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東京労働局がHISを違法残業の容疑で書類送検:「事件」の旅の行き先はどこになるのか?

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はじめに

厚生労働省東京労働局は、本日、大手旅行会社「エイチ・アイ・エス」(HIS、東京都新宿区)と同社幹部2人を労働基準法違反容疑で書類送検しました。

www.asahi.com

同社は2015年、営業担当および販売担当の従業員2人に対し、労使協定で定めた上限(月78時間)を超える時間外労働をさせた疑いが持たれています。

2人の時間外労働は1か月当たり最長で、それぞれ109時間96時間

同社は、全国の労基署から2010~2014年度に10回以上の是正勧告を受けていました。

同社は2月に「現状では労務管理上の違法状態は解消している」と釈明していましたが、度重なる是正勧告をガン無視してきた事実は消えません。

是正勧告とは

是正勧告とは、事業所の労働基準関係法令の違反行為が、労働者に重大かつ深刻な被害を及ぼす前にそれを是正するよう勧告することをいいます。

実際の是正勧告に当たるのは、労働基準監督官と呼ばれる行政官です。

労働基準監督官は、事業所の法令違反行為を発見し、是正を促すために次のような権限を握っています。

労働基準法101条第1項

労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。

このように、労働基準監督官は、事業場に立ち入り調査し、帳簿及び書類等客観的資料の提出を求め、使用者又は労働者に証言を求めることができます。

では、こうして得た情報をもとに労働基準監督官が法違反の是正を促しても、一向に聞く耳を持たない事業者に対してはどうしたら良いでしょうか?

労働基準法102条

労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法 に規定する司法警察官の職務を行う。

このように、労働基準監督官には司法警察官としての権限が与えられており、強権を発動して捜査(強制捜査)を行ったり、逮捕特権も持っています。

 度重なる是正勧告にもかかわらず、事業主がそれに従わない場合は、司法処分を行うこともあります。

司法処分とは、検察庁へ身柄や証拠物件を送致すること(書類送検)です。

HISでは、何がおこなわれていたか

本来、法定労働時間を超える労働(時間外労働)は、労働基準法32条および40条の規定により禁止されていますが、労使協定(いわゆる36協定)の締結および行政官庁への提出を要件として、時間外労働が適法化されます。

36協定には、延長することができる時間の上限を記載する必要がありますが、HISの場合、1か月の延長時間の上限を78時間と定めていたようです。

使用者が労働者に対しこの上限をも超える時間外労働をさせていた場合、直ちに労働基準法違反となります。

労働基準監督官はこの違反事実を発見し、HISに対し10回以上法違反の状況を改善するよう是正勧告しましたが、一向に改善されませんでした。

そこで、東京労働局は、本日、法人としてのHIS及び同社幹部2人を書類送検しました。

HISは、「現状では労務管理上の違法状態は解消している」と釈明していますが、そうであれば最初の是正勧告で素直に改善するのが筋でしょう。

監督署は、言うことを聞かない事業者のPCの電源をシャットダウンしたらどうか

前回の記事で、残業申請をしない限り業務用PCを強制的にシャットダウンするという残業抑止システムについて紹介しました。 

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監督署はこのシステムを応用し、度重なる是正勧告にも従わない事業者の全ての従業員が残業を申請できないようシステムにロックをかけたらどうでしょうか?

違法な残業とは、36協定の延長時間の上限を超える残業のことです。

このようにすることで、事業者による法違反の状況の迅速な改善が促され、違法な長時間残業の抑止に繋がるのではないでしょうか。

まとめ

HISは、大手旅行会社ですが、違法長時間労働が横行する会社の旅行パックを利用しても全然楽しめないですね。

東京労働局がHISおよび幹部を書類送検したということは、今後は、東京地検が同社や幹部を起訴するかどうかが焦点になります。

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また、東京地検が起訴する場合、それをどういう形で行うのか(略式起訴するかどうか)についても注目です。

近年、違法長時間労働の裁判をめぐっては、大阪簡裁では、略式起訴不当として略式裁判を行わずに、通常の公開形式で行われる事例が増えてきています。

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したがって、起訴が行われた場合、裁判がどういう形で行われるのかや、通常の公開形式で裁判が行われた場合、HISの社長がどのような反省の弁を述べるかについても注目です。

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そして、判決がどうなるのかについても注目です。

 

つまり、東京労働局が取り調べた「事件」の旅の行き先どこになるのかが今後注目すべき点なのです。