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毎日新聞の「高プロ・裁量労働制で過労死増える」は全く根拠なし

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はじめに

毎日新聞が「裁量労働制の拡大によって過労死が増える」というフェイク記事を書いています。これ👇です。

www.excite.co.jp

これは悪質な印象操作であり、はっきり言って何の根拠もありません。

毎日新聞の記事では、2013年、心疾患で亡くなった証券アナリストの男性の話がでてきます。

男性の残業の想定は「月40時間」。だが、亡くなる直前の1カ月は133時間。過労死ライン(直前1カ月の場合約100時間)を大幅に超えていた。裁量労働制は、仕事の進め方や時間配分などを労働者の裁量に委ねる必要のある業務が対象だ。ところが、男性の場合、早朝出勤しても、「他の従業員より早く帰るな」と注意されたり、高熱でも出勤を命じられたりするなど裁量は実質的になかった。

東京労働局三田労働基準監督署は15年、過労死として労災認定。申請から約1年がたっていた。裁量労働制は企業が社員の実労働時間を記録する必要がなく、実際の労働時間を割り出すのに時間がかかったからだ。

(引用元:毎日新聞記事 2017年10月30日)

まずは下線部の箇所について検証します。

専門業務型裁量労働制とは

そもそも事業所が、専門業務型裁量労働制を採用するためには、労使協定を締結し行政官庁(労働基準監督署)に届け出なければなりません。

労働基準法38条の3第1項の規定により、労使協定には、次の事項を定めなければならないとされています。

  1. 対象業務
  2. みなし労働時間
  3. 対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと
  4. 健康・福祉確保措置
  5. 苦情処理措置
  6. その他、厚生労働省令で定める事項

1.対象業務について

「専門業務型裁量労働制」の対象業務には、19業務が限定列挙されています。

証券アナリストも、専門業務型裁量労働制の対象業務に含まれます。

専門業務型裁量労働制の対象業務の詳細については、下記記事を参照ください。www.mesoscopical.com

2.みなし労働時間について

 専門業務型裁量労働制を事業所に導入する際、「みなし労働時間」を労使協定に定める必要があります。

裁量労働制の効果は、実際の勤務時間の長短に関わらず、この労使協定に定める時間労働したものとみなされる点にあります。

3.「具体的な指示をしない」ことについて

先述の通り、労働基準法38条の3第1項第3号において、「対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと」を労使協定に定めなければならないとされています。

したがって、専門業務型裁量労働制の対象労働者として選定しておきながら、当該労働者に対し、使用者が業務遂行手段や時間配分決定に対し口出しをしていれば、労使協定に違反する裁量労働制の運用ということになります。

毎日新聞の記事では、「男性の場合、早朝出勤しても、『他の従業員より早く帰るな』と注意されたり、高熱でも出勤を命じられたりするなど裁量は実質的になかった。」とあります。これは、協定に違反する裁量労働制の運用に該当し、労働基準法違反です。このような場合、当該労働者が、労働基準監督署に申告し、個別事例として取り扱われるべきだったでしょう。

決して、労働基準法が規定する裁量労働制という制度そのものが誤っているのではありません。

4.健康・福祉確保措置および労働時間の把握について

専門業務型裁量労働制では、健康・福祉確保措置を使用者が講じなければならないこととされています。

労使協定においても、当該措置に関し具体的な記載が必要です。

健康・福祉確保措置は企画業務型裁量労働制における同措置と同等のものとすることが望ましいとされています。

企画業務型裁量労働制については、適正な労働条件の確保を図るための指針〔平成11年12月27日労働省告示第149号〕があります。ここに健康・福祉確保措置について次のような記載があります。

法第38条の4第1項第4号の対象労働者の「労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置」(以下「健康・福祉確保措置」という。)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずることについては、次のいずれにも該当する内容のものであることが必要である。

イ 使用者が対象労働者の労働時間の状況等の勤務状況(以下「勤務状況」という。)を把握する方法として、当該対象事業場の実態に応じて適当なものを具体的に明らかにしていること。その方法としては、いかなる時間帯にどの程度の時間在社し、労務を提供し得る状態にあったか等を明らかにし得る出退勤時刻又は入退室時刻の記録等によるものであること。

ロ イにより把握した勤務状況に基づいて、対象労働者の勤務状況に応じ、使用者がいかなる健康・福祉確保措置をどのように講ずるかを明確にするものであること。

上記のように、使用者は、対象労働者の労働時間の状況等の勤務状況を把握しなければなりません。

その方法としては、出退勤時刻又は入退室時刻の記録等によるものでなければなりません。

裁量労働制においても勤務状況の把握が必要なのは、労働者に対する安全配慮義務が法律上当然に使用者に課されているからです。

また、このとき取得した労働時間の状況の記録は協定有効期間中及びその満了後3年間は保存しなければならないことになっています。

記録が存在しない場合は、協定違反の裁量労働制の運用に該当し、労働基準法違反です。

したがって、毎日新聞の、「裁量労働制は企業が社員の実労働時間を記録する必要がなく、実際の労働時間を割り出すのに時間がかかったからだ。」という記載は誤りです。

単に、使用者によって裁量労働制の誤った運用がなされていたに過ぎません。

毎日新聞記事の専門家の意見の出鱈目さ 

厚生労働省によると、裁量労働制を導入する企業の割合(16年)は2〜3%。一方、年200人程度が過労死・過労自殺(未遂を含む)で労災認定される中、裁量労働制の人は最近6年間で計13人にとどまる専門家らは「長時間労働の証拠が少ないため認定されてないケースも少なくないはずだ」と指摘する。

 (引用元:毎日新聞記事 2017年10月30日)

毎日新聞の記事では、至る所で誤った印象操作がなされていますが、ここが最も酷いですね。

客観的なファクトをも歪めています。

以下、下線部を検証します。

裁量労働制の人が最近6年間で計13人ということは、年2人程度。すなわち全体の100分の1程度です。では、残りの99%の人は、どういう働き方が原因で亡くなったのですか?

少なくとも残りの99%の人たちは従来通り、時間軸を基調として労働していた人たちです。

労働時間に応じて賃金が支払われている人たちに過労死が多い原因を突き止め、今後そのような悲劇を招かないようにするにはどうしたらよいかを考える方が何よりも先決だと思います。

毎日新聞の記事には、専門家の意見も出てきますが、これも出鱈目です。

先ほども言ったように、裁量労働制のもとでも、使用者は対象労働者の労働時間を把握しなければなりません。

もし、把握していなければ、誤った裁量労働制の運用であり、労働基準法違反です。

専門家の意見が正しいことを証明するためには、裁量労働の対象労働者の「長時間労働の証拠」が通常の労働者と比して少ないという客観的なデータを示さなければなりません。しかし、そのようなデータは一切示されていません。また、労災認定率も記事には示されていません。

通常労働の場合でも、ブラック企業においては、タイムカードを意図的に改ざんしたり、タイムカードを定時に一斉打刻させたり、自己申告制において労働時間を過少申告させるなど「長時間労働の証拠」が少ない場合も散見されます。

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しかし、労働基準監督署は、事業所の入退室記録やパソコンのイベントログなどあらゆる客観的傍証を使って、長時間労働の証拠を割り出します。

労働基準監督署の実力をナメてはいけません。

それを、ふわっとしたイメージに基づいて「長時間労働の証拠が少ないため認定されてないケースも少なくないはずだ」と発言するのは、専門家と呼ぶに程遠いでしょう。

ましてや、それを無批判に記載する毎日新聞は、報道機関としてもはや機能していないと言えるでしょう。

まとめ

以上のように、裁量労働制の拡大によって過労死が増える根拠はどこにもありません。

ましてや、まだ法制化すらされていない高プロによって過労死が増える根拠も全くありません。

つまり、これらは毎日新聞による悪質な印象操作です。

毎日新聞は、違法な裁量労働制の運用事例を引っ張り出してきて、裁量労働制という制度そのものが間違っていると言っているに過ぎないのです。

このように悪質な印象操作が施された記事が記載されている新聞は、直ちにゴミ箱に直行させられるべきでしょう。

ところで、専門業務型裁量労働制の19種類の対象業務の中に、「新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務」というのがあります。

 

毎日新聞の記者の皆さん、そんなに裁量労働制が嫌なら、新聞記者を辞めたらどうですか?