Mesoscopic Systems

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マスコミが高度プロフェッショナル制度に反対するのはなぜか

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はじめに

高度プロフェッショナル制度に関する最近のマスコミの論調は、目に余るものがあります。

ひどい場合には、「残業代ゼロ法案」・「労働基準法改悪」などという言葉を用いることすらあります。

因みに、高度プロフェッショナル制度は「残業代ゼロ」ではありません。

「脱時間給」あるいは「残業という概念が存在しない」が正解です。

法律的な詳細については次の記事参照を。

www.mesoscopical.com

年功序列賃金制について

年功序列賃金とは、若年労働者は自身の生産性より低い賃金しか受け取れず、中高年労働者は自身の生産性以上の賃金を受け取っているという制度です。

このような特異な賃金形態は大企業において多く見られます。

生産性と賃金が等価になる年齢は、40代前半と言われ、それ以降の中高年は、言わば賃金が過払いの状態になっています。

一方、中堅中小企業では、生産性カーブと賃金カーブとがほぼ一致しており、どの年代においても過不足なく賃金が支払われています。

これらの事実は、日本銀行が、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」と経済産業省「企業活動基本調査」に基づいて計算した、賃金カーブと生産性カーブの結果からも明らかになっています。

年功序列賃金制のもとで時間軸に基づき賃金が支払われると何が起きるのか?

従来の時間軸を基調とした賃金制度のもとでは、自身の生産性以上の賃金を受け取っている労働者にとっては、お得な制度と言えます。

また、時間に比例して賃金が支払われるため、残業をすればするほどさらに便益を享受することに繋がります。

これが、中高年ダラダラ残業の発生メカニズムです。

しかし、中高年がダラダラ残業すればするほど、どこかから中高年に対する過払い賃金の原資を調達してこなければなりません。

そこで、ターゲットとされるのが、自身の生産性より低い賃金しか受け取っていない若年労働者です。

中高年がダラダラと残業すればするほど、若年労働者は低賃金かつ過密な長時間労働に瀕することに繋がります。

これが、近年問題になっている、若年労働者の過労うつ、過労死などの要因です。

すなわち、終身雇用・年功序列賃金こそが、昨今の長時間労働の最大の要因だったのです。

成果に基づき賃金が支払われるようになると何が起きるのか?

高度プロフェッショナル制(高プロ)とは、従来の時間型賃金に代わって、成果に応じて賃金が支払われる制度です。

成果とは会社への付加価値の創出を意味します。

付加価値を労働投入量で割った指標が、労働生産性です。

すなわち、成果は労働生産性に直結しています。

成果に応じて賃金が支払われるということは、生産性カーブと賃金カーブとがぴったり重なることを意味します。

では、高プロという賃金体系が導入されて一番困るのは誰でしょうか?

それは、自身の生産性に比べて高額な賃金を受け取っている大企業中高年正社員です。

成果型報酬が導入されると、中高年に対する過払い賃金の原資調達から解放されます。

したがって、若年労働者は、自身の生産性相応分の賃金を受け取ることに繋がります。

すなわち年功序列賃金制のもとで働く若年労働者は、高プロの導入によって最も福音がもたらされるのです。

新聞記事が出来上がるメカニズムを考慮すれば自ずと答えは見えてくる

しかし、こういう事実をマスコミは絶対に報道しません。

新聞社では、若い記者たちが手足を使い現場を駆けずり回り、取材活動をしています。

しかし、これらの若い記者たちは、記事原稿を作成することはできても、当日の紙面作りの方針までは口出しすることができません。

どの記事を一面トップ記事若しくはベタ記事にするか、又は記事をそもそも取り上げないといったいわゆる編集権を握っているのは「デスク」とよばれる人たちです。

新聞社も大企業なので、年功序列賃金のもとで手厚く保護された40~50代の中高年正社員がデスクとして活躍しています。

「デスク」と呼ばれる人たちは、若手記者が取材した内容について、「もっとこうしろ」とか「こういう表現は使うな」とアドバイスします。

必然的に、自分たちにとって不利益になるような記事ないしは表現を発見した場合、たちどころにボツにします。

新聞の読者は、新聞記事だけからは決して読み解くことのできないこれらの行間すなわち、リテラシーを身に付けなければならないのです。

もし若手記者が、日本銀行に取材し年功序列賃金の真実についての記事を書いたらどうなるか?

まず、日銀が作成した年功序列賃金についてのグラフの一例を示します。

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グラフから明らかなように、中高年に過払い給与が発生していることが読み取れます。

もし、このデータに基づいて、若手記者が、「この歪んだ給与体系こそが中高年のダラダラ残業の温床になっており、ひいては若年労働者の低賃金過密長時間労働に繋がっている」という趣旨の記事を書いて、デスクにあげたらどうなるでしょうか?

さすれば、一瞬にしてボツにされる、又はもう少しマイルドな表現にできないかと修正依頼が施されるでしょう。

テレビ等放送業界においてもそのメカニズムはほとんど差がありません。

民間放送業者(民放)に限れば、クロスオーナーシップの名のもとに、新聞社が放送業に資本参加し、新聞社‐在京キー局‐ローカル局とマスメディアの集中管理がなされています。

まとめ

皆さんは、マスコミ報道に強烈な違和感を覚えたことはありませんか?

高プロは、給料過払いの大企業中高年正社員だけが割を食う制度であり、若手正社員・中小企業正規従業員・非正規社員には影響がありません。

むしろ、若手正社員や非正規社員にとっては、自身の生産性に応じて賃金が支払われることに繋がり、福音すらもたらされます。

総務省統計局によると、2017年5月現在、日本の就業者数は、6547万人

これに対し連合の組合員数は約680万人。

このうち、給料過払いの中高年層を単純に半数と仮定すると約340万人

比率にして5%程度。 

5%の人の意見を代弁されたら、そりゃ読者が違和感を持つのは当然でしょう。