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ブラック企業電通とそのライバル博報堂の採用情報を比較してわかったこと

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はじめに

 先日、安倍首相が高橋まつりさんの母親の幸美さんと会ったという報道がなされました。高橋さんは、まつりさんの命日に合わせて首相から弔電と花を受け取ったことへのお礼として、首相官邸を訪れたそうです。 

高橋まつりさんはもともと記者になりたいと言っていた

 大学入学当初、高橋まつりさんは記者になりたかったそうです。実際に彼女は、学生時代に週刊朝日編集部のアシスタントとしてアルバイトをしていました(参照元:https://dot.asahi.com/wa/2016101800213.html?page=1)。しかし卒業後、彼女が入社したのは週刊朝日ではなく電通でした。そこで今回は、採用について考えてみたいと思います。

電通と博報堂の求人内容を比較してみる

 まず、次の表をご覧ください。

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 この表は、電通と博報堂の契約社員の求人内容を比較したものです。上の表では、左の欄の事項について、全て記載ありの場合を〇、一部記載ありの場合を△、記載なしの場合を✖としました(参照元:電通採用情報サイト博報堂採用情報サイト)。

 A社・B社のうちどちらが電通だと思いますか?

 答えは、A社です。〇を2点、△を1点、✖を0点として採点したところ、16点満点中、電通15点、博報堂7点という結果になりました。

求人主が募集に際し明示を義務付けられている事項は法律でちゃんと決まっている

 ところで、上記8項目は、労働者の募集を行なう者が求職者に対し法律上明示が義務付けられている事項です。職業安定法5条の3、同法施行規則4条の2に詳細が書かれています。

 職業安定法第五条の三  

公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者、労働者の募集を行う者及び募集受託者(第三十九条に規定する募集受託者をいう。)並びに労働者供給事業者(次条において「公共職業安定所等」という。)、それぞれ、職業紹介、労働者の募集又は労働者供給に当たり、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者に対し、その者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない

2 求人者は求人の申込みに当たり公共職業安定所、特定地方公共団体又は職業紹介事業者に対し、労働者供給を受けようとする者はあらかじめ労働者供給事業者に対し、それぞれ、求職者又は供給される労働者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

3 前二項の規定による明示は、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により行わなければならない

 職業安定法施行規則 第四条の二  

法第五条の三第三項 の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。

一  労働者が従事すべき業務の内容に関する事項

二  労働契約の期間に関する事項

三  就業の場所に関する事項

四  始業及び終業の時刻所定労働時間を超える労働の有無休憩時間及び休日に関する事項

五  賃金(臨時に支払われる賃金、賞与及び労働基準法施行規則 (昭和二十二年厚生省令第二十三号)第八条 各号に掲げる賃金を除く。)の額に関する事項

六  健康保険法 (大正十一年法律第七十号)による健康保険、厚生年金保険法 (昭和二十九年法律第百十五号)による厚生年金、労働者災害補償保険法 (昭和二十二年法律第五十号)による労働者災害補償保険及び雇用保険法 (昭和四十九年法律第百十六号)による雇用保険の適用に関する事項

 ブラック企業大賞を受賞したのは博報堂ではなく電通ですが、厚生労働省令による方法に則って求人をおこなっているかという観点からは、この場合においては電通のほうが良い結果に終わりました。意外な結果だと思いませんか。但し、博報堂が厚生労働省令に則った形での求人を行っていないからと言って、直ちにブラック企業であると言っているのではありません。

同じ電通の中で、異なる求人を比較してみる

  では、次の表をご覧ください。 

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 この表は、電通の契約社員の求人の募集要項を職種によって比較したものです。

参照元:電通採用情報サイト

http://www.dentsu.co.jp/recruit/contract.html

http://www.dentsu.co.jp/recruit/contract2.html

 同じ会社でも、求人によってこんなにも違います。なお、職種Aは先ほどの表と同じ求人です。職種Aは、15点ですが、職種Bに関しては、3点という結果に終わりました。

求人と言う観点からブラック企業について考える

 このように、企業によって、また同じ企業でも職種によって、募集の仕方がこれほど違います。この統一感の無い募集の仕方がミスマッチの主因となっています。 それから、もう一つ言えることがあります。それは、求人票を見ただけではブラック企業であるかどうかを予見することは難しいということです。ブラック企業というのは、実際に入社して働いてみないと判別できないのです。

 よく考えてみればこれは当たり前のことです。「うちは残業代が出ない」なんて求人票に堂々と書く企業がどこにあるでしょうか。万が一そんなことがあったとしても、この場合、ブラック企業と言うよりはむしろ、存立し得ない企業と言ったほうが適切かもしれません。なぜなら、誰も応募してこないからです。これほどに、入社前にブラック企業かどうか見分けることは困難なのです。

 以前書いた記事にも同じ趣旨のことを述べました。 

www.mesoscopical.com  

 では、なぜブラック企業による被害が後を絶たないのでしょうか。現在の労働法体系によって、雇用が硬直化しなかなか辞められないからです。現在よりも雇用が流動化し、転職が容易になれば、例え間違って入社しても、求人内容と実際の雇用契約内容や労働環境とが違う会社は存立し得なくなります。

 このように求人内容と雇用契約との相違という観点からも、雇用を流動化したほうがブラック企業の撲滅に繋がるのです。