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36協定とはどんなものか実際に見てみよう

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はじめに

 最近新聞紙面上で、36協定という言葉が飛び交っていますね。でも、実際に36協定を見たことがある方は殆どいないと思います。そこで、東京労働局の36協定届の記載例に基づき、36協定がどのようなものか解説していきたいと思います。

36協定の見方

以下、36協定届をどのように読んだらよいのか、解説していきます。下の図は、36協定届の記入例(拡大図)です(出所:東京労働局ホームページ)。

 

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業務の種類について

 最初に確認していただきたいのは、業務の種類です。上の図の、青丸の部分です。新規に雇われた人は雇用契約書に書かれてある「従事すべき業務の種類」、現在お勤めの人は「現在従事している業務の種類」のことです。上の記載例では、「検査」と「機械組み立て」になっています。

 協定届の一覧表から自分が関わる業務の種類を見つけたら、右のほうの欄に注目してください。ここに、延長することができる時間という欄があります。上の図の、茶色の丸で示した箇所です。この延長時間の数字を知ることが、残業時間抑制のために最も重要なのです。

特別条項付き36協定でない場合*1

1日についての残業時間の限界

 図によると、1日の延長時間は5時間です。ここで、

始業時刻が9:00

休憩時間12:00~13:00

終業時刻18:00

と仮定します。この場合使用者は労働者に対し、23:00を超えて残業させてはなりません

1か月間の残業時間の限界

 例えばある月の所定労働日数が20日間と仮定します。1日の延長時間は5時間なので、1か月間に(5×20=)100時間までだったら残業は許されるのかというとそんなことはありません。図によると1か月の延長時間は45時間となっています。例えば、労働者Aさんが月初より毎日3時間ずつ残業していたとします。すると、ちょうど15日目でその月の残業時間は(3×15=)45時間に到達します。したがって、所定労働日数のうち残りの5日間については、使用者はAさんに対して残業させてはなりません。

1年間の残業時間の限界

 では、毎月の残業時間が45時間以内に収まっていれば、1年間ずーっとその状態が続いてもOKなのかといったらこれもまた違います。図によると1年間の延長時間は360時間となっています。例えば、労働者Bさんが4月から毎月45時間残業していたとします。すると、11月いっぱいで1年間の延長時間である360時間に到達します。したがって、その年度の残りの4か月間については、使用者はBさんに対し残業させてはなりません。

 以上をまとめると、1日・1か月・1年間のいずれの期間においても、使用者が労働者に対し延長時間を超えた残業をさせた時点で、労働基準法32条違反になるのです。

特別条項付き36協定 の場合

 図の下のほうに、ただし書きが書かれています。これが特別条項です。記入例では、

「ただし、…納期がひっ迫したときは、労使の協議を経て1年間に 6 回を限度として1箇月60時間まで延長することができ、1 年 420時間まで延長することができる。(略)」

とあります。つまり、

「特別忙しい時に労使が話し合えば、1か月60 時間まで残業できます。けれど、このような月は年6回が限度。それと、年間の残業時間は420 時間まで。(略)」

と言っているのです。

 この、1か月60時間とか、1年420時間というのが特別延長時間です。特別延長時間の数字を知ることも、残業時間抑制のために極めて重要です。仮にCさんが1か月60時間の残業を6回行ったとします。Cさんは半年間で360時間残業したことになります。したがって、残りの半年間については、使用者はCさんの残業時間を(420-360=)60時間以内に抑えなければなりません。使用者は、特別延長時間を超える残業を労働者にさせた時点で労働基準法32条違反になります。

まとめ 

 以上、36協定の見方について説明しました。次回は、連日連夜の長時間残業で「ん、これはちょっとおかしいな」と思った時の対策について述べたいと思います。 

*1:この記載マニュアルは特別条項付きですが、この節では特別条項付きでないものと仮定します。