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電通略式起訴:電通の入札参加停止がどこまで及ぶか注目していこう

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はじめに

 電通の略式起訴を受け、入札参加停止などの行政処分の方針が決定されたのは、2017年7月9日現在判明しているもので、次の2つです。

 違法残業事件で広告大手の電通(東京都)が法人として略式起訴されたのを受け、京都市は7日、同日から1カ月間の入札参加停止とする方針を決めた。

(参照元:『京都新聞』2017.07.07) 

 広告大手の電通(東京都)が法人として略式起訴されたのを受け、神奈川県が同社と3か月間事業契約を結ばない方針を決定したことが7日わかった。

(参照元:『神奈川新聞』2017.07.08

 電通の書類送検を受けて、入札参加停止の報道が相次いだ半年ほど前に比べれば何かショボいですね。因みに、電通の書類送検時には、JRA、滋賀県、京都府、奈良県、和歌山県など関西の自治体を中心に入札指名停止が相次ぎました。

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 書類送検も重大ですが、検察による起訴の方がはるかに重大です。なお、平成17年~26年の10年間において労働基準関係諸法令違反の罪で検察が起訴した場合、有罪率は99%以上となっています。したがって、検察が電通を略式起訴したことを受け、官公庁・団体の入札参加停止処分の検討が直ちに開始されると思っていたのですが、筆者の見当違いだったのでしょうか。

半年前は電通が起訴されたら処分を検討するとの報道が相次いでいた

 電通が起訴された場合、処分を検討するとしていた官公庁・団体は次の通りです。

  • 東京や愛知、大阪など十都府県
  • 内閣府や総務省など五省庁と最高裁
  • 文部科学省や厚生労働省など七省庁
  • 名古屋と堺の二市(停止処分を検討ではなく停止処分にすると断言)
  • 札幌や京都、前橋など八市(京都市は早速有言実行しました)
  • NHKや日本政策投資銀行など五法人
  • 東京メトロやJR北海道など五法人
  • 国際観光振興機構など九法人
  • 日本スポーツ振興センター(JSC)や日本貿易振興機構(ジェトロ)、理化学研究所など十三法人

 報道されただけでもざっとこれだけ存在します。

注目すべき官公庁・団体

 筆者の独断と偏見に基づき選んだ注目の官公庁・団体は次の通りです。

東京都

 オリンピック招致自治体です。

最高裁判所

 最高裁判所は、かつて裁判員制度広報業務を電通に発注していたことがあり、一部の契約において不正経理が発覚しています(参照元:裁判員制度 - Wikipedia)。

内閣府

 この資料にあるように、内閣府は仕事と生活の調和を政策課題としてその実現のために取り組んでいます。したがって、電通に対しどのような処分を下すのか非常に興味があります。因みに、この資料には、戦略的広告経費(平成27年度 総額10億円)として、電通を含む各広告業界への資金の流れが記載されています。

厚生労働省

 電通に対しどのような行政処分を下すのか筆者がもっとも注目する官庁です。一連の電通事件は、労働基準監督署による高橋まつりさんの労災認定に端を発し、次いで東京労働局の「かとく」が捜査に乗り出しました。そして、昨年12月28日、東京労働局の「かとく」は、電通と幹部1名(高橋まつりさんの上司)を書類送検しました。厚生労働省が、電通に対し空気のような行政処分で終わってしまったら、他の官公庁・団体に示しが付かないでしょう。

 これから、電通に対する行政処分がどこまで及ぶのか注目していかなければなりません。

まとめ

 例えば、ワタミ(改め 三代目鳥メロ ミライザカ)や和食さとのような飲食業界であれば、店舗から客足が遠退くことによってブラック企業に一定程度ダメージが与えられるでしょう。しかし、電通のようにB to B事業を行っている企業、とりわけ、官公庁等との取引の多い企業は、行政処分のみでは、それによって受けるダメージにも限界がありそうです。

 また、電通は、2位の博報堂に比べて、売り上げも2倍以上あり、広告業界内で不動の地位を築いています。業界内で常にトップランナーであり続けるためには、一見して華やかそうな表向きの光景とは裏腹に、殺伐とした内実が存在していたのでしょうか。

 これは何も広告業界に限った話ではありません。製造業などにおいても、業界内で突出した力を持っている企業が存在していないでしょうか。彼らはどうしてそこまで企業規模を拡大し、業界内で抜きん出ることができたのでしょうか。

 と、電通事件に関してはいろいろなことを考えさせられたなあというのが正直な感想です。