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まさに高度プロフェッショナル:Googleの働き方は凄すぎる

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はじめに

インターネットをする方で、Googleの名前を知らない人はいないと思います。

今この記事を読んでいる皆さんの中にも、Googleの検索エンジンを経由した方もおそらくいるのではないでしょうか。

Googleの設立は1998年9月4日。一方、Googleの親会社Alphabet Inc.の時価総額は、2017年11月現在世界第2位。

設立後わずか20年にも満たない企業がどうしてこんなにも急成長を遂げたのでしょうか?

Googleは、検索エンジンの分野から始まり、Eメール (Gmail)、オンライン・オフィス・スイート(Google ドキュメント)、地図検索機能(Google Maps)ソーシャル・ネットワーキング・サービス(Google+)、オンライン・ストレージ・サービス(Google Drive)、モバイルOS(Android)と、数々の独創的な製品を生み出しています。

中でも筆者が度肝を抜かされたのは、今から10年前にサービスが開始されたGoogleストリートビューです。

Googleマップ上で、ペグマンと呼ばれる人型のアイコンをドラッグ&ドロップすることで、突然画面が切り替わり、周辺の風景が閲覧できるようになっています。

筆者は、初めてこれを利用したとき、パリの凱旋門がある地図上の位置にペグマンを合わせて試したのを覚えています。凱旋門に行ったことがないのに、あたかもそこにいるかのような不思議な感覚。

Googleはどうしてこのように凄いことができるのでしょうか?

Googleの技術者がとてつもない天才集団であることが真っ先に挙げられますが、別の要素もあると筆者は考えます。

その別の要素とは、Google社の就業環境です。

Google社の働き方を考察すれば長時間労働問題解決の糸口になる

現在日本では、長時間労働や過労死の問題が深刻化しており、ブラック企業が日本社会から根絶されたわけでもありません。

ブラック企業は、本来は市場から淘汰されるべき運命にあるはずなのに、従業員に低生産性業務を押し付けることで何とか生き残りを図ろうとしています。必然的に、ブラック企業では就業環境が極めて劣悪な状態に陥ります。

Google社のように画期的なことを次々と成し遂げられる企業からすれば、日本のブラック企業はまさしく異次元の存在に映るでしょう。

Google社の働き方を考察すれば、長時間労働やブラック企業問題を解決するための糸口が見つかるかもしれません。

「Googleの社員が、どのような就業環境で働いているのか?」

その問いの答えとなる記事が存在しました。下記の記事です。

www.businessinsider.jp

上記は、Googleで人材育成やリーダーシップ開発に携わってこられたピョートル・フェリクス・グジバチさんへのインタビュー形式の記事です。

彼の発言を取り上げ、Googleの働き方について考えます。

Googleの働き方を考える

グジバチさんの発言1

少なくとも、単に「長時間働いているから」というだけで「あの人は仕事を頑張っている」と評価が上がるということはありませんでした。

(参照元:BUSINESS INSIDER JAPAN 2017年12月6日記事)

これは、Googleに限らず、日本以外の国では当たり前です。

「遅くまで残業している」・「休日も頑張っている」といった長時間労働のシグナルを発することで、上司から認められるというのは日本だけです。

日本では、労働生産性より労働投入量のほうに評価の力点が置かれます。

これには、年功序列賃金の賃金構造が背景にあります。

アメリカであれヨーロッパであれアジアの新興国であれ、年功序列賃金という特異な賃金形態を採用している国はありません。年功序列賃金は日本だけにみられる賃金形態です。

年功序列賃金とは、若い頃は生産性よりもずっと低い賃金しかもらえず、中高年になって生産性以上の賃金を受け取ることにより、若い頃の過少分を清算するという賃金形態です。

すなわち、生産性カーブと賃金カーブとが一致していません。

現在の中高年の過払い賃金は、現在の若年労働者の賃金を過少に支払うことで捻出した原資を移転させることで成り立っています。

当然のことながら、生産性より低い賃金しか受け取っていない若年労働者の労働投入量が大きくなればなるほど、当該原資が肥大化し、その分だけ中高年は過払い給与の恩恵に与れます。

さらに、日本では、勤続年数に応じて職位が上がっていく傾向もあり、極めて高い可能性で中高年労働者が上司のポストに就いています。したがって、日本では単に長時間労働をしているというだけで上司からの評価が上がるのです。

グジバチさんの発言2

そもそも「労働時間で管理する」というのは、工場やレストランで働く人など、アウトプットが定型化している仕事に就く人をマネジメントする際に使われる考え方。

そうではない、例えば、営業職、企画職、あるいは管理職もそうですが、いわゆるホワイトカラーの職業に就く人を「時間で管理する」というのは、愚かな考え方なんです。

(参照元:BUSINESS INSIDER JAPAN 2017年12月6日記事)

まったく言われる通りだと思います。

労働時間に応じて賃金が支払われるのは、労働時間(インプット)に比例して成果(アウトプット)があげられる職種に限定すべきです。

例えば、工場労働者は「時間当たり〇〇個の製品を完成させた」というように成果が労働時間に比例します。したがって、労働時間をきっちりと管理しそれに応じて賃金が支払われるのは当然です。

一方で、例えば、技術者や研究者の場合、会社に莫大な利益をもたらすような特許や発見などが労働時間に比例してなされるわけではありません。偶発的要素も多分に絡みます。

営業職や企画職や管理職においても、自らが発出したアイディアなどが即利益に結びつくこともあればそうでないときもあります。これは、Googleに限らずどの企業でも同じだと思います。

したがって、ホワイトカラーを労働時間で管理すること自体ナンセンスです。

グジバチさんの発言3

ホワイトカラーの人は一日8時間の勤務時間のうち、「30分」しかフロー状態にないそうです。しかし、それを「90分」にするだけで、生産性は3倍になる。大切なのは労働時間ではなくて、このほんとうに生産性の高い「フロー状態にいる時間」をできるだけ長くすることなんです。

(参照元:BUSINESS INSIDER JAPAN 2017年12月6日記事)

Googleが本当に凄い会社なんだなあと再認識したのは、グジバチさんのこの発言です。

人が集中して何かに取り組んでいる状態のことを「フロー状態」と言うそうです。

日本企業の場合、所定労働時間は8時間であることが多いと思います。しかし、そのうち、生産性の大部分に寄与する時間はわずか30分しかないとのこと。

つまり、8時間という労働時間そのものに意味があるのではなくて、この「フロー状態」を長くせよと言われています。フロー状態を30分から90分にするだけで生産性が3倍になるのなら、ホワイトカラーを始業時刻から終業時刻まで8時間もの勤務時間で拘束していること自体に意味がありません。

これこそが、Googleの高生産性の源ではないでしょうか?

グジバチさんの発言4

逆に「元気がない」のに「オフィスにいる」なら、すぐに帰ったほうがいいんです。「課長がいるから帰れない」じゃなくて、帰したほうがいい。あるいは、少し昼寝の時間をはさんで、元気を取り戻すのもいいでしょう。

そうやって、自分の健康・エネルギー・時間というかぎられたリソースを最適化する。アウトプットが高くなればなるほど、労働時間だって短縮できるじゃないですか。

(参照元:BUSINESS INSIDER JAPAN 2017年12月6日記事)

逆に、疲れていてフロー状態が発現しそうになかったら、さっさと帰った方がよいとも言われています。あるいは、昼寝をしてもよいとも言われています。昼寝は、まさしく、時間管理されていないからこそ為せる業です。確かに、オフィスにどれだけいようと、生産性に全く寄与しなければ、時間の無駄です。

「日本の会社は、Googleのようには変われない」というのは、ただの「思い込み」

この節のタイトルはグジバチさんが発言された内容です。

筆者も、日本の会社が既成概念を捨てればGoogleのように働き方を変えられると思います。その既成概念とは、年功序列賃金制です。

年功序列賃金制は、今から半世紀ほど前の高度経済成長期に定着した賃金制度です。

年功序列賃金制は、1つの企業における勤続年数が長くなればなるほど有利になるように設計されています。そのため、生産性カーブと本来は一致するべきはずの賃金カーブを意図的に歪ませています。この歪みこそが、労働投入量の如何によって評価が決定付けられる空気を醸成しています。そして、この空気こそが、長時間労働の温床になっているとともに、労働生産性の高い従業員が報われない元凶ともなっています。

「日本の会社は年功序列が当たり前」という思い込みを捨てればGoogleに少しでも近づけられるかもしれません。

思い込みを捨てるとは?

では、その思い込みを捨てるためにどうしたらよいでしょうか?

労働時間や勤続年数など「時間」を指標として賃金を決定付けるのではなく、「成果」を指標として賃金を決定付ければよいのです。

現在、政府は、「働き方改革」を遂行しており、来年1月召集予定の通常国会において、「働き方改革関連法案」が上程されることが想定されています。

働き方改革関連法案の中に「高度プロフェッショナル制度」の創設を盛り込んだ労働基準法改正案があります。

高度プロフェッショナル制度とは、「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くない業務に就く労働者のうち一定年収以上の者を、時間外・休日労働協定の対象から外す」という制度です。

高度プロフェッショナル制度の本質についてもう少し考えてみたいと思います。

「時間外・休日労働協定の対象から外す」とは?

労働者を時間管理する場合、「始業時刻〇〇時~終業時刻△△時、休憩▢▢時~◇◇時、休日:土日祝」のように決まっていると思います。

始業時刻から終業時刻までの時間に休憩時間を除いたものを所定労働時間といいます。

労働基準法32条では、1日8時間・週40時間という法定労働時間が定められており、法定労働時間を超える労働を禁止しています。したがって使用者は、法定労働時間を超えないように所定労働時間や所定休日を定めなければなりません。

どうしても、使用者が法定労働時間を超える労働を労働者に命じる必要がある場合、使用者は労働者の代表と労働時間の延長について協定を結び行政官庁に届け出る必要があります。この協定こそが、時間外・休日労働協定(いわゆる36協定)です。

高度プロフェッショナル制度とは、一言でいうと、成果と労働時間との関連性が必ずしも高くない高度専門職に就く労働者を、36協定の締結対象から外すという制度です。

36協定の締結対象から外されるため、高度プロフェッショナル制度の対象労働者には、労働基準法32条でいうところの法定労働時間という概念がありません。法定労働時間の概念が無ければ、「始業時刻〇〇時~終業時刻△△時、休憩▢▢時~◇◇時、休日:土日祝」のように時間管理をする必要もありません。

労働時間の配分や業務の遂行方法は、労働者の決定に委ねられています。

つまり、高度プロフェッショナル制度はGoogleの働き方に類似しているのです。

まとめ

政府の働き方改革では、高度プロフェッショナル制度の創設とともに、残業時間の上限規制についても労働基準法改正案の中に盛り込まれています。

残業時間の上限規制では、36協定において繁忙期にのみ許される延長時間(特別延長時間)が月100時間未満、1年間の総延長時間が720時間という上限が設定されることになりました。

長時間労働による過労死や健康障害は社会問題化しており、一刻も早い法制化が待たれます。

一方、労働生産性という観点からも、長時間労働規制はプラスの効果をもたらします。労働時間と労働生産性とは負の相関関係があり、労働時間が長くなればなるほど時間当たりの労働生産性も低下するからです。

現在日本では、人口減少社会が進行しています。

今後、労働人口の減少が予測される中で、企業の業績を維持・拡大していくにはどうしたらよいでしょうか?

労働人口が減少していく中で、業績を維持拡大するためには、労働生産性を高めるよりほかありません。そのために、ホワイトカラーには成果を指標として報酬が決定されるべきです。

そうすれば、少ない労働投入量(インプット)で高い成果(アウトプット)が期待できます。

高度プロフェッショナル制度が定着すれば、「『日本の会社は、Googleのようには変われない』というのがただの『思い込み』に過ぎなかった」という日が来るかもしれません。