- はじめに
- 事件の概要
- 労働者死傷病報告について
- どんな時に提出するのか
- 労働者死傷病報告の提出期限
- どこへ提出するのか
- どんなものを提出するのか
- 労働者死傷病報告を提出しなかったらどうなるのか
- 提出方法は
はじめに
今回は、「送検事例をもとに、ブラック企業を検証しその対策を考える」の第9回目です。日本郵便㈱(東京都千代田区)で隠し事が発覚しました。
事件の概要
書類送検された企業:
日本郵便㈱(東京都千代田区)
≪平成29年2月28日送検≫
- 平成27年10月、同社労働者が荷物の積込み作業中に転倒
- 被災労働者は、右肩腱板損傷により約3カ月間休業した
- 同社は、当該労働災害を監督署に報告しなかった
- 外部から情報提供があったため、大阪・西野田労働基準監督署は平成28年7月に同社新大阪郵便局に対して強制捜査を実施
- その結果「労災隠し」が発覚し、同労基署は、同社及び新大阪郵便局総務部長(発災当時)を大阪地検に書類送検した。
(違反法条:労働安全衛生法100条)
(参照元: 『労働新聞社』)
労働者死傷病報告について
労働安全衛生規則は、労働災害発生時に事業者は労働者死傷病報告を監督署に提出しなければならないと規定しています。
労働安全衛生規則97条
事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
2 前項の場合において、休業の日数が四日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの期間における当該事実について、様式第二十四号による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
どんな時に提出するのか
労働者死傷病報告を提出すべきタイミングには次の4パターンがあります。
- 労働者が労働災害により、負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
- 労働者が就業中に負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
- 労働者が事業場内又はその附属建設物内で負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
- 労働者が事業の附属寄宿舎内で負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
労働者死傷病報告の提出期限
労働者死傷病報告の提出期限は、被災労働者の被災の程度により、次の2パターンがあります。
①被災労働者が死亡または休業4日以上のとき:
遅滞なく提出
「遅滞なく」とは、「正当又は合理的な理由(被災者 本人と面談できない等)がある場合を除き、事情の許す限り最も速やかに」という意味です。どれだけ遅く見積もっても、概ね1週間から2週間以内程度と解されています。
②被災労働者の休業が4日未満のとき:
労働災害の発生時期に応じて次のように提出期限が定められています。
- 1~3月分:4月末日までに報告
- 4~6月分:7月末日までに報告
- 7~9月分:10月末日までに報告
- 10~12月分:1月末日までに報告
どこへ提出するのか
提出先は、所轄労働基準監督署です。「所轄労働基準監督署」とは、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署のことです。被災労働者の住所周辺を管轄する労働基準監督署でないことに気を付けてください。
どんなものを提出するのか
被災労働者の被災の程度に応じて、提出する書類の様式が異なっています。
①被災労働者が死亡または休業4日以上のとき:様式第23号
労働保険番号等詳細な事項を記載する必要があります。その他に、詳細な発生状況や略図を書く欄があります。下の図は、労働者死傷病報告(様式第23号)です。OCR読み取り方式を採用しています。
②被災労働者の休業が4日未満のとき:様式第24号
主として、被災労働者の氏名・性別・年齢・職種・発生月日・傷病名及び傷病の部位・休業日数・災害発生状況の表だけの簡易的な書類です。
労働者死傷病報告を提出しなかったらどうなるのか
労働者死傷病報告を提出しなかったら、労働安全衛生法100条違反になります。同条違反に関しては、同法120条によって、五十万円以下の罰金という罰則規定が設けられています。また、「虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出すること」も同様の犯罪類型に該当し、同様の罰則が適用されます。
提出方法は
提出方法には次の3通りがあります。
- 窓口に持参する
- 郵送する
- 電子申請する
しかし、記載間違いがあったりするとけないので、2はあまりおすすめしません。 日本郵便の皆さん、労働者死傷病報告は大事なものなので、ポストに投函するより窓口に持参するほうが確実だと思います。