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キャリア官僚が職員の太ももを触り罰ゲームくじを引かせるセクハラ

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はじめに

 経済産業省所管の官民ファンド、クールジャパン機構でセクハラ被害の疑いがかかっています。複数の女性社員が、同機構の専務取締役から「得体のしれないくじ」を引かされ、くじの内容の遂行を求められるセクハラが発生しています。このくじには、「当たり!!ワインディナーwith〇〇(交換不可)」「ハズレ!!罰ゲーム:手作りプレゼント」などと書かれてありました。2015年夏には、複数の女性社員が、経産省から出向してきたキャリア官僚で当時の専務執行役員から、太ももを触られるセクハラがあったと訴えています。

 クールなんとかの幹部にそんなことをされた日には、暑苦しくて仕方がなかったでしょう。

セクハラは使用者責任が問われる場合もある

 セクハラが行われた場合、行為者が不法行為の責任を問われることはもちろんのことです。今回の場合は、使用者たるクールジャパン機構の役員自身が行為に及んだとされるので、使用者責任が問われるのは当然のことです。しかし、行為者が従業員である場合でも、使用者責任を問われる場合があります。

 その根拠は、平成20年3月に施行された労働契約法の次の条文です。

労働契約法5条  

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

 上記は、いわゆる安全配慮義務を規定した条文です。労働契約上、使用者は、労働者に安全かつ快適な就業環境を確保する義務があり、そのために必要な配慮をしなければならないと規定しています。「安全かつ快適な就業環境」には、「セクハラの無い環境」も含まれます。したがって、セクハラが発生した場合は、安全配慮義務に違反したとして、債務不履行に基づく使用者責任を問われる可能性があります。使用者責任の存否は、おおむね次の観点から判断されます。

  1. セクハラが事業の執行について行われたか否か
  2. 事前措置を適正に施していたか(相談窓口の整備など)
  3. 事後措置を適正に行ったかどうか(行為者の謝罪・再発防止措置の整備など)

勤務時間外のセクハラはどのように扱われるべきか

 ところで報道によると、同機構専務執行役員による太もも触りは、歓迎会の2次会で発生したと被害者が訴えています。このように、勤務時間外におけるセクハラ行為はどのように扱われるべきでしょうか。

 事業所内外、勤務時間内外を問わず、セクハラ行為に及んだ者が不法行為を構成することは明らかです。およそ、セクハラ行為が発生する典型的なシチュエーションは、酒宴の席が多いでしょう。このように会社外あるいは勤務時間外にセクハラ行為が発生した場合に使用者責任が発生するかどうかについて考えます。クールジャパン機構の場合、使用者自身がセクハラを行ったとされているので議論の余地がありませんが、一般従業者がセクハラを行った場合の使用者責任が及ぶ範囲について考えます。

 歓送迎会や忘年会、職場旅行など職場ぐるみの参加が期待されるようなものであれば、使用者責任が問われる可能性が高くなります。2次会・3次会と私的な性質を強めるにしたがって、使用者責任が認められにくくなる傾向もありますが、3次会後のセクハラ行為について使用者責任を認めた裁判例も存在します(マヨネーズ等製造会社事件 東京地判平15.6.6)。

まとめ

 筆者は、クールジャパン機構というところを正直知りませんでした。日本の魅力ある商品やサービスを世界に売り込むために2013年に設立された経済産業省所管の政府系ファンドだそうです。それを売り込む側の幹部がセクハラを行ってしまったら、せっかくの魅力ある商品やサービスであっても、そのブランドイメージが大いに棄損されます。それにしても、日本の魅力ある商品を世界に売り込む組織の幹部が、ワインディナーはないでしょう(日本食だったら許されるという話ではありませんが)。