Mesoscopic Systems

働くルールを理解してこれからの働き方について考えよう!

過労死ラインぎりぎりの政府改革案では何の解決にもならない

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はじめに 

昨日、政府の考える残業規制の最終調整案が明らかになりました。

今日は、これについて考えてみたいと思います。

焼け石に水とはこのこと

新聞記事を読みましたが、実質青天井だった36協定の特別延長時間に過労死ラインぎりぎりの線引きをおこなっただけです。

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このような改革案では、高温にヒートアップした長時間労働の温度を下げることはできないでしょう。

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今も、過労死ラインを超える特別条項をセッティングしたら、監督署から健康確保措置をちゃんとしろと指導が入るはずです。

おかしな線引きをしたら、却って過労死ラインぎりぎりまでの残業が積極的に合法化されてしまいます。

長時間労働の問題が発生した背景

 そもそも、長時間労働とは、大企業の企業別労働組合が終身雇用を維持するために、強力な人事裁量権を使用者に委ねた結果生じた副産物です。

大企業では解雇規制がガチガチなので、忙しい時の雇用調整の一環として人を雇わず労働時間で調整したのです。 

mesoscopic.hatenablog.com

高度成長期ならいざ知らず、グローバル化の波で景気変動が著しい今日にあっては、経営者はあまりリスクを取りたがりません。

そこで、極力入口規制を行って忙しいときは少ない人員で極限まで人を働かせているのです。

これが現在の長時間労働の問題の本質です。

新聞記事について

朝日新聞の記事の中にビルのような図が書かれてありました。

そこで、労働時間を2階建てのビルに例えて説明してみたいと思います。

法律上の詳細を全部説明すると却ってわかりにくくなってしまうので、ここではあくまで概念的な説明に留めます。

労働時間を2階建てビルに例えて説明してみる

ビルの1階部分が法定労働時間

 現在、労働基準法では2段階の労働時間を規定しています。

労働時間をビルの高さに例えます。

1階部分の基礎の部分にあたるのが、法定労働時間といって、1日8時間・週40時間(但し一部業種の小規模事業者に対しては週44時間の特例)と決まっています。

ビルの2階部分について

ビルの2階部分が残業時間に相当します。

でも、勝手に2階部分を建ててはいけなくて、労働基準監督署に届出が必要です。

 届出というのは、36協定のことです。

36協定では、2階部分の高さをどれくらいにしたいか明記する必要があります。

これが、延長時間と呼ばれるもので、

  1. 1日
  2. 1日を超え3か月以内
  3. 1年間

について延長時間を明記する必要があります。

実は、この2階部分の高さの限界も法律で規定されています。

それが、限度時間と呼ばれるものです。

一般労働者の場合、次の表のように決められています。

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階部分はどれだけ高くしても良い??

この限度時間をも超える時間を設定できるのが、特別条項付き36協定です。

現行の労働基準法においては、特別条項付きの36協定の延長時間を実質青天井に設定することが可能です。

この延長時間のことを特別延長時間といいます。

ここで、みなさんはこう思われるでしょう。

「だったら、さっきの限度時間というのは全く意味が無いのでは」と。

その通りです。全く意味が無いのです。

しかし、さすがにこれ以上2階部分を高くしたらビルが倒壊しちゃいますよというおおまかな目安があります。

それが、過労死ラインと言われるものです。

1か月100時間、2~6か月で平均して80時間と決まっています。

今までは、倒壊の恐れがあっても繁忙期であればどれだけ高いビルを建てても仕方ないとお役所は目を瞑っていたのです。

今回の改革案が改革になっていないことの意味

今回の改革案では、過労死ラインぎりぎりまでだったら残業OKですよと積極的に認めるものです。

過労死ラインぎりぎりなので、健康確保措置もありません。

 つまり、何の改革案にもなっていません。

 役所に届け出たのより高いビルをこっそり建てる、つまり、使用者が労働者に残業時間の過少申告を求めるという問題の解決にもなりません。

 真に「働き方改革」をするのであれば、日本で長時間労働が多い構造上の問題にメスを入れる必要があるのです。

真に改革するのであれば「終身雇用制」を改めるべき

 長時間労働や過労死の問題を本腰で解決するのであれば、終身雇用制を改めるべきです。

ここにメスを入れない限り、この問題の根本的な解決には繋がりません。

小手先の法改正くらいでは、「働き方改革」など夢のまた夢です。

 終身雇用制を維持しようとすればするほど、入口規制が強くなります。

なぜなら、正社員を多く抱えるということは、業績悪化の時に重大な経営リスクを伴うからです。

今日のように、先行き不透明な時代にあっては、さらに入口が狭くなっています。

就活生はますます心身が疲弊し、仮に首尾よく入社できたとしても、体を壊すくらいの長時間労働に耐えなければなりません。

すなわち、終身雇用制の維持と長時間労働とは表裏一体の関係にあるのです。

一方、非正規の方はどうでしょうか。

前回お話しした通り、終身雇用制は同一労働同一賃金の実現を阻害しています。 

mesoscopic.hatenablog.com

 

つまり終身雇用制は、就活生にとっても労働者にとっても誰のためにもならない制度なのです。