はじめに
今回は、「労働基準法違反の送検事例をもとに、ブラック企業を検証しその対策を考える」の第4回目です。定時間際に、使用者がタイムカードの一斉打刻を強制する行為がはたしてどのような罪に該当するのかを考えます。
事件の概要
書類送検された企業:
トヨタカローラ北越(新潟県長岡市)
≪平成28年4月20日送検≫
- 営業社員に対し、17~18時に強制的にタイムカードを打刻させていた
- その結果、サービス残業が常態化していた
- 労働者からの相談で、残業代未払いが発覚した
(違反法条:労働基準法37条)
検証
使用者が労働者の終業前にタイムカード打刻(フライング打刻)を強制する理由として次の二つが考えられます。
- 36協定違反の時間外労働の実態を隠蔽するため
- 時間外労働の割増賃金の支払いを逃れるため(いわゆるサビ残)
1と2の両方を目的とすることも考えられます。 いずれにしても、明らかな違法行為です。したがって、フライング打刻を使用者から求められたら、断固拒否しましょう。使用者から残業時間の過少申告を求められた際の対応の詳細については、次の記事を参照ください。
今回のケースでは、労基署の調査の結果、36協定違反は見られなかったようです。したがって、タイムカードのフライング打刻を強制していた目的は、割増賃金の支払いを逃れるためだったということになります。
まとめ
そもそもタイムカードは労働時間の正確な把握のために存在しています。したがって、終業の打刻をしたのならばすぐ帰宅しましょう。逆に、仕事がまだ残っていて残業中ならば、終業の打刻をする必要はありません。
出勤簿に始業・終業の時刻を記入する形式(自己申告制)でも同じです。終業時刻は、ちゃんと仕事が終わり帰宅する時点での時間を記入しましょう。
使用者がどうしても早めの終業打刻を強制するならば、労働基準監督署に申告するしかありません。
このケースでは、違法行為の発覚が労働者の申告ではなく、労働者の相談と記事に書かれていたのが気になります。もちろん、労働基準監督官は賃金不払い残業を容易に見破ります。しかし、タイムカードの早めの打刻をしてしまったら、サービス残業の事実を労働者自らが立証困難にしてしまっているので気を付けてください。もしこれまでに使用者の言うがままフライング打刻をしていたら、自分でそれまでの始業・終業時間をメモ書きしどんな仕事をしていたのかなるべく具体的に記述しておくことが必要です。
赤信号でカローラを発進させてはいけないのと同様に、終業前にタイムカードを打刻させてもいけないのです。