Mesoscopic Systems

働くルールを理解してこれからの働き方について考えよう!

怒鳴り散らしながら雨漏りのある家に引っ越しを強制するパワハラ

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はじめに

 三重県南伊勢町で地域おこし協力隊員として活動していた30代女性が、2017年6月29日、町に慰謝料など約310万円の損害賠償を求め、津地裁伊勢支部に提訴しました。女性は、町が指定した住宅に入居せずにいると、上司らから「なぜ引っ越さないんだ」などと怒鳴られたり机を蹴られたりしたといいます。女性はその後、ストレスによる適応障害となり休職していました。 因みに、町が指定した住宅は、雨漏りのある家だったそうです(参照元:『中日新聞』2017.06.29)。

人を住まわせる前に、雨漏りはちゃんと直しておこう

 厚生労働省が定めるパワハラの行為類型に次の6つがあります。

①暴行・傷害(身体的な攻撃)

②脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)

③隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)

④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)

⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)

⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

 本件パワハラの行為類型は、④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)に最も近いと思います。また、⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)に該当する可能性もあります。ちゃんと人が住めるような状態に体制を整えてから、入居要請をしましょう。

地域おこし協力隊について

 地域おこし協力隊とは、総務省が2009年に創設した制度で、推進要綱には次のように書かれています。

事業概要:

 地方自治体が都市住民を受け入れ、地域おこし協力隊員として委嘱し、一定期間以上、農林漁業の応援、水源保全・監視活動、住民の生活支援などの各種の地域協力活動に従事してもらいながら、当該地域への定住・定着を図る取組について、地方自治体が意欲的・積極的に取り組むことができるよう、総務省として必要な支援を行う。 

地域おこし協力隊員:

 地域おこし協力隊員は、おおむね1年以上3年以下の期間、地方自治体の委嘱を受け、地域で生活し、農林漁業の応援、水源保全・監視活動、住民の生活支援などの各種の地域協力活動に従事する者をいう。

 要は、過疎地域の地方公共団体が国から補助を受けながら、都会の若者を受け入れて各種の地域協力活動に従事してもらうという制度です。せっかく都会から若者が来たのだから、生活に支障をきたさないよう地域としてサポートすべきでしょう。

雨漏り診断士について

 雨漏り診断士という資格があるのをご存知ですか。特定非営利活動法人 雨漏り診断士協会というところが認定している民間の資格で、2017年5月1日現在、606名の有資格者がいるそうです(雨漏り診断士協会ホームページ参照)。南伊勢町も雨漏り診断士に診てもらっていたら、このような無用のトラブルは発生しなかったのではないでしょうか。

まとめ

 本件で、筆者が思ったことは、何がきっかけとなってパワハラが発生するか予測がつかないということです。地方には、自然豊かで素晴らしいところがたくさんあると思います。しかし、せめて雨露を凌げなかったら誰も来てくれないでしょう。