はじめに
上の記事は、働き方改革の趣旨とピントがずれていると思います。
「働き方のルールを取り払うことで現場の力を引き出したい インテージグループ働き方改革担当者インタビュー」
働き方のルールを取っ払ってはいけません。それでは、「無法地帯」になってしまいます。
働き方改革の趣旨とかけ離れた驚くべき表現
「残業は月に◯時間以内」、「女性管理職を◯%に」といった数値目標を掲げるだけで、どう実現するかは現場に丸投げ。働き方は変えても仕事量や売上は減らすなという無茶振り――、これでは上手くいきようがない。
(参照元:働き方のルールを取り払うことで現場の力を引き出したい インテージグループ働き方改革担当者インタビュー)
「どう実現するか現場に丸投げ…」というのは、現場レベルの「創意工夫」を放棄していることの証です。働き方を変えたのなら、労働生産性の向上によって仕事量が減るはずです。「残業は月に◯時間以内」にしろと言われたのなら、要求通りタスクを仕上げるべきです。「ダラダラ残業して残業代だけを掠め取りたい」という歪んだ思想が垣間見えるから、日本の労働生産性はOECD加盟各国の中で下位に甘んじているんです。
精神論だけで働き方改革が実現するのだったら、わざわざ法律を改正する必要がない
同社で働き方改革のリーダーを務める経営企画部の松尾重義氏は、インテージグループにおける働き方改革の目的を「社員ひとりひとりのプロフェッショナリティを高めること」だと語る。(参照元:働き方のルールを取り払うことで現場の力を引き出したい インテージグループ働き方改革担当者インタビュー)
働き方改革の目的が「社員ひとりひとりのプロフェッショナリティを高めること」であれば、要求通り時間内にタスクを仕上げるべきです。プロフェッショナリティが高ければ、時間が無いと文句を言わないはずです。
「働き方改革」の意義を理解し、本気で必要性を感じているなら、このような方法(残業時間の総量規制)は取らないだろう。(参照元:働き方のルールを取り払うことで現場の力を引き出したい インテージグループ働き方改革担当者インタビュー)
そもそも働き方改革の真の目的は、今まで労働基準法36条の規定により事実上青天井の設定が認められてきた特別条項付き36協定の特別延長時間に上限規制を加えることです。「働き方改革」の意義を理解しているからこそ、「残業は月に◯時間以内」と上限規制をかけているのです。
フレックスタイム制について
働き方改革というと、何か新しい制度を導入するというイメージが強いが、同社がやったのは、ルールを減らすということだ。元々フレックスタイム制だった働く時間については、10時半~15時のコアタイムを廃止。(参照元:働き方のルールを取り払うことで現場の力を引き出したい インテージグループ働き方改革担当者インタビュー)
フレックスタイム制は変形労働時間制の一種です。コアタイムだけを取っ払っても本質的に何も変わりません。労働生産性向上のための「創意工夫」が何もなければ、コアタイムなしのフレックスタイム制を導入したところで、仕事の効率は変わりません。
フレックスタイム制は、週40時間(特例44時間)・1日8時間という法定労働時間を弾力的に変形させることのできる労働時間制度であり、一定期間(清算期間)経過後、過不足の清算がなされます。フレックスタイム制では始業・終業時刻を厳格に定めませんが、裁量労働制とは異なり、時間外労働の概念は存在します。
フレックスタイム制においては、清算期間における法定労働時間の総枠が自動的にセッティングされます。したがって、フレックスタイム制においてコアタイムを取っ払おうと、清算期間を対象として時間外労働の上限規制は適用されます。
ところでこの会社は、午前7時から22時の間というフレキシブルタイムを導入しているようです。法律上は、フレキシブルタイムの設定も任意です。「現場の力を高めるためにルールを廃止」というのであれば、なぜコアタイムだけを取り払い、フレキシブルタイムだけが生き残っているのか筆者には理解できません。
テレワークについて
テレワークの推進については働き方改革実行計画のうちの一つに掲げられているので、間違った施策とは言えませんが、月1~2回の活用頻度では、働き方改革の範疇に入らないでしょう。
まとめ
この会社が働き方についてなにがしかの改革を施そうとしていることは理解できますが、精神論に終始しては「働き方改革」の本質からずれます。「自律性」や「ポジティブな変化」といった精神論だけで働き方改革を実践しようというのであれば、それこそ無茶ぶりです。