Mesoscopic Systems

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HIS違法残業:管理職に警告メールを届けるくらいでは甘すぎる

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はじめに

昨日、東京労働局が、法人としてのHISと同社幹部2人を、労働基準法違反容疑で東京地検に書類送検しました。

昨日の朝日新聞の記事で、HISの労務管理体制に新たな事実が発覚しました。

www.asahi.com

HISでは、度重なる違法残業の是正勧告を受け、2013年に、再発防止策として労働時間管理の新システムを導入したそうです。

新システムでは、社員の労働時間を集計し、36協定で取り決めた時間外労働の延長時間の上限を超えそうな社員がいれば、管理職に警告メールが発せられるような仕組みになっていました。

ところが、実際には、この警告メールをガン無視する管理職が多く、結果として、違法残業が放置されたままになっていました。

HISの広報は「管理職の意識が低かった」としています。

確かにその通りですが、こういう遵法意識の低い企業に対しては、残業抑止システムに何らかの強制力を施さないと意味がないと筆者は思います。

今回はこの点について考えてみたいと思います。

管理職に警告しただけでは何の意味もない

長時間残業が常態化しているような事業所で、労働時間を機械的に算出し、36協定の内容に抵触しそうな場合のみに管理職に警告メールを発するくらいではバーモントカレー甘口よりも甘いです。

そこで、どのようにしたら激辛になるのかいろいろと考えてみました。

基本的に残業禁止とすべき

これは、HISに限らず日本企業全体に言えることですが、使用者からの黙示の残業命令が存在するから、長時間違法残業やダラダラ残業が横行するわけです。

黙示の残業命令とは、労働者の時間外労働を使用者が認識していて、それを中止する措置を施していない状態を意味します。

したがって、長時間残業が常態化しているような事業所では基本的に、残業禁止とすべきです。

やむを得ず残業をする場合は管理職から承認を得るべき

定時に帰ることを基本としていても、いついかなる時も残業不可というわけにはいかないでしょう。

残業する場合は、その都度、管理職から承認を得るべきです。

このようにすることで、一般従業員自身にも長時間残業に陥らないよう労働時間管理の意識が芽生えます。

ただし、延長申請は一回のみとすべきです。

何度も延長できるのであれば、結局管理職からの承認も形骸化する恐れがあるからです。

業務用PCに利用制限をかけるべき

HISでは、管理職が警告メッセージをガン無視していたため、残業抑止が形骸化していましたが、業務用PCに利用制限をかければさすがに帰るより仕方が無いでしょう。

業務用PCの利用制限は、定時前の延長申請を失念したり、時間外労働があらかじめ承認された延長時間を超えた場合にかけるべきです。

自席の端末だけでなく、事業所の全ての端末に対し、従業員IDで関連付けをしておけば、全ての業務用PCに利用制限がかけられることになります。

利用制限には、ログインができない・強制的にシャットダウンするなどが挙げられるでしょう。

36協定違反の延長申請ができないようシステムにロックをかけるべき

そもそも、36協定違反の違法残業については、残業申請そのものができないようにシステムにロックをかけるべきです。

たとえば、HISでは、1か月の時間外労働の限度時間を78時間と労使で協定していました。

したがって、従業員ひとりひとりの時間外労働の積算時間を算出し、当該申請につき78時間を超えそうだったら、月が変わるまで、システムロックが解除できないような仕組みにすればよいのです。

残業申請ができなければ、必然的に、業務用PCの利用制限がかけられることになります。

PCの起動・終了イベントと勤怠管理とを連動させるべき

PCの起動・終了イベントと勤怠管理とを連動させることで、当該勤怠管理と使用者の指揮命令下にあった時間とが一対一に対応することになり、正確な労働時間の把握ができます。

賃金不払い残業の抑止にもつながります。

以上のようにすれば、HISのようにVDT作業を主体とする職場では、違法長時間労働が無くなるでしょう。

しかし、違法長時間労働が無くなるとは言っても、さきに36協定の延長時間の限度ありきでは、逆に、限度時間までなら残業をしてよいと発想の転換がなされてしまう恐れがあります。

それを回避するにはどうしたら良いでしょうか?

残業時間の総量を部課ごとに目標設定し、総量規制すべき

 労働時間短縮に向けて、毎月の残業時間の総量を部課ごとに目標設定するのも一つの手でしょう。

しかし、単に目標設定をして、超えたか否かを検討するだけでは、単なるお題目に終わってしまう可能性があります。

そこで、仮にある月の残業時間の総量が目標設定を超えた場合、その部課全員の残業申請ができないようにシステム変更をすればよいのです。

この考え方は非常に有効に機能すると思います。

なぜなら、一部の人間がダラダラと残業をしたり付き合い残業をしていると、たちどころに残業時間の総量を上回り、連帯責任となってしまうからです。

労働時間短縮の意識が芽生え、結果として労働生産性の向上にもつながると思います。

富士通エフサスの残業抑止システム

富士通エフサスが開発した「IDリンク・マネージャー長時間残業抑止」システムは、筆者が以上に述べたことに非常に近いコンセプトで設計されています。

当該システムにおいては、業務用PCの起動・終了が従業員IDに紐づけされており、残業申請を行わなかったり申請済みの延長時間を超えた場合に、端末を強制終了できる仕組みになっています。

また、HISの場合のように管理職に警告メッセージを発するのではなく、一般従業員に警告メッセージを発するようになっています。

しかも、36協定の限度時間を超えそうなときのみに警告メッセージが発せられるのではなく、毎日所定勤務時間終了時に発せられるようになっています。 

www.mesoscopical.com

まとめ

昨日、HISはホームページ上で、「本日の報道について」と題する文書を公開しました。

次は、その一部を抜粋したものです。

今後は、現状維持に留まること無く、未だ改善の余地があると認識しておりますので、こうした事態が二度と生じないよう、抜本的対策の構築を図り、より一層の残業時間の削減を実現する所存です。

当社では、今回の事態を厳粛に受け止め、労働環境の改善に向けて、今後も全力で取り組んでまいります。

参照元:HISホームページ

労基署からの是正勧告を10回以上も無視し続けた結果、書類送検されたことによる企業イメージの低下は計り知れないものがあると思います。

失われた信用を回復するには、今後、同社の残業時間がいかにして削減され、かつ、労働生産性も向上できたかということにかかっていると思います。

 

長時間の移動ばかりで無計画な旅行が面白くないのと同様に、長時間の労働ばかりで無計画な労務管理も全然面白くないのです。