クビにならない人たちが集まるとどうなるのか考えてみる
前回の記事で、雇用を流動化すればブラック企業・長時間労働が撲滅され、ホワイト化に繋がるという趣旨のの記事を書きました。
では、その正反対はどうでしょうか。正反対とは、基本的にクビにならない人たちが集まったら、いったいどうなるのかということです。
裁判官がクビになることはあるのか
「基本的にクビにならない人たちが集まった組織」の最たるものに裁判所があります。裁判官は一度任官されたら基本的にクビになりません。ただ、絶対にクビにならないのかというと実はそうではありません。
裁判官がその身分にふさわしくない行為をはたらいたりして罷免(辞めさせること)の訴追を受ければ、弾劾裁判というものが開かれ、罷免すべきかどうかの判断がなされます。 弾劾裁判所は、憲法64条1項に基づいて設置されましたが、現行憲法下すなわち1947年から現在に至るまでの70年間で、弾劾裁判が開かれたのはたったの9回しかありません。
このうち、「罷免の判決を受けた」すなわちクビになった裁判官は7名しかいません。平均すると10年に1人の計算です。
以上を鑑みれば、究極の身分保障が為されていると考えて差し支えないでしょう。
では、このように外界から全く閉ざされた世界においていったい何が起こるのかを考えてみましょう。
いったい裁判所で何が起こっているのか
かつて最高裁判所の裁判官も務められた、瀬木 比呂志さん(現明治大学教授)という方がいます。氏は、「黒い巨塔 最高裁判所」という小説で、裁判所における閉鎖的・権威主義的な側面を描いています。まさに、外界と閉ざされた部分社会が陥りやすい負の側面を現していますね。
ここまでだったら、「裁判所なんて自分と関係のない遠いところの話だからまあいいか」で済まされますが、ここからの話が少し違います。先日、インターネットテレビの番組に、瀬木さんが出演され、裁判官の出世争いが判決内容にまで影響していることを指摘していました。
【ダイジェスト】瀬木比呂志氏:裁判所がおかしな判決を連発する本当の理由
(参照元:『ビデオニュース・ドットコム 公式サイト』)
出世のために魂を売ってしまったら終わりです。同番組では、「自分の内集団の空気と違うことをしたら直ちに居場所がなくなると思わなくて済むようなネットワークを構築すべき」との指摘がありました。
裁判所の例を日本企業に置き換えて考えてみる
日本の大企業正社員の場合、企業別労働組合が存在し、解雇権濫用法理も厳密に適用されるため、強い身分保障がなされています。裁判官ほどではないにせよ、基本的にクビになることはありません。このような組織においては、外界から閉ざされ閉鎖的になる傾向があります。
ヒエラルキーが形成され、ピラミッドの頂点に権力が集中しがちです。だから、立身出世に明け暮れるようになるのです。出世争いに疲れた方は、雇用の流動化の是非について考えてみてはいかがでしょうか。世の中は自分の会社だけで成り立っているのではなく、もっと大きな世界が拡がっていることに気が付くはずです。