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温泉宿に少女を派遣したとして労働基準法違反で社長ら逮捕

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はじめに

労働基準法違反の場合、監督署が是正勧告の上悪質な事例について書類送検を行う場合がほとんどですが、先月末、同法違反による逮捕事例が発生しました。 

女子高校生らを箱根の温泉宿で接客させたとして、県警少年捜査課などは先月30日、小田原市のコンパニオン派遣会社社長らを、労働基準法違反容疑で逮捕した。逮捕容疑は今年4月、箱根町の温泉ホテルに、当時16歳と17歳の少女をコンパニオンとして計3回派遣し、宴席で接客させたとしている。

参照元:毎日新聞2017年8月31日 地方版

労働基準法では年少者をどのように定めているか?

労働基準法では、社会経験に乏しく危険有害業務に対する理解が不足している年少者に対して、一般労働者とは異なる特別の保護規定を定めています。

労働基準法では、年少者を「満18歳未満の者」と定めています。

したがって、今回の事例のように、16歳と17歳の少女は「年少者」に該当します。

また、満15歳年度末までにある者、すなわち、義務教育課程を修了していない年少者を「児童」と定義し、さらに特別な保護規定を定めています。

今年の3月には、有料放送局WOWOWが6歳の子役を、深夜まで「東京すみっこごはん」というドラマの撮影で働かせていたという報道がなされ問題になりました。

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危険有害業務の就業制限

労働基準法は、次のように、年少者に対し、危険有害と認められる業務への就業を禁止しています。

労働基準法62条

使用者は、満十八才に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。

2  使用者は、満十八才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。

具体的にどのような業務が該当するかについては、年少者労働基準規則第8条に限定列挙されています。

今回の事例は、この第44番目の、「酒席に侍する業務」に年少者を就かせたため、労働基準法62条違反として、使用者が逮捕されました。

労働基準法62条に違反した場合、使用者は六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処せられます。

年少者の保護規定(労働時間その他)

昨今、長時間労働が問題になっていますが、年少者の労働時間等に関しては、特に厳しい規定が設けられています。

ここでは、年少者の労働時間・休憩・休日・深夜業の就業制限について論じます。

労働時間・休日について

年少者には、次の規定は適用されません。

  • フレックスを含む変形労働時間制
  • 36協定による時間外・休日労働
  • 常時10人未満の一定の業種に適用される、週44時間の法定労働時間の特例

特に2番目は重要で、年少者には残業をさせられないと念頭おかれると良いです。

休憩について

休憩には、①労働時間の途中に与えられなければならない②一斉に与えられなければならない③自由に利用させなければならないという3原則があります。

一般労働者に対しては、運輸交通業・商業・保健衛生業など一定の事業において一斉付与の原則が適用されません。

ところが、年少者に対しては、これらの事業においても休憩の一斉付与の原則が貫かれます。

すなわち、どのような事業においても、年少者に対しては休憩を一斉に付与しなければならないことになっています。

また、ある一定の職種に就いている一般労働者に対しては、休憩時間を与えないことができるとされています。

しかしながら、年少者に対しては、例えこれらの職種に就いていたとしても、休憩を付与しなければなりません。

休憩についての詳細は、次の記事を参考にしてください。 

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深夜業について

午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要と認めた場合は地域を限って午後11時から午前6時まで)の深夜に年少者を使用することは、原則禁止とされています。

ただし、次の4つの場合に限っては例外的に、年少者の深夜業が認められています。

①交代制によって使用する満16歳以上の男性

②交代制によって労働させる事業における次の30分間(ただし行政官庁の許可が必要)

午後10:00~午後10:30(原則)

午前5:30~午前6:00(午後11時から午前6時までを深夜とする一部地域)

③災害その他不可避事由によって臨時の実用がある場合

④農林・畜産・水産・養蚕若しくは保健衛生業又は電話交換の業務

まとめ

以上のように、年少者には、労働時間・休憩・休日・深夜業に関し厳しい保護規定を設けています。したがって、使用者が年少者を使用する場合、これを熟知する必要があります。

また、危険有害業務に対して、年少者を使用することが禁止されている業務もたくさんあります。

年少者労働基準規則第8条では、全46種類の業務について、年少者の使用を禁止しています。

 

深夜に児童をドラマ「東京すみっこごはん」の撮影に使用することができないのと同様、「箱根の温泉旅館の晩ごはん」に年少者をコンパニオンとして使用することもできないのです。