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大仏様が泣いている:東大寺福祉事業団が残業代未払いで提訴される

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はじめに

東大寺と言うと奈良の大仏様(廬舎那仏)が有名ですよね。

大仏建立の詔を発したのは聖武天皇ですが、そのお后の光明皇后もたいへん偉大な方で、悲田院施薬院と呼ばれる施設を設置し、慈善事業に尽くされました。

悲田院とは、貧窮者・病者・孤児などを救済した施設のことで、723年興福寺に設置されたのが始まりとされますが、730年、平城京に光明皇后が官設しました。

施薬院とは、貧窮の病人に施薬・施療する施設のことで、同じく730年に、平城京に光明皇后が官設しました。薬草を栽培したり,薬を蓄えて貧病者に施与したりしていました。

光明皇后は、現代で言う社会福祉事業の先駆けとなられたようなお方なのです。

東大寺福祉事業団における異常事態

東大寺はこの故事に則り、昭和30年に社会福祉法人東大寺福祉事業団を設立しました。

しかし、その社会福祉法人東大寺福祉事業団の職員や退職者が、所定の残業代が支払われていないとして、同法人を訴えるという異常事態が発生しています。

報道は次の通りです。

給与規則に沿った残業代の支払いを受けていないとして、奈良市雑司町の社会福祉法人「東大寺福祉事業団」の職員や退職者ら計116人が、同法人を相手取り、計約6千万円の残業代の支払いなどを求めて奈良地裁に提訴した。提訴は9日付。

訴状によると、原告は同法人が経営する障害のある子供たちを治療・支援する東大寺福祉療育病院に、看護師や介護福祉士、栄養管理士などとして勤務。(参照元:産経新聞)

www.sankei.com

原告は同法人が運営する東大寺福祉療育病院に勤務する看護師、介護福祉士、管理栄養士などです。

東大寺福祉療育病院は、障がいのある子供たちの医療・リハビリテーション・看護・療育支援を実践する医療施設で、大仏建立時の生命共生の仏教理念に基づいて設立されました。

看護師や介護福祉士、管理栄養士は労働時間に応じて賃金が支払われるべき職業

看護師は、疾病者の療養上の世話・処置および診療補助を行っています。

介護福祉士は、障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者に介護を行っています。

管理栄養士は、傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導を行っています。

何れの方も、労働時間に応じて賃金が支払われるのに相応しい職業であり、したがって、残業代が支給されるのは当然のことです。

研究職や為替ディーラーに対し、労働時間に応じて賃金を支払っても意味が無い

一方、企業の研究開発職の場合、新製品を開発したり特許を取得することが目的です。

新製品がヒットすれば、会社に多大な利益をもたらすことに繋がります。しかしこの利益は、必ずしも、それを生み出すために費やした時間に比例しません。

あるとき、ふと突然、斬新なアイディアが思いつくこともあれば、どれだけ時間を費やしても一向に頭に思い浮かばないときもあります。実験をしていても、奇跡的に一発でうまくいくこともあれば、全然うまくいかないこともあります。

世の中に無いものを創り出そうとしているのであれば、こんなことは日常茶飯事です。

例えば、実験上の何らかのトラブルがあったりすると、速やかにそのトラブルを解消しておかなければ、それまでのデーターが全てぶっ飛んでしまうことがあります。

何らかの実験上のトラブルに見舞われるなどして、夜遅くまで実験していたとしても、始業時間が一律に定められていれば、次の日、否が応でも朝早く起きて出勤しないといけない。これでは、体がもたないんですよね。

裁量労働であれば、ゆっくり睡眠をとって次の日ゆっくり目に出勤することができます。

研究職というのは、裁量労働が当たり前なのです。

為替ディーラーに関しては詳しくありませんが、コンピューターディスプレイの釘付けになりながら、ひたすら外貨取引をやっている人たちのことですよね。

この場合も、研究と同じく答えの無い事をやっているので勘を頼りに手探り状態で前に進むしかありません。

短時間で莫大な利益を上げる人もいれば、どれだけかかっても利益に結び付かない人もいる。このような職種に、労働時間に応じて賃金を払えって言ったって土台無理でしょう。

まとめ

世の中には、看護師や介護士、管理栄養士のように、労働時間に応じて対価が支払われるべき職種もあれば、研究職や為替ディーラーのように、成果に応じて対価が支払われるべき職種もあります。

この違いを明確にしておかないと、残業すなわち法定時間外労働に対し誤った解釈をする可能性があります。

労働時間に応じて対価が支払われるべき職種や、工場労働者のように労働時間に応じて成果物を生み出すことのできる職種については、しっかりと労働時間管理をし、その時間に応じて賃金が支払われるべきと筆者も考えます。

したがって、高プロを「残業代ゼロ」と称して、あたかもどの職種に対しても一律に残業代が出ないかの如く誤信を与えるのは完全に間違っていますね。

労働時間に応じて対価が支払われるべき看護師や工場労働者の方たちは、残業代が支払われないことには敏感だけれども、高プロには無関心なはずです。

なぜなら、彼ら彼女らは労働時間に応じて成果を生み出すことのできる職種であるため、ちゃんと対価さえ支払ってもらえれば敢えて成果給にする必要が無いからです。