はじめに
今回は、「送検事例をもとに、ブラック企業を検証しその対策を考える」の第15回目です。
平成29年11月8日、武生労働基準監督署は、電気設備工事業の北陸電気工事㈱(富山県富山市)と同社現場責任者を労働安全衛生法違反の容疑で書類送検しました。
事件の概要
書類送検された企業:
北陸電気工事㈱(富山県富山市)
≪平成29年11月8日送検≫
- 同社は、労働者に電柱移設を行わせる際、現場の作業指揮者が適切な作業方法・順序を周知するといった感電防止措置を講じなかった。
- 平成29年3月、同社労働者が感電する労働災害が発生。
- 作業中に感電した労働者は後日、これを原因とする疾病で死亡している。
(違反法条:労働安全衛生法20条)
(参照元:労働新聞社 https://www.rodo.co.jp/column/31411/)
電気を作るのは良いけれど人に触らせないようにしよう
労働安全衛生法ではどうなっているか
労働安全衛生法20条
事業者は、次の危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。
一 機械、器具その他の設備(以下「機械等」という。)による危険
二 爆発性の物、発火性の物、引火性の物等による危険
三 電気、熱その他のエネルギーによる危険
電柱について
電柱には、高圧と低圧の2種類の配電線が並走しています。
高圧とは、電気設備基準の中の送電電圧の規格の一つで、直流で750ボルトを超え7000ボルト以下、交流で600ボルトを超え7000ボルト以下の電圧のことをいいます。
一方、低圧とは、電気設備基準の中の送電電圧の規格の一つで、直流で750ボルト以下、交流で600ボルト以下の電圧のことをいいます。
一般的な電柱には、
- 3,000-6,600V(三相高圧配電線)
- 100-200V-(400V)(低圧配電線)
の2種類の配電線が走っています。
高圧を扱う際の法的規制はどうなっているのか
電柱の移設など、高圧電線の電位を維持したままその近傍で作業をする場合は、非常に危険です。労働安全衛生規則では、そのような作業の場合の危険の防止に関して次のような規定を設けています。
労働安全衛生規則
(高圧活線近接作業)
第342条 事業者は、電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が高圧の充電電路に接触し、又は、当該充電電路に対して頭上距離が三十センチメートル以内又は躯(く)側距離若しくは足下距離が六十センチメートル以内に接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない。ただし、当該作業に従事する労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合において、当該絶縁用保護具を着用する身体の部分以外の部分が当該充電電路に接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのないときは、この限りでない。
2 労働者は、前項の作業において、絶縁用防具の装着又は絶縁用保護具の着用を事業者から命じられたときは、これを装着し、又は着用しなければならない。
(絶縁用防具の装着等)
第343条 事業者は、前二条の場合において、絶縁用防具の装着又は取りはずしの作業を労働者に行なわせるときは、当該作業に従事する労働者に、絶縁用保護具を着用させ、又は活線作業用器具若しくは活線作業用装置を使用させなければならない。
2 労働者は、前項の作業において、絶縁用保護具の着用又は活線作業用器具若しくは活線作業用装置の使用を事業者から命じられたときには、これを着用し、又は使用しなければならない。
まとめ
先日は、四国電力において上司が部下に暴力を振るい、部下の鼓膜を破る怪我をさせたというパワハラ事例を紹介しました。 鼓膜が破れる時の痛みがどれほどのものか知りませんが、おそらく電気が走るような痛みであったろうと推察します。
今回は、北陸電力のグループ会社における重大な労働災害を紹介しました。
確かに、コンセントにコードを繋げれば当たり前のように電気が得られます。しかし、その背景にパワハラに遭ったり危険な作業をしている人がいることを考えれば、改めて電気は大切に使わなければならないと思います。