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働くルールを理解してこれからの働き方について考えよう!

労災隠しをするブラック企業などさっさと辞めてしまおう!

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はじめに

今回は、「送検事例をもとに、ブラック企業を検証しその対策を考える」の第13回目です。

平成29年10月13日、藤沢労働基準監督署は、輸送用機械製造業の㈱湘南ユニテックと同社物流管理課長を労働安全衛生法違反の疑いで、横浜地検に書類送検しました。

事件の概要

書類送検された企業:

㈱湘南ユニテック(神奈川県高座郡寒川町)

≪平成29年10月13日送検≫

  • 同社は、休業期間91日の労働災害が発生したにもかかわらず労働者死傷病報告書を遅滞なく提出しなかった。
  • 被災した労働者は、4段積みのカゴの最下段から部品を取り出そうとした際に右腕骨折、左足打撲の怪我を負った。
  • 同部長は自分の課で事故を起こしたくなかったと考え、被災者へ自宅で怪我したことにしてほしいと要請。被災者も自分が原因で労災を起こしたことに加え、「有期契約で働いているため、断ると更新されないのではないか」と思い、要請を受諾していた。
  • 被災者への保障は当初、労災保険ではなく健康保険で対処していた。

(労働安全衛生法100条違反)

  参照元:労働新聞社 https://www.rodo.co.jp/column/28823/

労働者死傷病報告について

労働安全衛生規則では、労働災害発生時に事業者は労働者死傷病報告書を監督署に提出しなければならないと規定されています。

特に、被災労働者が死亡または休業4日以上のときは、「遅滞なく」提出する必要があります。「遅滞なく」とは、どれだけ遅く見積もっても、概ね1週間から2週間以内程度と解されています。

過去にも、日本郵便㈱で同様な事件が発覚しました。

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因みに、労働者死傷病報告書を郵送すること自体は禁止されていませんが、ポストに投函して監督署に送付などと言っていたら時間がかかります。

すぐさま、監督署に駆け込み提出するのが確実でしょう。

労災隠しについて

今回の事件において特徴的なのは、「自宅で怪我したことにしてほしい」と被災労働者に要請していたことです。

つまり、形式的に「労働者死傷病報告書」の提出を怠っていたのではなく、労働災害の事実そのものを無かったことにしてしまおうとする悪質な労災隠しの事例であり、確信犯です。

しかも、被災労働者が非正規雇用労働者であることの足元を見て、それに付け込み、当該労災隠しを受諾せしめんとしたことが極めて卑劣です。

しかし、よく考えてみてください。

確信犯的な労災隠しを要請してくるようなブラック企業との雇用契約を更新されたいですか?仮に不当な要請を受諾し、雇用契約が首尾よく更新されたとしても、このようなブラック企業においては、再び仕事中に怪我をした場合に契約更新を盾に同じことを言ってくるはずです。

ここはむしろ、被災労働者はこのような違法行為を要請する会社に対し、雇用契約の解約を申し出るべきです。

その際には、労災隠しの事実を監督署に申告することも必要です。

下記のように、事業場における法違反の事実を監督署に申告することは労働者の正当な権利だからです。

労働安全衛生法97条

労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。

労災補償と健康保険との違い

本事例では、被災労働者は、会社の要請に従い、当初は健康保険で対処していたといいます。

では、労災補償と健康保険との違いを簡単に説明します。

皆さんよくご存じの通り、私的な負傷や疾病(私傷病)により、医療機関で処置を受けた場合、健康保険からの保険給付(療養の給付)がなされます。

ただし、保険給付に一定の割合を乗じて得た額を一部負担金として当該医療機関に支払わなければなりません。

サラリーマンの場合、その割合は通常100分の30です。

ところが、業務上の負傷や疾病により、医療機関で処置を受けた場合、労災保険から保険給付(療養補償給付)がなされます。

健康保険と異なり、労災保険からの療養補償給付に一部負担金はありません。

したがって、業務上の理由で怪我をした場合、たとえ使用者からの要請があったとしても安易に健康保険で対処してはなりません。

業務上の負傷について

何らかの作業中に発生した災害は、大部分が業務災害と認定されます。

かといって、作業中の怪我が全て業務災害と認定されるかというとそうではなくて、例外も存在します。

その辺りについて考えてみます。

労働者の怪我が「業務災害」と認められるためには、

  1. 業務遂行性
  2. 業務起因性

の二点を段階的に検証し判断がなされます。

業務遂行性について

労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態を業務遂行性といいます。

事業主の支配下にあるか否かは、当該被災労働者が、施設管理下にあるか否か、業務に従事しているか否か等に基づいて判断されます。

例えば今回の事例で言えば、部品を取り出そうとした際の怪我が事業所内かつ自分の担当業務の遂行中であれば、業務遂行性が認められます。

業務起因性について

業務起因性とは、業務と傷病との間に一定の因果関係が存在することです。

例えば、災害の発生要因が業務外によるもの(私的行為・恣意的行為・天災地変・業務逸脱行為)の場合は、業務起因性は認められません。

つまり、仕事中であっても仕事とは関係のない行為に起因する場合(私的行為)、怪我をするとわかっていて行われた行為に起因する場合(恣意的行為)、地震や台風などの天災(天災地変)、担当業務外の行為に従事中に発生した場合(業務逸脱行為)は、業務外とされる可能性が高くなります。

一方、上記何れにも該当せず、自分の担当業務を作業中に発生した災害は、業務に伴う危険性が現実化したものと考えられ、たいていの場合業務災害と認定されます。

まとめ

労働災害が発生したにもかかわらず、それを監督署に報告しないというだけでブラックの要素が十分有りますが、本事例では、非正規雇用労働者の弱みに付け込み、被災労働者への補償を健康保険で対処するように要請しています。

このような真正ブラック企業は、即刻市場から淘汰されるべきでしょう。

今年から、厚生労働省では、労働基準法や労働安全衛生法など労働基準関係諸法令に違反し、労基署から書類送検された企業の企業名を公表し、厚生労働省ホームページ上でリストにまとめています。

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せっかく厚労省がブラック企業の企業名を公表する以上、皆さんも積極的かつ最大限にこれを活用すべきです。

悪質な企業の企業名を拡散するだけでなく、そこで一体どのようなことが行われていたのかについてもどんどん拡散すべきです。

このブラック企業リストに基づけば、人手不足の昨今、このような企業が求人を出しても、人が集まらないでしょう。人が集まらなければ、例え業績が好調だったとしても人手不足倒産に陥ります。

したがって、ブラック企業リストの存在は、事業所の違法行為を未然に防ぐ十分な抑止力になり得ます。

逆に、このような不当な扱いを受けながら、それでもなお社内外に発言の機会も設けずに、我慢し続けたらどうなっていたでしょうか?

おそらく、当該労働災害の事実が明るみに出ないまま、その労働者は、健康保険で怪我の治療をし続けたでしょう。

有期雇用労働者の場合、使用者のさじ加減一つで契約更新の有無が決定付けられます。明確な基準が存在しない限り、全く不透明な理由で更新されないこともあり得ます。

であれば、事業所に違法行為が見つかったのであれば、契約更新に固執せずにさっさと辞めてしまった方が得策です。

 

そうしないと、永久にブラック企業など無くならないのです。