Mesoscopic Systems

働くルールを理解してこれからの働き方について考えよう!

終身雇用制を「懲役40年」と表現するのは正しいか考えてみよう

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はじめに

 今、学生や新社会人のあいだで「懲役40年」という言葉が話題になっています。ツイッターのトレンドワードで上位ランキングされたとか。今回は、これについて考えてみましょう。

 「懲役40年」とは、おそらく1つの会社で使用者に全面的に人事権を握られ不満を持ちつつも唯々諾々と定年までの約40年を過ごすことを指しているのでしょう。「懲役40年」とは、実にうまく表現したものです。若い人たちの発想の豊かさを感じますね。しかし、実際の「懲役」と1点だけ異なるところがあります。

社畜の「懲役40年」と本当の懲役との違い

 それは社畜の場合、自分の意志で「懲役10年」にも「懲役1年」にもはたまた「懲役6か月」にも出来るということです。つまり、社畜の場合、自由意思で刑期を短くす(会社を辞め)ることができるという事実です。

 実際の懲役の場合、模範囚であれば刑期が短くなることもあるかもしれませんが、自分の判断で刑務所からは出てこれないですよね。ここが違う点です。この厳然たる事実があるにもかかわらず、会社に不満を抱いたまま40年近くを過ごしてしまうことは、実際の「懲役40年」(但し日本の有期懲役は最長30年(刑法14条2項))よりも悲惨で人生の無駄でしょう。なぜならいつでも逃げ出すことが可能であったのにそれをやらなかったのですから。

本当に懲役40年か

 しかし、最近のデータからは、必ずしも懲役40年とはなっていません。厚生労働省によると平成25年3月のデータで、大学新卒者の3年以内離職率は31.9%、このうち、1年以内に離職した割合は12.8%もあります。すなわち、3年以内に離職した割合が約3人に1人、1年以内に離職した割合が約8人に1人というデータです。つまり、若者を中心に終身雇用制は既に崩壊しているのです。

解雇規制緩和が導入されないのはなぜか

 したがって、若者にとっては、解雇規制緩和が導入されてもおそらく痛くもかゆくもないでしょう。にもかかわらず、未だ解雇規制緩和が為されないのは、終身雇用制を維持しないと、年功序列賃金で手厚く保護された中高年の高額な賃金が賄えなくなるからです。下記説明します。

年功序列型賃金とは

 そもそも年功序列賃金の下では、若い人の賃金が低く抑えられ、働きに見合った額を得られていません。その分が、現在の中高年の高額な賃金の原資として使われています。解雇規制緩和がなかなか導入されないのは、これらの既得権が奪われることに抵抗しているためです。

 若者にとって、終身雇用制は何のメリットもありません。なぜならば、昔と違い経済情勢の先行きが不透明でそもそも会社が40年間存在するかどうかすらわからないからです。1977年に東芝が現在のようになることを誰が予想したでしょうか。その一方で、現在盤石とされる企業が、2057年までの間に東芝のようには絶対にならないと断言できる人はどれだけいるでしょうか。したがって、一刻も早く解雇規制緩和を導入し、給与体系も成果型報酬にすべきです。そのようにすれば、若者も、現在のような不当に低く抑えられた給与体系とは異なり、働きに見合った報酬が得られるようになります。

まとめ

 受刑者にとって、刑期を自分で変えることはできませんが、正社員として入社した新入社員は、刑期を変えることができ、さらに、懲役そのもののありかたも変えることができます。ここで、正社員にとって懲役とは、社畜として一つの会社に忍従しながら社会人生活を営むことを比喩的に表現しています。新入社員の皆さん、社会人生活を懲役とするか否かは、自分次第です。よく考えてみましょう。