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親子で労基署からお叱りを受ける パナソニック子会社に是正勧告

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はじめに

 2017年3月、砺波労働基準監督署はパナソニック本体を労働基準法違反の疑いで書類送検しました。

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 一方、大阪中央労働基準監督署はパナソニック子会社を労働基準法違反の是正勧告をしました。是正勧告を受けたのは、電気工事会社のパナソニックESエンジニアリング(大阪市)。勧告・指導の内容は次の通りです(参照元:『産経新聞』2017.08.10)。

  • 是正勧告の内容:一部の社員について、休日出勤しながら代休が申請されていなかったため、適切に代休を取得させること。
  • 是正指導の内容:パソコンの利用履歴によって把握される労働時間と自己申告によって把握される労働時間との乖離が見られたため、所定の補正を行い適切な労働時間把握をすること。

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是正勧告について

 この状態は、労働基準法違反に該当するため、労基署は是正勧告を行いました。その根拠は次の通りです。

労働基準法における休日規定について

 労働基準法35条第1項は、使用者は労働者に毎週少なくとも1日の休日を与えなければならないと規定しています。この休日を法定休日と言います。法定休日に出勤した場合、そのままでは、週1日の休日すら確保されず、何日も連続勤務が続くことになってしまいます。この事態を避けるために、使用者は、次の何れかの方法を取らなければなりません。

  • 休日の振替
  • 代休
休日の振替

 休日の振替とは、あらかじめ休日とされた日を労働日とし、他の労働日を休日とすることを意味します。これを行うためには細かな要件があります。次の記事に詳細を記載しているので参考ください。

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 休日の振替の場合、「あらかじめ」という点が重要です。したがって、休日労働が行われた日以後に、休日の振替ができないことに注意が必要です。

代休

 代休とは休日労働が行われた場合に、それ以後の特定の労働日の労働義務を免除することです。したがって、休日労働が行われる日まで代替休日として取得するべき日を何も決めておらず、事後的に特定の労働日を休日とした場合、代休の取り扱いになります。

 連続勤務を避けるために、代休は休日労働が行われた日からなるべく近接した日に取得されなければなりません。なぜなら、このまま放置すれば、週1日以上あるいは4週間に4日以上という休日規定に違反するからです。

 パナソニック子会社は、代休取得を怠り、労働基準法35条に定める休日規定に違反していたため是正勧告を受けたのでしょう。

是正指導について

 厚生労働省のガイドラインは、使用者は原則として次の2つの方法によって労働時間を適切に把握しなければならないと規定しています。

  1. 使用者による現認
  2. タイムカード・ICカード・パソコン使用履歴など客観的な記録

 やむを得ず、自己申告制によって労働時間を把握する場合、客観的手法によって把握される労働時間と乖離が見られないか照合する必要があります。乖離が見られる場合は、客観的記録を基礎として労働時間に所要の補正を施さなければならないことになっています。

 今回の事案では、両者に乖離が見られたため、同労基署は是正指導をしました。

 また、自己申告制によって把握した労働時間が客観的記録に基づく労働時間よりも短い場合、短縮された時間について時間外労働の割増賃金が支払われていなければ、賃金不払い残業に相当し、労働基準法37条に違反します。

時間外・休日労働協定の対象労働者

 報道では、管理職を除く600人を対象にという記述が見られます。これは、管理職が、時間外・休日労働協定の締結対象から除外されていることに起因します。監督署が管理職以外に絞って労働時間の実態調査をしたのは、管理職が労働時間管理の対象から外されているためです。

パナソニック本体の労働基準法違反との違い

 パナソニック本体は、協定延長時間を超えて労働者に時間外労働をさせていたため、労働基準法32条違反の疑いで書類送検されました。

 一方、パナソニック子会社では適切な労働時間の把握がなされていませんでした。客観的データを基礎として所要の補正をした場合、時間外労働が協定延長時間を超える可能性もあります。したがって、労働時間は、なるべく客観的手法によって把握されなければならないのです。

まとめ

  休日労働をした場合、代休が取得できなければ連続勤務を余儀なくされるのは必然です。したがって、休日労働をした日からなるべく近接する日に代休を取得し、連続勤務を回避しましょう。

 また、使用者により適切な労働時間の把握がなされていなければ、長時間労働を余儀なくされるのは必然です。自己申告制によって把握される労働時間が、実労働時間より短くなっていたら、使用者に適切な労働時間を把握してもらうように依頼しましょう。