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経済同友会レポート:日本社会は日本型雇用慣行に固執する「まじめな『ゆでガエル』」

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はじめに

2017年6月、公益社団法人経済同友会は、「生産性革新に向けた日本型雇用慣行の改革へのチャレンジ」と題するレポートを公表しました。

筆者は、その中に現在の日本社会を表現するに相応しい重要な一文を発見しました。

その一文とは、次の通りです。 

日本社会は、日本型雇用慣行に固執した結果、多様性・フレキシビリティのない社会となり、全体が「まじめな『ゆでガエル』」になっていると考えられる。

ゆでガエルとは?

2匹のカエルを用意し、一方は熱湯に入れ、もう一方は緩やかに昇温する冷水に入れる。すると、前者は直ちに飛び跳ね脱出・生存するのに対し、後者は水温の上昇を知覚できずに死亡する

ゆでガエル(Wikipedia)

前者について

かつて、ビートたけしの冠で「スーパーJOCKEY」(日本テレビ系列)というお笑いバラエティ番組がありました。

今話題の、蓮舫民進党代表が女性アシスタントを務めていた時期もあります。

その中に、『THEガンバルマン』という人気コーナーがありました。

これは、たけし軍団・ダチョウ倶楽部の上島竜兵など濃い芸人たちが、あらかじめ用意された熱湯の中に没入し、その態様を見て笑いを誘うというコーナーです。

現在は、その低俗性ゆえ、同番組自体が終了したため、行われていません。

これと同様、(実際に確かめたわけではありませんが、)カエルの世界では、熱湯風呂を直ちに熱いと知覚し、跳躍・脱出する模様です。

後者(ゆでガエル)について

生物学的な観点から、「果たして本当に、カエルが昇温スピードを緩やかにした水の中で跳躍する能力を失い死んでしまうのか」、については諸説あるようです。

しかし、ビジネスの世界においては、ぬるま湯に浸かったまま変化に対応できない帰結を指摘する警告メッセージとして上記のように使われます。

経済同友会の提言について

経済同友会では、20年以上も前から、日本型雇用慣行の改革の方向性について提言を行ってきたそうです。

しかし、「複雑に絡み合ったこの岩盤はほぼ原形をとどめたまま」と指摘しています。

20年以上前というと、1991年バブルが崩壊してからまだ初期のころです。

バブル崩壊後、民主党政権が崩壊する2012年末まで、「失われた20年」と呼ばれる20年以上の長きに渡る経済低迷期が続きました。

失われた20年は、周りの水の温度が昇温し続けていることに知覚できず(あるいは知覚すること自体を放棄し)、未だぬるま湯と現状に安住し続けた結果が招いたまさに「失われた期間」であったのです。

もし、20年以上前のバブル崩壊後の初期に、経済同友会の提言の通りに水の昇温自体を止めていれば、このようなことにはならなかったでしょう。

2012年末から現在に至るアベノミクスは、緊急対応に過ぎない

民主党政権下で行われた緊縮財政・数々の経済失策を国民は忘れていないと思います。

民主党政権下のあの3年と少しの期間は、もはや国民にとってトラウマとなっていると言っても過言では無いでしょう。

その間、リーマンショック後の不況とも重なり、完全失業率も5%台と悪化し、有効求人倍率も0.5倍前後と低迷しました。

これに代わって安倍首相は、いわゆるアベノミクスと呼ばれる経済政策によって、積極的な金融緩和を行いました。

これによって、為替レートが円安基調になり、株価も上昇し、民主党政権時に比べれば経済状況も好転しました。

これに伴い、失業率も改善し現在は、3%の辺りを推移しています。

また、有効求人倍率も、平成26年には1倍を超え平成28年度の数字で、1.36倍と、高水準となっています。

しかし、これは、あくまでも緊急避難的なものであり、先ほどのゆでガエルの例で言えば、徐々にヒートアップし続けるお湯の中に氷を投入し、お湯の温度が一気に下がったようなものです。

数字上は好転していますが、実質賃金が上昇したわけでもなく、雇用の質までが改善したわけでもありません。

やはり、お湯の昇温自体を止めなければ、どれだけ氷を入れたとしても再び経済情勢が暗転した時にどうにもならなくなってしまうのです。

お湯の昇温を止めるには

筆者も経済同友会の指摘の通り、お湯を温め続けている熱源が日本型雇用慣行にあると考えています。

この熱源を断ち切り、お湯の昇温自体を止めないと、表面に現れる数字上の雇用情勢は好転しても、本質的には何も変わらないと思います。

この提言をまとめた、経済同友会2016年度人材の採用・育成・登用委員会の櫻田謙悟委員長は、記者発表において「経済情勢が好転している今こそが、日本型雇用改革のラストチャンス」と述べています。

東京オリンピックで浮かれている場合ではない

2020年には、日本は、東京オリンピックの開催を控えています。

インフラ整備などの特需効果によって、首都圏を中心に建設ラッシュに沸いています。

しかし、何事も反動は付き物です。

オリンピック終了後の、オリンピック不況が懸念されているのもまた事実です。

実際に、1965年、前の東京オリンピック開催の翌年に、「昭和40年不況」と呼ばれる景気の落ち込みが訪れました。

山崎豊子の小説「華麗なる一族」のモデルとなった、山陽特殊製鋼が倒産したのも昭和40年のことです。

まとめ

デイリー新潮では、エコノミストの談として、「日本を今後懸念される五輪不況から脱却させるには、アベノミクス第3の矢の着実な実行が欠かせない」と紹介しています。

www.dailyshincho.jp

アベノミクス第3の矢とは、構造改革のことです。

しかし、第3の矢については、これまでのところ、目立った改革が断行された形跡があまり見当たりません。

構造改革のうち、最も岩盤とされてきたのが、雇用改革です。

経済同友会の先ほどの指摘にあるように、雇用については、高度成長期の日本型雇用慣行の原形を未だにとどめたままです。

ここにきて、政府は、働き方改革と称し、労働基準法改正に取り組んでいます。

筆者は、2020年までに、終身雇用・年功序列を基調とした日本型雇用慣行を改めない限り、持続可能性ある成長は見込めないと思います。

具体的には、解雇の金銭解決・高プロの導入・労働時間規制などいくらでも改革すべき点はあります。

現代は、オリンピック不況を脱した高度成長期とは人口構成や経済情勢から言って全く違います。

日本型雇用慣行に固執したままぬるま湯に安住し、無為無策であり続けるならば、ゆでガエルどころか、カエルの干物にいずれなってしまうでしょう。