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働くルールを理解してこれからの働き方について考えよう!

「人生100年時代」の到来で働き方はどう変わるか?

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はじめに

最近、「人生100年時代」という言葉を盛んに目にするようになりました。

ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授は、過去200年のデータを精査し、10年間で2年ずつ長寿化が世界的に進行していることを突き止めました。日本の場合この傾向はさらに顕著で、2007年生まれの半数が107歳まで生きるとグラットン教授は言っています。

内閣府のデータによると、1970年における日本人の平均寿命は、男性が69.31歳、女性が74.66歳でした。一方、2010年では、男性が79.61歳、女性が86.39歳でした。40年間で、男性が約10年、女性が約12年長寿化しています。

先ほどの10年間で2年の長寿化の法則にあてはめると、40年間では8年の長寿化に相当するはずですが、確かに、日本の場合さらに顕著な長寿化が進行しています。

1970年というと、万国博覧会が大阪で開催された年で、日本は高度経済成長期の真っ只中でした。

このときの、日本人男性の平均寿命は約70歳弱。当時の男性は、人生の最初の20年程度を「教育」に費やし、40年程度の勤労期間を経て、残りの10年程度をリタイア生活に費やしていました。

一方女性は、人生の最初の20年程度を「教育」に費やし、数年の勤労期間を経て、残りの人生を専業主婦として過ごしていました。

これがいわゆる高度成長期モデルに立脚した昭和の価値観です。

人生100年時代の到来によって、昭和の価値観が通用しなくなっていくことは明らかです。

では、それに伴い働き方がどう変わっていくのか考えます。

昭和の価値観でこれからの老後を語ることはできない

昨年10月、リンダ・グラットン教授が来日し、講演をおこないました。「人生100年時代の働き方」がテーマです。

www.newsweekjapan.jp

1971年生まれのジミーはいま40代です。65歳で引退し、この年代生まれの平均寿命に当てはめて2056年、85歳まで生きるとするとリタイア生活は20年にもなります。老後は最終年収の50パーセントで暮らしていくと想定した場合、毎年の所得の17.2パーセントを貯蓄し続けなければなりません。これは到底無理な話ですし、企業年金や公的年金も盤石とはいえません。

参照元:2017年6月8日ニューズウィーク日本版

このように現在40代後半の人ですら、リタイヤ生活は20年にも及びます。1970年のリタイヤ生活10年の2倍です。

グラットン教授は、人生100年時代のステージは、「教育」☞「勤労」☞「引退」という単純かつ予測可能な流れで語れないと断言しています。

公的年金制度はどうか?

高度経済成長期の公的年金制度

現在の公的年金制度の原形である旧国民年金法(旧法)が施行されたのは、昭和36年4月1日のことです。これにより、自営業者にも年金加入の道が開かれ国民皆年金が達成されました。

日本の公的年金制度には、世代間扶養という考え方があります。世代間扶養とは、現在の現役世代の保険料負担で現在の年金受給世代の年金を支えるという考え方です。

高度経済成長期には、人口増加が著しかったため現役世代の人口構成比が高く、逆に高齢者世代の人口構成比は低いものでした。

そのため、1人の高齢者を支える現役世代の数も多く、年金財政にも余裕がありました。それに伴って、高度成長期には年金制度の充実が図られていきました。

厚生年金の支給開始年齢はどんどん引き上げられていった

サラリーマン世帯における年金制度の主体は、厚生年金です。高齢者に支給される厚生年金を老齢厚生年金と言います。

高度経済成長期のころ、老齢厚生年金の男子の支給開始年齢はちょうど60歳でした。

ところが、80年代に入り少子高齢化が徐々に進展し始め、従来の年金制度に陰りが見え始めました。

そこで、1985年、厚生年金保険法の大幅改正がなされ、男子は60歳から65歳へ、女子は55歳から60歳へそれぞれ5歳ずつ引き上げられることが決まりました。

60歳からの支給開始年齢の引き上げが始まったのは、2001年度からです。

老齢厚生年金には、定額部分と報酬比例部分の2階建てで構成されていますが、まず定額部分の男性の支給開始年齢の引き上げから始まりました。2001年度から3年に1歳ずつ12年かけて引き上げが行われ、2013年度でこれが完結しました。

女性については、2006年度から3年に1歳ずつ12年かけて引き上げが行われ、ちょうど来年度これが完結する予定です。

報酬比例部分については男性の支給開始年齢の引き上げが、2013年度から既に始まっています。3年に1歳ずつ12年かけて引き上げられるため、2025年度でこれが完結する予定です。女性については、ちょうど来年度から支給開始年齢の引き上げを予定しています。3年に1歳ずつ12年かけて引き上げが行われ、2030年度でこれが完結する予定です。

支給開始年齢は今後も引き上げられるかもしれない

ということは、1960年4月1日より後に生まれた男性は、老齢厚生年金の支給開始年齢が65歳になります。つまり、現在57歳より年齢の高い人たちを除けば、65歳より早くに年金を受給することはありません。仮に60歳を定年とすれば、このような人たちはあと3年もすれば会社からいなくなります。

同様に、1965年4月1日より後に生まれた女性も老齢厚生年金の支給開始年齢が65歳になります。

男性については、2025年度以降が新たなフェーズに突入します。

老齢厚生年金の支給開始年齢を5歳引き上げるのに約4半世紀がかかっていますが、2025年度以降のいつかの時点で、再び4半世紀をかけて支給開始年齢が5歳すなわち70歳に引き上げられるかもしれません。女性については、それより5年遅れで引き上げが開始されるでしょう。

したがって、今の30代以下の人は、高齢化の進展具合によっては支給開始年齢が70歳に引き上げられるかもしれません。

まして、それより若い小学生未満の子供たちは、75歳まで老齢厚生年金が支給されないかもしれません。「人生100年時代」が現実のものとなれば、80歳ということも十分にあり得るでしょう。

リンダ・グラットン教授の、10年で2歳寿命が延びる法則にあてはめれば、4半世紀(25年)でちょうど5年の長寿命化に相当します。したがって、約4半世紀かけて年金支給開始年齢を5歳引き上げるやり方は確かに理に適っていると言えます。

定年退職してテレビばっかり観て旅行三昧という時代は終わる

長寿社会とは、より長く働く社会でもあるということです。引退後に余生を楽しむという人生はもう終わり。60代、70代の人は"ご隠居"ではないのです。80代、あるいは90代だってそうです。年齢に関してのステレオタイプを取り払っていかなくてはいけません。

参照元:2017年6月8日ニューズウィーク日本版

厚生労働省がリタイア期間を20年と想定して年金支給開始年齢の引き上げをおこなうとすれば、長寿命化は、それだけ勤労期間が長期化することを意味します。

例えば、人生100年時代が到来したとして、最初の20年間を学びの期間、後の20年間をリタイア期間とすれば、勤労期間は60年間。

しかし、この60年間全てを長時間労働に費やす必要があるでしょうか?

昭和の価値観と同じく、終身雇用の名のもとにたった一つの会社で60年間過ごすということはあり得ません。なぜなら、60年というのは企業の平均寿命よりもはるかに長いからです。仮に60年企業がもったとしても、60年間全盛期ということはあり得ません。60年もあれば企業の栄枯盛衰を目の当たりにするのがオチです。

最近、東芝や神戸製鋼・三菱マテリアル・日産自動車など企業の不祥事が相次いでいます。いずれも、高度成長期であれば飛ぶ鳥を落とす勢いであった大企業ばかりです。

しかし、これからの世の中、単一企業と一蓮托生し、人生の大半の期間身を預けても意味がありません。

あのビルゲイツは、「今ある銀行は必要なくなる」と20年以上も前に予言しました。

president.jp

ビットコインや量子コンピュータの出現により、この予測が現実のものになりつつあります。

したがって、銀行に勤めているからと言って安泰とも限りません。

下記の記事のように、テレビ局だって、電波オークションが実現すればどうなるかわかりません。

gendai.ismedia.jp

また、60年もあれば、全く予想もしないテクノロジーの進化によって、今幅を利かせている企業が自然淘汰されていくこともあり得るでしょう。

絶対安定な企業など一つも存在しないのです。

まとめ

長寿命化は、ある意味良いことかもしれません。しかし、同時に勤労期間の長期化を意味します。

今の日本社会のように、昭和の価値観に振り回され、長時間労働がまん延し、勤労者が過労で疲弊しきっているようであれば、勤労期間の長期化はあまり望まれることではありません。

昭和の価値観とは、約20年の学びの期間を経て約40年間一つの企業と一蓮托生し長時間労働も厭わず働き、残りの10年ないしは20年、突如としてフルタイムのリタイア期間を過ごすというものでした。

人生100年時代の到来によってこの昭和的なステレオタイプが廃れていくことは明らかです。

すなわち、人生100年として、学び(20年)☞勤労(60年)☞リタイア(20年)と連続的に考えるのは明らかに無理があります。最初の20年間を学びに費やし、残りの80年間を学び・勤労・リタイアを複合的に織り交ぜながら、自分自身でカスタマイズしていくことが主流となっていくでしょう。

企業選びも同様です。その都度、時代の情勢をにらみつつ自分に最も適した会社に入るべきで、何も20代の前半という若い時期に、老年に至るまでの長期雇用を見越して就活に東奔西走する必要など全くありません。

就活生が、「ブラック企業にだけは入りたくない」という心情は十分理解できます。

しかし、就活生が「安定的な会社に入りたい」と言っている姿を見ると、「ちょっと大丈夫かな?」と首を傾げてしまいますね。