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希望の党の「ブラック企業ゼロ」という公約は実現可能か?

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はじめに

テレビやネットなどでは、総選挙に関する報道が連日のようになされています。

特に、今回の総選挙では、「希望の党」の出現により、野党の大規模再編がありました。総選挙の勢力図がまさに混沌の様相を呈しています。

明日は、総選挙の公示日です。10月22日の投票日まで、選挙戦が繰り広げられます。それに先立ち、各党が選挙公約を発表しています。

希望の党も選挙公約を発表しています。その中に、「ブラック企業ゼロ」というのがありました。

今回は、これが果たして可能なのかについて考えてみたいと思います。

「過重労働解消相談ダイヤル」について

「ブラック企業」と聞いて、皆さんはどのようなイメージを持たれるでしょうか?

一口にブラック企業と言っても、電通のように労働基準法違反で処罰される企業、離職率が高い企業、労働者の安全衛生管理がずさんな企業、パワハラが横行している企業などいろいろあります。

しかしながら、「ブラック企業」の法律的な定義は存在しません。

厚生労働省は、ブラック企業のことを「若者の『使い捨て』が疑われる企業等」と呼んでいます。「等」が付いているので、こちらも明確な定義はありません。また、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場等もその範疇に含まれます。

ところで、厚生労働省では、「労働条件相談ほっとライン」という電話相談のホットラインを常設し、違法な時間外労働・過重労働による健康障害・賃金不払残業などの労働基準関係法令に関する問題について相談業務を行っています。

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また、毎年11月「過労死等防止啓発月間」と位置づけ、長時間・過重労働の解消に向けて、集中的な周知・啓発の取り組みを行っています。

これは、「過労死等防止対策推進法」が、2016年11月に施行されたことに因んでいます。

これに先立ち、厚生労働省では、毎年10月の末に、「過重労働解消相談ダイヤル」というホットラインを特別に開設し、都道府県労働局の担当官が労働条件全般に関し、電話相談に対応しています。

今年は、平成29年10月28日(土)に実施されることになっています。

少しでも「自分の会社何か変だな」「ブラックかも」と思ったら、連絡してみてください。

電話番号等は次の通りです。

「過重労働解消相談ダイヤル」

実施日時:平成29年10月28日(土)9:00~17:00

電話番号:0120-794-713

詳細は、次のパンフレットに記載されています。ぜひ参考ください。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000137575.pdf

「過重労働解消キャンペーン」について

これを受け、厚生労働省では、毎年11月に「過重労働解消キャンペーン」を実施しています。

具体的な実施事項は次の通りです。

  1. 労使の主体的な取組
  2. 労働局長によるベストプラクティス企業への職場訪問
  3. 過重労働が行われている事業場などへの重点監督を実施 

上記1~3の実施事項のうち、ブラック企業に関するものは、3.過重労働が行われている事業場などへの重点監督です。

監督の対象とする事業場等は次の通りです。

  1. 長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場等
  2. 労働基準監督署及びハローワークに寄せられた相談等から、離職率が極端に高いなど若者の「使い捨て」が疑われる企業等

また、重点的に確認する事項は次の通りです。

  1. 時間外・休日労働が「時間外・休日労働に関する協定届」(いわゆる36協定)の範囲内であるか等について確認し、法違反が認められた場合は是正指導
  2. 賃金不払残業が行われていないかについて確認し、法違反が認められた場合は是正指導
  3. 不適切な労働時間管理については、労働時間を適正に把握するよう指導
  4. 長時間労働者に対しては、医師による面接指導等、健康確保措置が確実に講じられるよう指導

なお、重大・悪質な違反が確認された場合は、送検し、公表します。 

厚生労働省からブラック企業の疑いをかけられた企業の何%が実際にブラック企業であったか

平成29年3月、厚生労働省は、平成28年度「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表しました。

平成28年度の過重労働解消キャンペーンでは、7,014事業場に対し重点監督を実施しました。

これは、労働者の皆さんが、「自分の会社、ひょっとしたらブラックかも」と思い、「労働条件相談ほっとライン」や「過重労働解消相談ダイヤル」に連絡くださった事例の中から、厚生労働省が「ブラックの疑いあり」としたものです。

では、このうち何%の事業場において、実際に労働基準関係法令違反が認められ是正勧告書が交付されたでしょうか?

答えは、次の記事に載っています。

ぜひ参照ください。

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希望の党の選挙公約「ブラック企業ゼロ」について

上記の通り、現在政府では、労働者の皆さんから様々な情報を収集し、都道府県労働局の専門官が、重点監督の対象事業場をピックアップしています。

では、希望の党の選挙公約「ブラック企業ゼロ」が果たして実現可能かについて考察します。

先述の通り「ブラック企業」には明確な定義が存在しないため、相対的概念として位置付けられます。 

確かに、都道府県労働局の専門官が明確な基準に基づいて、電話相談の中から一部の事例を、「ブラック企業の疑いあり」と認定して重点監督を行うことはできます。

しかしながら、ブラックかどうかは労働者一人ひとりにとって認識が異なります。

したがって、もともと定義が存在しないものをゼロにすることはできません。不味い天そばを出すそば屋をゼロにする」と言っているのと同じです。

つまり、希望の党の選挙公約「ブラック企業ゼロ」が実現される可能性は限りなくゼロです。

まとめ

有権者からの信任を掠め取るべく、耳触りの良い言葉を羅列することは確かに容易でしょう。

しかし、具体的な政策を実行するためには、然るべき法律に則り、周到な制度の整備が必要です。

これらを全く考慮することなく、情緒的な感覚で「ブラック企業ゼロ」を掲げても、その公約の実現に全く希望を見いだせません。

花粉症ゼロや電柱ゼロなどその他の公約についても、それらをどのように実現するのか具体的かつ精緻なロードマップを示さなければ、単に、アドバルーンを掲げただけに終わってしまうでしょう。

 

小池百合子さん、食中毒を出したそば屋の看板を掛け変えたって、お客さんは誰も行かないですよ。