潜在的阻害要因になることは明らかでしょう。
アイリスオーヤマの言うパソコン立ち作業の主な狙い
日本経済新聞は、アイリスオーヤマのパソコン用スタンディングテーブル導入について、プレスリリースを掲載しています。
同記事は、パソコン立ち作業の主な狙いとして次の3点を挙げています。
1.集中力を高める
パソコン用スタンディングテーブルを導入することで集中力と作業効率を高め、労働生産性の向上を図ります。
2.独創的なアイデアを創出する
立って作業をすることで眠くなることを防ぎ、独創的なアイデアの創出を促進します。
3.健康の維持
欧米諸国を中心に長時間の着座による健康への影響が懸念されています。立ってパソコン作業を行うことで、血流と代謝が改善され、健康の維持に繋がります。
(参照元:アイリスオーヤマ株式会社プレスリリース)
上記3点の狙いを考える
集中力を高めることについて
先ほども言ったように、足の筋肉への乳酸の蓄積により、集中力が散漫になる恐れがあります。
独創的なアイディアの創出について
眠くなるのを防ぐためなら、長時間労働を抑制し睡眠不足を解消すれば良いだけだと思うのですが、どうでしょうか。
健康の維持について
確かに、VDT作業による健康障害が指摘されて久しいですが、多くは、眼疲労によるものです。マウス操作による肩、上肢等への負担もあります。立っていても、眼疲労やマウス操作による疲労を防ぐことはできません。さらに、ずっと立ったままでパソコン作業を行うと、肩のみならずふくらはぎや太ももの血流までが阻害されます。
まとめ
世界遺産の比叡山延暦寺では、常行三昧という修行が行われています。これは、常行堂と呼ばれるお堂の中で90日間、阿弥陀仏を念じながら昼夜歩き続けるという修行です。24時間行うので常行と呼ばれています。90日間、決して坐ることができません。休む際は、天井から下げられた紐につかまって休むそうです。
比叡山延暦寺で修行した後であれば、パソコンスタンディングも楽勝でしょう。