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電通事件:違法残業の故意性の認識を立証するにはどうしたらよいか

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はじめに

 最近は、森友学園を巡る報道ばかりで、電通の長時間労働の報道はめっきりと減りました。と思っていたら、次のような報道がありました。

広告最大手・電通の本支社で違法な長時間残業が続いていた問題で、厚生労働省は電通の関西(大阪市)、中部(名古屋市)、京都(京都市)の3支社の当時の幹部らと法人としての同社を、今月末にも労働基準法違反(長時間労働)の疑いで書類送検する方針を固めた(出典『毎日新聞』2017.04.08)。

 記事には厚生労働省とありますが、具体的には大阪・愛知・京都の3労働局だと思います。3労働局が、地方支社に対して送検方針を固めたとのことですが、電通事件がまだ解決されたわけではありません。そこで、今回は電通事件について再考し、長時間労働を抑制するにはどうしたら良いか考えます。

電通では何が問題だったのか

 報道によると、高橋まつりさんが勤務していた当時残業時間の上限は月70時間とありました。70時間という数字は厚生労働大臣が定める基準(月45時間)を大幅に上回っているので、特別条項付き36協定が締結されていたものと予想されます。

 報道によると、実際には月100時間を超える残業もあったそうです。 

www.sankei.com

 月100時間というと、長時間労働による過労死が発症する可能性が高くなる数字です。健康被害を防止するため、労働者が申し出れば労働安全衛生法の規定により、医師による面接指導が義務付けられています。高橋さんは、上司から残業時間の過少申告を求められていたようです。そのため、東京労働局が法人としての電通と高橋まつりさんの直属の上司を労働基準法違反の疑いで書類送検に踏み切りました。

故意性の認識の立証が難しい!?

 電通東京本社の件では、東京労働局は高橋まつりさんと同僚男性以外の従業員に対する違法残業の立件は断念しました。違法性を伴う指示であることの認識が上司にあったということの立証が困難だったようです。時間外労働時間の過少申告の強制も、36協定で決められた延長時間を上回る残業をさせることも労働基準法違反です。前者は、労働基準法37条(時間外労働の割増賃金に関する規定)、後者は、労働基準法32条(法定労働時間に関する規定)に違反します。したがって、上司からこれらのことを指示されたら、違反法条を示し違法性を伝え拒否すればよいのです。

 拒否したにもかかわらず、上司がさらにこれらを指示したら、上司に違法残業の故意性の認識があったことを立証できることになります。だからこそ、働く者自身が労働法の知識を身に付ける必要があるのです。と同時に、自分が勤務する会社の36協定の内容を知ることは何よりも大切なことなのです。