Mesoscopic Systems

働くルールを理解してこれからの働き方について考えよう!

雇用や労働の分野に差別をもたらした諸悪の根源は何か?

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はじめに

久々秀逸な記事に出会いました。

news.yahoo.co.jp

橘さんの記事は、筆者が本サイトにおいてこれまでに主張してきたことと完全に合致しています。

なぜ日本型雇用の問題がなかなか報道されないのか?

大手新聞記事やテレビ報道を見渡しても、グローバルな視点ですっかりガラパゴスと化した日本型雇用の問題について鋭く切り込んでいる記事や報道は、ほぼ皆無です。

それもそのはず。

大手マスコミの記者やテレビマンもまた大企業に勤務するサラリーマンであり、とりわけ報道内容の編集権を握っているのが、年功序列賃金で手厚く保護された中高年労働者だからです。しかしながら、そのような労働者は全体の1割にも及びません。

それゆえ、それ以外のカテゴリーに属する労働者、すなわち、大企業の若年労働者・中小企業労働者・非正規雇用労働者は、自分たちの周辺で起こっている雇用や労働の歪みが全て日本型雇用に起因していることになかなか気付いていません。

橘さんの記事は、日本型雇用がいかに時代錯誤的であり、グローバルスタンダードとも相容れない制度かを端的に分かりやすく表現する貴重な記事です。

このサイトに訪れてくださった読者の方々にも、ぜひ上記の橘さんの記事を読んでいただきたいと思います。

年功序列賃金を維持する道理はもはや存在しない

実は、日本より一足早く、年功序列賃金を導入していた国が存在します。 

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 1920年代~1960年代のアメリカ合衆国です。

1920年代、アメリカでは狂騒の20年代とよばれる空前の好景気を背景に年功序列賃金制が定着していきました。

しかし、日本の急激な経済成長を前に、1970年代にアメリカ経済が失速していきました。

そこで、アメリカは、70年代の10年をかけて、年功序列賃金を改め、賃金カーブをフラットにしていきました。

日本と異なり、既得権にしがみつくことなく間違った制度は速やかに改めていくという柔軟性が、今日のアメリカ合衆国繁栄の礎を築いているとも言えるでしょう。

また、経済成長が著しい中国はそもそも最初から年功序列賃金を採用していません。

中国が孟子の長幼の序を旨とする儒教発祥の国であるにもかかわらずです。

同じく経済成長が著しい台湾も年功序列賃金を採用していません。

象徴的だったのが、EMS世界最大手の台湾企業、鴻海精密工業に買収された後のシャープの業績回復です。 

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 シャープは、鴻海出身の戴正呉(たい・せいご)氏が社長に就任し1年間で、黒字化を実現し、株価も4倍になりました。

この間、戴社長は人事方針において徹底した実力主義を打ち立て、賞与の支給額を成果に応じて、1カ月分から8カ月分と大きな幅を持たせる「信賞必罰」と呼ばれる給与体系の刷新を行いました。

これにより、社員のコスト改善意識が醸成され、業績回復に繋がりました。

シャープの例は、成果主義の導入が企業の業績アップにつながることを示した典型例です。

年功序列賃金がグローバルな観点から、もはや通用しないことをもっとも端的に表しているともいえるでしょう。

「差別」という視点で日本型雇用を論じた橘さんの慧眼

筆者は、経済合理性やマクロに見た労働市場と言う観点から、日本型雇用の矛盾点を突いてきましたが、「差別」という視座に立ってこれを論じたことはありません。

橘さんは、「差別」という視点で日本型雇用を論じ、日本的雇用は「身分差別」「性差別」「国籍差別」「年齢差別」の重層化した差別制度と指弾しています。

そこで、筆者も、差別という視点で、日本型雇用を論じます。

身分差別について

日本型雇用における「身分差別」の根源となっているのはメンバーシップ制にあります。

そして、メンバーシップ制を理論づけているのが、ユニオンショップ制です。

ユニオンショップ制とは、採用時に労働組合加入を義務付けるというものです。採用後に組合から脱退するもしくは除名された場合、使用者は当該労働者を解雇する義務を負います。

大企業では企業別労働組合が存在し、ほとんどの場合、ユニオンショップ制を導入しています。

しかも、組織化の対象を正社員に限定することがほとんどで、非正規社員は組織化の対象から外されています。したがって、非正規社員は企業別労働組合には加入できません。

その結果、正社員のみで組織された企業別労働組合が過半数労組となり、労使交渉や労使協定締結の場において、労働者代表となります。

毎年、春闘で、ベースアップや一時金などの賃金交渉を行いますが、企業別労働組合は、組合員たる正社員の賃上げのみに関心があるため、当然、非組合員たる非正規社員の意向は反映されません

その結果、非正規社員は低賃金だったり一時金が支給されなかったりするわけです。

派遣社員の場合は、そもそも派遣先企業に直接雇用されていないため、派遣先の企業別労働組合に加入できません。必然的に派遣社員の意向も春闘に反映されません

皆同じ屋根の下でその会社のために働いているのに、一部のものだけ労使交渉の参画が認められ、その果実を独占しているということです。

西欧の中世都市のギルドみたいな存在です。

非正規社員の中に能力の高い方はたくさんいます。

したがって、

非正規社員の皆さん、このような賃金体系は成果給と全く無縁なので、自分の賃金が低いことと能力とを絶対に関連付けないでください。 

性差別について

性差別の根源となっているのは、終身雇用制にあります。

終身雇用制のもとでは、正規従業員の解雇が容易でないために、柔軟な雇用調整が図れません。

その結果、正規従業員を雇用する際には、ジョブ・ディスクリプションが存在せず、勤務地・職種・出向先・労働時間などが全て無限定の包括的労働契約を締結します。

この雇用調整のあり方が、子供を産む役割を担っている女性に不利に作用するのは明らかです。

年齢差別について

皆さんは、年齢が高くなると転職市場において差別を受けるのはご存知かと思います。

しかし、その原因について考えたことがあるでしょうか?

転職市場において年齢差別の温床となっているは、年功序列賃金制です。

年功序列賃金制とは、若年期に生産性より低い賃金しか受け取れず、中高年になって、その分を生産性よりも高い賃金を受け取ることで清算するという制度です。

したがって、何らかの所得移転が伴いますが、若年期に自らが積み立てた賃金を中高年になって引き出すという積立方式をとっていません。

現在の若年層は本来受け取るべき額より低く賃金が抑制され、その抑制された分を現在の中高年層の賃金過払い分の原資とする賦課方式が採られています。

したがって、転職すれば、勤続年数がリセットされるので、転職先においてプロパー正社員と同じ賃金水準というわけにはいきません。

中高年層になると年功序列賃金制のもとでは、過払いが発生する側です。

勤続年数を賃金査定の評価の基準としている限り、転職組は、年齢が高くなればなるほど、年功序列賃金で手厚く保護されたプロパーとの賃金の乖離が著しくなっていきます。

したがって、高年齢になるほど、プロパーとの均衡を考慮して、転職が難しくなるというわけです。

これも、成果給を導入すれば一発で解決する話です。

プロパーであろうと、転職組であろうと、自身の持つ生産性相応分の賃金が支給されるのであれば、勤続年数による不合理な格差は発生しません。

何歳になっても、成果を指標として賃金が支払われるだけです。

逆に、成果給が導入されれば、賃金過払い状態も解消されるため、中高年になって無理に一つの会社に居座るインセンティブも消滅します。

国籍差別について

国籍差別は、新卒一括採用という稀有な採用方式が原因です。

新卒者市場は、メンバーシップに組み込まれるための最大の労働市場です。

しかも、学校を卒業してから労働契約を締結するのではなく、学校を卒業するまでに採用内定と呼ばれる「解約権留保付き労働契約」を締結します。

このようなことをやっている国は世界中どこを探してもありません。

したがって、このような雇用慣例が、卒業時期も日本と異なる諸外国の採用方式と相容れず、外国人材の採用を困難にしています。

諸外国では、通年採用が当たり前なのです。

日本型雇用はパワハラやブラック企業をも誘発する

終身雇用を前提とすれば、硬直化した労働市場が形成されます。

労働市場が硬直化すれば、転職がしづらくなります。

その現状に高をくくっているからこそ、パワハラ上司やブラック企業経営者が横行するのです。

流動性の高い労働市場では、パワハラの横行する職場や、労働法をきちんと遵守しないブラック企業には労働者が集まらず自然と淘汰されていきます。

パワハラやブラック企業を誘発する素地を形成しているのも、やはり日本型雇用だったのです。

まとめ

以上をまとめると、各方面の差別要因は、

  • 正規・非正規の差別:企業別労働組合(特に非正規労働者の組織化を排除したユニオンショップ制)
  • 性差別:終身雇用を背景に、勤務地・職種・出向先・労働時間が無限定な正規従業員の働きかたが女性の労働参加を阻害していること
  • 年齢差別:年功序列賃金
  • 国籍差別:新卒一括採用という特異な採用形式に依存しているため、外国人が労働市場から排除されていること

です。

終身雇用・年功序列賃金・企業別労働組合・新卒一括採用により特徴づけられる日本独特の雇用システムのことを、日本型雇用と言います。

すなわち、日本型雇用は働き方におけるあらゆる差別の温床だったのです。

経済成長も生産年齢人口比率の推移も今とベクトルの方向が正反対であった高度経済成長期に制度設計された日本型雇用をこれ以上維持し続けることは日本経済全体を沈没させることに繋がります。

ところで、日本型雇用を捨てることで沈没を免れた会社が2つあります。

一つは、先ほど紹介したシャープです。

鴻海出身の戴社長の手腕で、年功序列賃金から脱却し大胆な成果給を導入することで、会社の沈没を免れました。

もう一つは、パナソニックです。

パナソニックは、2010年3月期から2015年3月期に至るまで、連結ベースで13万人従業員が減少しました。すなわち、事実上、終身雇用から脱却しました。

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これにより、やっと業績改善の兆しが見られ始めました。

パナソニックが、13万人の雇用を維持したままだったら、おそらく今頃は沈没しているでしょう。

これだけの既成事実が存在するのに、それでもなお終身雇用・年功序列という不合理な身分制を敷いて、既得権を維持すべく日本型雇用に執着し続けるひとたちは、まさしく橘さんの言われる、「日本社会を破壊し腐らせていくひとたち」に相違ないでしょう。

どういうひとたちがそれに相当するのか見分け方は簡単です。

それは、高度プロフェッショナル制度を「残業代ゼロ」と称して、法律の常識からかけ離れたレッテル貼りをしているひとたちです。