はじめに
今回は、「労働基準法違反の送検事例をもとに、ブラック企業を検証しその対策を考える」の第2回目です。
事件の概要
書類送検された企業:
ALSOK静岡㈱(静岡県葵市)
≪平成28年7月15日送検≫
- 36協定で定めた1カ月当たり80時間の限度時間を超えて違法な時間外労働をさせていた。
違反法条:労働基準法32条
検証
前回の事例と異なり、今回は36協定は締結されていたようです。前回の事例は下記を参照ください。
しかし、たとえ36協定が締結されていたとしても、使用者が36協定で定めた延長時間の限度を超えて時間外労働をさせると労働基準法32条違反となります。したがって、労働者自らが36協定に定める延長時間を確かめる必要があります。36協定の確認方法については下記を参照ください。
また、36協定の見方については次を参照ください。
本事案では、1か月あたりの延長時間の限度が80時間でした。同社は、労働者1人に対し平成27年3月に90時間30分、4月に99時間30分の違法な時間外労働をさせていました。
前回の事例では、労基署の定期監督で一連の違法行為が発覚しました。一方、今回の事例では、労働者自らが労基署に申告したことから、労基署が調査を開始し違法行為が発覚しました。このように、労働者自らが申告をすれば労基署は調査を開始します。なぜなら、労基署への申告は労働基準法で定められた労働者の権利だからです。また、申告したことを理由に不利益な扱いをしてはならないと定められています。
労働基準法104条事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。
したがって、事業所において労働基準法に違反する事実があった場合は、会社近くの労働基準監督署に堂々と申告しましょう。資料として、全国の労働基準監督署の所在地を示します。
まとめ
記事によると、今回の事例では割増賃金は適切に支払われていたようです。だからと言って違法な時間外労働に当たらないとは限りません。
まずは、自らの残業時間がどのくらいなのかを毎日メモを取るなどして正確に把握し、36協定で定められた延長時間の限度を超えているか否か確認する必要があります。残業時間が延長時間の限度を少しでも超えた場合は、それ以上は残業せずにすぐに帰宅しましょう。 使用者が延長時間の限度を超える残業を強制するようであれば、会社近くの労働基準監督署に相談してください。
警備員の皆さん、他人の警備をする前にブラック企業から自分の身を警備しましょう。