- 関西電力のクレーン事故について
- 関西電力のCSR行動憲章
- 「割増賃金未払い」の問題は長時間労働のもう一つの大きな要因
- 労働基準法では「割増賃金」をどう規定しているのか
- 関電ではどのようなことが行われていたのか
関西電力のクレーン事故について
関西電力については、以前次のような記事を投稿しました。
このクレーン事故の問題については、最近報道がトーンダウンしているように思いますが、いったいどのようになったのでしょうか。
関西電力のCSR行動憲章
関西電力グループのCSR行動憲章に次のようなことが書かれてあったので、一部を抜粋させていただきます(出所:関西電力ホームページ) 。
関西電力CSR行動憲章(一部抜粋)
業務の遂行に当たって、事業を規制する法令をはじめとした関係法令等および会社が定める規程等の社内ルールを遵守します。海外の事業活動においても、国際ルールや当該地域の法令等を遵守します。
「割増賃金未払い」の問題は長時間労働のもう一つの大きな要因
最近、電通・三菱電機・HISなど大企業の違法長時間労働が新聞各紙の紙面を賑わせています。電通・三菱電機に関しては、何度も取り上げました。
HISに関しては、東京労働局の「かとく」が近々書類送検する方針を固めたようです。
上記は、いずれも36協定違反の事例ですが、今回の関西電力の事例は少し性質が異なります。記事を読むと、36協定違反は無かったようですが割増賃金未払い がありました。
実は、この割増賃金未払いの問題も長時間労働を助長する要因となっているのです。
労働基準法では「割増賃金」をどう規定しているのか
割増賃金未払いとは俗に言うサービス残業(サビ残)のことです。 労働基準法37条に次のような条文があります。
労働基準法37条(抄)
使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
次にそれぞれの言葉の意味について説明します。
前条第一項の規定:
36協定により法定労働時間を超えて労働時間を延長する場合のことを言っています。
通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額:
基本給を時給換算したもの
二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率:
時間外労働の場合、割増率は25%、
休日労働の場合、割増率は35%
と決まっています。
簡単に言うと、「残業代は時間外労働の場合25%増し、 休日労働の場合35%増しで支払ってください」と上の条文は規定しています。上記条文の省略した箇所には、1か月の残業時間が60時間を超えた場合や深夜の場合についての割増率などが書かれてあります。
関電ではどのようなことが行われていたのか
記事によると、社員が自己申告した残業時間と「タイムカード情報」や「パソコン稼働時間」といった客観的データとのあいだに齟齬がみられたとのことです。監督署が調査した結果、社員が自己申告した残業時間外に業務メールを打っていた形跡が見られ、過少申告が発覚したということです。
関電では、社員の勤務時間について管理職が承認するというシステムを採っていました。社員が正当に仕事をしていたにもかかわらず賃金が支払われていなかったとして、 監督署は労働基準法37条違反で関電を是正勧告したわけです。
しかし、このサビ残の問題は、36協定違反の問題とともに根が深い問題です。次回は、もう少しサビ残の問題について考えてみたいと思います。