Mesoscopic Systems

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日本型雇用慣行を改めなければ数字の議論をしても無駄

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未だ「1カ月100時間、2カ月で平均80時間まで」を巡って不毛な議論が続いている

現在、政府の働き方改革実現会議では、残業時間の上限を具体的にどのように設定すべきかを巡って議論が続いています。

1年間の残業時間の上限を720時間とすることには、一応の合意が得られたようですが、繁忙期における取り扱いについては、合意が得られていません。

政府案では、「繁忙期に限って、1カ月100時間、2カ月で平均80時間まで」認める方向に検討が進んでいます。

では、そもそもこれはいったいどこから出てきた数字なのでしょうか?

長時間労働者への医師による面接指導について

労働者の安全面や衛生面を軽視するような事業所は、処罰の対象となります。

これらの面について規定した法律が労働安全衛生法です。

労働安全衛生法には労働災害を防止するためにたくさんの細かな規定が存在しますが、長時間労働について規定した箇所もあります。 

労働安全衛生法66条の8

事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。 

上記条文の厚生労働省令で定める要件に該当する労働者とは、残業100時間超で疲労の蓄積が認められる者のことです。

ここでいう残業とは、1週間当たり40時間超の労働をした場合におけるその超えた時間のことをいいます。 

もし1か月に100時間を超える残業をしていたら、直ちに医師による面接指導を申し出ましょう。

この場合 、上記の労働者に対し、使用者は概ね1か月以内に医師による面接指導を行う義務があります。

また、1か月に80時間超の残業をした労働者が申し出れば、会社は当該労働者に対し医師による面接指導を行う努力義務があります。

人間の体は機械とは違う

最近、医学的知見の蓄積により、長時間労働と健康障害との因果関係が明らかになってきました。

特に、脳血管疾患・虚血性心疾患の発症と密接に関連があると言われています。

1か月に100時間を超える残業や、2~6か月間で平均して80時間を超える残業はこれらの発症リスクを急激に高めると言われています。

ただし、これらの発症リスクはスペクトラム状に分布しています。

すなわち、人間の体は機械ではないので、100時間1分なら危険だけれど、100時間ちょうどなら大丈夫ということではありません。

日本型雇用の矛盾に切り込まなければいくら数字の議論をしても無駄

 今回の、残業時間の上限規制において、1か月100時間や2か月平均で80時間を巡る議論がいかに不毛な議論かお分かりいただけたかと思います。

筆者は、このような数字を巡る議論ではなく、残業を減らすには高度成長期から続く日本型雇用慣行をどう改めるべきかを優先すべきと考えます。

 なぜなら、長時間労働の元凶となっているのは、長期安定雇用と労働時間無限定の労使間バーターにあるからです。

そうやって、労使が協調して作り上げてきた結果が、今問題になっている労働時間が実質青天井の特別条項付き36協定なのです。