- はじめに
- 西日本新聞の社説は印象操作も甚だしい
- 西日本新聞はなぜ「連合」のプロパガンダを垂れ流すのか
- 西日本新聞は法案の内容を正しく報道するべし
- 反発が多い政策とは誰の視点に立って言っているのか
- まとめ
はじめに
最近の新聞社説を読む限り、何でもかんでも政権批判を繰り広げていればいいと思っている新聞社が少なくないですね。これでは、まともな対案を示すことなく唯反対の論陣を張るだけの野党と一緒です。西日本新聞の社説もその中の一つで、政府が推進する政策に関して丁寧な考察を何ら踏まえずに、ただ左巻きの論を展開しています。左翼の機関紙と化した新聞がそんなにたくさんあっても仕方が無いでしょう。
西日本新聞の社説は印象操作も甚だしい
働き方改革関連法案は、当初9月の臨時国会で審議される予定でしたが、解散に伴い審議が先延ばしになっていました。特別国会では日程が窮屈なため、十分な審議を尽くせないとみて、政府は来年1月召集予定の通常国会に法案提出を先送りする方針を決定しました。諸般の事情により審議がずれ込んだとはいえ、やはり、かなりのペンディング感は否めません。この点は、西日本新聞も指摘しており、筆者も同感です。しかし、法案提出が遅れたこととNHKの過労死隠蔽問題とを結びつけるのは強引でしょう。
安倍首相が働き方改革に乗り出すまで、高度経済成長期以来何十年もの間、長時間労働や過労死が放置され続けてきたことの方がはるかに問題です。
働き方改革の実現に向けて、第1回働き方改革実現会議が開催されたのは、2016年9月27日のことです。NHK記者が過労死したのは、それより3年以上前の2013年7月のことです。一方、NHKが当該事実を公表したのは、2017年10月4日です。
NHK過労死問題の本質は、遺族が過労死の事実の公表をNHKに要請していたにもかかわらず、実際に公表に至るまで4年以上もかかったということです。NHKは、その間も何食わぬ顔をしてブラック企業の番組を制作し放送していました。
NHKへの批判を何ら加えずに、「NHKの女性記者が過労死していたことも明らかになった。」と一行で済ませる西日本新聞の論調はあまりにもお粗末でしょう。 NHKは、世間からの批判を受け、ようやく働き方改革に着手し始めたようです。NHKが本気で働き方改革をするのなら、大晦日の夜は砂嵐でも放送しておけばよいのです。
西日本新聞はなぜ「連合」のプロパガンダを垂れ流すのか
高プロについて
西日本新聞は、高プロに関し、「連合などが『残業代ゼロを容認するもの』として反発している。」と、これまた1行で片付けています。なぜ法案の中身をよく検証もせずに、連合のプロパガンダを一方的に垂れ流すのでしょうか。
高プロは、残業代ゼロを容認するものではありません。法案にはどこにもそのようなことは書いてありません。
そもそも残業という概念は、時間外・休日労働協定の対象労働者となって初めて発生するものです。したがって、労働者が同協定の締結対象外とされれば、残業という概念そのものが存在しません。
時間外・休日労働協定の対象から外されている労働者の典型例に、管理監督者がいます。高プロは、管理監督者と同様に、労働者を時間外・休日労働協定の対象から外すというものです。したがって、高プロを「残業代ゼロ」とするのは法解釈を誤っています。残業代は、残業という概念が存在することを前提としているからです。
そもそも「残業代ゼロ」とは、残業しているにもかかわらず残業代が支払われない賃金不払い残業(俗にいうサービス残業)のことを意味します。本サイトでも、何度もこの点について指摘しましたが、いい加減飽き飽きします。高プロを「残業代ゼロ」と称するのは、新聞による明らかなフェイクです。よくこんなことが罷り通っているなあと憤りすら感じますね。
裁量労働制について
裁量労働制を「定額働かせ放題」と表現するのも、連合のプロパガンダです。そもそも、時間配分の決定に「使用者が具体的な指示をしない」というのが裁量労働制です。「働かせ」という言葉を使っている時点で、裁量労働制を正しく表現していません。
「働かせ」の「せ」は、使役の助動詞「せる」の一部です。使役の助動詞「(さ)せる」には、AがBに働きかけてその結果Bがある行為を行う、AがBにある行為を強いるという使役の意味があります。
一方、裁量労働制においては、使用者が具体的な指示をしない以上、使役の意味は含まれません。したがって、裁量労働制を「働かせ放題」と表現するのも法律的に誤っているのです。
西日本新聞は法案の内容を正しく報道するべし
また、西日本新聞の社説では、裁量労働制に関し、「法改正で管理職や営業職も対象になる。」とありますが、管理職への対象拡大とは法案要綱のどこにも書いてありません。営業職も対象になるというのも、誤解を招く表現です。全ての営業職が対象になるわけではありません。
法案要綱には、「既製品やその汎用的な組み合わせの営業は対象業務になり得ないこと及び商品又は役務の営業活動に業務の重点がある業務は該当しない」と明記されています。すなわち、一般営業職は対象外です。
反発が多い政策とは誰の視点に立って言っているのか
また、西日本新聞の社説には次のような記述も見られました。
政府はこれらを一括審議する方針だった。関連法案の中には賛否が分かれるものも少なくない。働き方改革という大きな「衣」をまとわせ、反発が多い政策まで押し切ろうとしているのではないか。
(参照元:『西日本新聞』社説 2017.11.25)
「反発が多い政策」とは、文脈から、高プロの導入や裁量労働制の拡大のことを指しているものと思われます。一方で、西日本新聞は、長時間労働の是正を早急に取り組むべきとも主張しています。
時間外労働の上限規制も、高プロの導入も、裁量労働制の拡大も、全て労働基準法改正案の中に盛り込まれています。しかもこれらは全て、労働時間の算定方法に関わるものであるため、労働基準法に盛り込まれます。同じ法律に盛り込まれるべき内容を別々に審議する必要はありません。
一方、働き方改革関連法案は、労働基準法改正案の他に「じん肺法」・「雇用対策法」・「労働安全衛生法」など様々な法律の改正案から構成されています。つまり、賛否の分かれるものに働き方改革という大きな衣をまとわせているわけではありません。
しかも、「反発が多い政策」とありますが、どのように定量化し、「反発が多い」と判断したのでしょうか。先の衆院選の結果を見れば、反発が多いか少ないかは明らかです。野党が大惨敗に至ったのは、野党が国会においてくだらない問題ばかりを追及し、国民が本当に必要としている建設的かつ丁寧な議論を疎かにしたためです。
まとめ
西日本新聞の社説は次のように結ばれています。
労使双方が納得しなければ、働き方改革の実効性は上がらない。政府や与党は野党の意見にも耳を傾け、丁寧な国会審議を心掛けてほしい。
(参照元:『西日本新聞』社説 2017.11.25)
確かに、野党がまともな意見を言うのであれば、耳を傾ける価値はあります。しかし、政権の揚げ足取りばかりに執着し、審議を停滞させるのであれば、耳を傾ける価値はありません。
また、「労使双方が納得しなければ」とありますが、「労」って何のことを言っているのでしょうか。連合のことを言っているのであれば、お門違いです。連合は、今や全労働者の20%以下の意見を代弁しているに過ぎません。残り80%以上の労働者は、連合を労働者の代表とみなしていません。
ではここで、先の衆院選の街頭演説における小泉進次郎衆議院議員の言葉を引用します。
労働組合は連合が束ねていますが、本当に労働者の代表は連合ですか。私は違うと思いますよ。なぜなら連合の組織率は17%。何で17%の人たちが代表なんですか。今までそうだったから慣例的に代表としてやっているだけで、今の世の中の多くの労働者の代表だとは、とても言えるもんじゃないと思います。
(2017年10月13日 福島市の演説)
労働者の80%以上は、進次郎氏のこの発言を知って、大きく頷いたと思います。