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ブリヂストン上司が部下にタイヤを投げつけ暴行・職場いヂめ

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はじめに

 中部電力・ヤマト運輸など最近大手企業のパワハラ事例が相次いでいます。タイヤメーカー最大手のブリストンでも、パワハラが発覚しました。

www.sanspo.com

 ブリヂストン彦根工場で準社員だった男性(30)が上司からタイヤを投げられるなどのパワハラを受けうつ病になったとして、同社が和解金50万円を支払っていたことが16日判明した。

 男性は2015年5月ごろから上司から暴言を吐かれるようになり、タイヤを投げられ打ち身になる暴行も受けた。

(参照元:『SANSPO.COM』)

自社の製品に愛着を抱けなくなったら内部崩壊の兆し

 そもそも、タイヤ工場でタイヤを人に投げつけるとは、社員が自社の製品に愛着を抱いていない証拠です。社員が自社の製品に愛着を抱けなくなったら、その会社は内部崩壊の兆しを示しています。愛着を抱けないどころか、社員が自社の製品を忌み嫌うようになったら、その会社はすでに崩壊が始まっています。

 例えば、自動車会社の社員が「〇〇が危ないから、自社の車には絶対に乗らない」とか「外車しか乗らない」とか言い出したら、その会社はかなりヤバいですね。

「パワハラ行為」のみならず傷害罪にも該当

 パワハラはもちろん断罪されるべきですが、タイヤを投げつけ人に怪我をさせるという行為は、傷害罪の構成要件に当てはまります。うつ病になった男性準社員は、刑事告訴を考えなかったのでしょうか。

オリンピックに「タイヤ投げ」という競技は無い

 ブリヂストンは、コカ・コーラやマクドナルドなどと並び、東京オリンピックのワールドワイドパートナー13社のうちの一つです。オリンピックの競技に、「タイヤ投げ」という競技はありません。競技場等で人に当てないように練習している、砲丸投、円盤投、やり投、ハンマー投など投てき種目の選手に失礼ではないでしょうか。

社員の処分はどうなったのか

 このような不祥事を起こした社員は懲戒解雇に値します。ブリヂストンはどうして記者会見を開いて当該社員の処分内容を発表しないのでしょうか。また、筆者の知るところ、サンスポしか同パワハラの報道をしていません。他のマスコミはなぜ報道しないのでしょうか。

 ところで、読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・日本経済新聞は、2020東京オリンピックのスポンサーの一員(オフィシャルパートナー)となっています。5大新聞のうち産経新聞だけがスポンサーに入っていません。産経系列のサンスポのみ報道しているところが非常に興味深いところです。

職場いヂめが横行する会社のタイヤを自分の車に装着したくない

 そもそも、社員自らが製品を人にぶつける会社のタイヤを自分の車に装着したいと思いません。そのような会社のタイヤを車に装着して、万が一タイヤが人にぶつかったらと思うとそら恐ろしいからです。

急激に増えつつある職場のトラブルの現状

 最近急激に職場のトラブルが増えてきています。ブリヂストンの事例も職場のトラブルの一つです。職場のトラブルのことを法律的には、「個別労働紛争」といいます。行政は、最近急激に増加しつつある個別労働紛争を解決するために、さまざまな制度を実施しています。ここでは、個別労働紛争解決制度について説明します。

個別労働紛争解決制度について

 平成29年6月16日、厚生労働省は、「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。個別労働紛争解決制度とは、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」の施行に伴い設けられた制度で、具体的には次の3つの制度があります。

  1. 総合労働相談
  2. 都道府県労働局長による助言・指導
  3. 紛争調整委員会によるあっせん

 総合労働相談とは、厚生労働省が設置した全国380か所の総合労働相談コーナーにおいて、あらゆる労働問題に関して専門の相談員が対応するというものです。下記は、総合労働相談コーナーの所在地・電話番号のリンクです。

www.mhlw.go.jp

 皆さんも、「銀行で札束を投げつけられた」、「ハンバーガーショップでハンバーガーを投げつけられた」などのパワハラに遭ったら、積極的に上記に相談してください。*1

 平成28年度は、113万741件の総合労働相談がありました。これらのうち、労働基準法や最低賃金法など労働基準関係諸法令等の違反が疑われるものは、20万7,825件となっています。これらの事案は労働基準監督署等に取り次ぎを行っています。

 一方、民事上の個別労働紛争相談件数は25万5,460件にのぼります。その内訳は、

  1. いじめ・嫌がらせ ……… 70,917件
  2. 自己都合退職 …………… 40,364件
  3. 解雇 ……………………… 36,760件

で、いじめ・嫌がらせがダントツ1位です。

個別労働紛争の解決方法

 民事上の個別労働紛争の解決のためには、①都道府県労働局長による助言・指導と②紛争調整委員会によるあっせんの2つの方法があります。総合労働相談から、①に移行し、それでも解決しなければ②に移行する場合もありますし、総合労働相談から直接②に移行する場合もあります。では、それぞれの特徴について説明します。

都道府県労働局長による助言・指導

 都道府県労働局長による助言・指導とは、民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局長が、紛争当事者に対して解決の方向を示すことにより、紛争当事者の自主的な解決を促進する制度です。相談者が申し出れば、実施されます。平成28年度は、8,976件の申し出件数がありました。その内訳は、

  1. いじめ・嫌がらせ … 2,206件
  2. 解雇 ………………… 1,022件
  3. 自己都合退職 ……… 948件

と、ここでも、職場のいじめ・嫌がらせがダントツ1位となっています。

紛争調整委員会によるあっせん 

 紛争調整委員会によるあっせんとは紛争調整委員会のあっせん委員(弁護士や大学教授など労働問題の専門家)が紛争当事者の間に入って話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度です。相談者の申請により行われます。平成28年度の申請件数は5,123件で、その内訳は、

  1. いじめ・嫌がらせ … 1,643件
  2. 解雇 ………………… 1,242件
  3. 雇止め ……………… 472件

と、ここでも職場のいじめ・嫌がらせが1位となっています。

相談内容、助言・指導の申し出内容およびあっせん申請内容の推移

 これらの個別労働紛争解決制度は、平成13年の個別労働紛争解決促進法の制定・施行に伴い制度化されました。制度が始まって16年経過しますが、時代背景によって、相談内容等に特性があります。

総合労働相談における各相談内容の推移

 下のグラフは、過去10年間の総合労働相談における各相談内容の件数の推移です。

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(出所:厚生労働省「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」)

 図から明らかなように、リーマンショックが起きた平成20年度頃、解雇の相談件数が急激に増加しましたが、以降、雇用情勢の回復とともに減少傾向に転じています。一方、いじめ・嫌がらせの相談件数は年々増加傾向にあります。

助言・指導の申し出内容およびあっせん申請内容の件数推移

 下のグラフは、過去10年間の都道府県労働局長による助言・指導の申し出内容の件数推移です。

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 (出所:厚生労働省「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」)

 総合労働相談の件数推移と同様の傾向を示しています。

 下のグラフは、過去10年間のあっせん申請内容の件数推移です。

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 (出所:厚生労働省「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」)

 総合労働相談の件数推移と同様の傾向を示しています。

まとめ

 儒教の教えに「長幼の序」というものがあります。長幼の序とは、「年少者は年長者を敬い、したがわなければならない」とする考え方です。会社組織では、「長幼の序」というよりむしろ「勤続年数の序」すなわち年功序列制に置き換えた方がより正確でしょう。

 そもそも、終身雇用・年功序列制は、かつて経済成長が著しかった日本社会において、熟練労働者の転職を防ぎ囲い込むために設計された雇用制度です。したがって、高度経済成長期には一定の経済合理性がありました。しかし、低成長かつ少子化の現代では、この雇用制度に経済合理性は全くありません。勤続年数だけが長く、パフォーマンスが悪い、ノンワーキングリッチが多数存在するからです。年功序列制に経済合理性が無い事は、儒教の本場である中国や台湾ですらそのような制度を導入していないことからもうかがえます。高度経済成長期と比べて、日本の社会構造が大きく変貌しているにもかかわらず、現代社会にミスマッチな制度が未だに残っていることこそ、今日の働き方を歪めている最大の理由です。

 そして、同制度にただ乗りする人間が職場における優位性を背景にパワハラを引き起こす可能性が極めて高いのです。

*1:もちろんその他の相談も受け付けています。