はじめに
前回は、ブラック企業の求人に間違って応募をしてしまって求人票の内容と全然違う条件提示を受けたとか、ブラック企業に間違って入社してしまって蓋を開けてみたら求人票の内容と全然違う労働条件だったという人のための「ホットライン」について紹介しました。
今回は、ブラック企業で実際にブラック労働をさせられている人のための「ホットライン」を紹介します。
「労働条件相談ほっとライン」について
そのホットラインとは、「労働条件相談ほっとライン」のことです。近年増加傾向にあるブラック企業への取り組み強化の一環として、平成26年9月1日に厚生労働省が開設しました。
受付時間は、
月~金【祝日を含む】 17:00~22:00
土・日 9:00~21:00
(但し、年末年始(12月29日~1月3日)を除く。)
です。
平日は夜間(夜10時まで)も対応しています。残業をさっと切り上げて電話しましょう。土日もやっているので、休日にゆっくり電話するのもありですね。
電話番号は、
0120-811-610
(はい!ろうどう)
通話料無料
です。
「労働条件相談ほっとライン」の実施状況
平成27年11月に、厚生労働省は「労働条件相談ほっとライン」の実施状況を公表しました。平成27年4月1日から11月7日までの約7か月間に、16,788件の相談が寄せられました。
主な相談内容の内訳は、
- 長時間・過重労働 690件
- 賃金不払い残業 1,250件
- 休日・休暇 1,366件
となっています。
相談事例のいくつかをピックアップして紹介します。
相談事例
長時間労働・過重労働
労務管理の責任者(製造業)
36協定において、1か月の残業時間の上限を42時間(特別条項80時間、年6回まで)としているが、年間通して1か月100時間を超える者や、1か月160時間を超える者がいる。
毎月開催されている安全衛生委員会において、社長に対し、衛生管理者や産業医から残業時間の状況を報告し、長時間労働の削減に向けた対策を講じるよう求めても、当事者意識がなく、一向に対策が講じられない。【50代、労働者】
労働基準法違反および労働安全衛生法違反です。
年間通して1か月100時間を超える者や、1か月160時間を超える者がいる。
どちらの場合も36協定に違反する長時間労働であり、労働基準法32条違反です。
産業医から残業時間の状況を報告し、長時間労働の削減に向けた対策を講じるよう求めても、当事者意識がなく、一向に対策が講じられない
労働安全衛生規則(以下則という。)15条において次のように書かれています。
則15条
産業医は、少なくとも毎月一回作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
2 事業者は、産業医に対し、前条第一項に規定する事項をなし得る権限を与えなければならない。
則15条第1項に則って産業医が労働者の健康障害防止措置を講じるよう求めているにもかかわらず、事業者が暖簾に腕押しの姿勢を貫くのは、則15条第2項に違反していることになります。
賃金不払残業(サビ残)
食料品の製造(製造業)
毎日午前6時から翌日午前2時くらいまで働いており、1か月200時間を超える残業をしているが、労働時間が管理されておらず、残業手当は一切支払われない。また、定期健康診断も実施されていない。
事業場内では、長時間労働によりうつ病を発病し、自死した労働者もいるようだ。【50代、労働者】
超絶ブラック企業ですね。労働基準法違反および労働安全衛生法違反です。ここでは、36協定についての言及が無いようですが、36協定が労使で締結されていなければ、労働基準法32条違反です。36協定が締結されていれば、この労働者はその内容を知る必要があるでしょう。
労働時間が管理されておらず
厚生労働省の労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインに違反しています。上記リンクでガイドラインを印刷して、労働時間を適正に把握してもらうよう使用者に依頼しましょう。また、会社から、業務用のパソコンを供与されている人は、次の記事を参考にしてください。
残業手当は一切支払われない。
労働基準法37条の規定により、使用者は、時間管理の対象労働者に対して、時間外労働の割増賃金(残業手当)を支払わなければならないことになっています。製造業の場合、管理監督者やみなし労働時間制の対象労働者を除けば労働時間管理の対象となります。また、管理監督者やみなし労働時間制対象労働者であっても、深夜の規定に関しては、適用除外の対象とはならないので、割増賃金の支払い義務が使用者に発生します。いずれにしても、労働基準法37条違反です。
定期健康診断も実施されていない。
労働安全衛生法66条1項に健康診断について次のような規定があります。
労働安全衛生法66条1項
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。
このうち定期健康診断については、労働安全衛生規則44条に次のような詳細な規定があります。
労働安全衛生規則44条
事業者は、常時使用する労働者に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
一 既往歴及び業務歴の調査
二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
四 胸部エックス線検査及び喀痰検査
五 血圧の測定
六 貧血検査
七 肝機能検査
八 血中脂質検査
九 血糖検査
十 尿検査
十一 心電図検査
このように、事業者は、常時使用する労働者に対し、少なくとも1年に1回定期健康診断を実施しなければならないことになっています。1年以上会社による定期健康診断がなかったら、実施してもらうよう依頼しましょう。
まとめ
上記は、「労働条件相談ほっとライン」に寄せられた相談の一例ですが、これからも随時紹介していきたいと思います。日々残業続きで休日もなく長時間労働をしている人も多くいると思います。しかし、どんな場合が違法な長時間労働に該当するのかわからない人も多いことでしょう。そのようなときに、「労働条件相談ほっとライン」に躊躇せず電話をかけてみてください。
労働基準法や関係法令についての説明はもちろん、相談者の意向も踏まえ、管轄の労働基準監督署や関係機関への取り次ぎも行なっています。事業者の労務管理が特に悪質な場合は、労働基準監督署に情報提供も行います。
少しでも、「この会社何か変だな?」と思ったら、「労働条件相談ほっとライン」に電話しましょう。