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2017年度新入社員意識調査アンケートは雇用流動化への布石を打つ結果だった

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はじめに

2017年5月9日、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が、2017年度新入社員意識調査アンケート結果を発表しました。

http://www.murc.jp/publicity/press_release/press_170509.pdf

「自分ファースト」志向が高まると記述されていましたがそれは当たり前です。

筆者はもっと違う見方をしています。

その見方とは、「終身雇用の崩壊」の前兆が高まってきたということです。

新入社員が最も会社に望むことは何か?

2017年度新入社員が会社に望むことの1位は、ダントツで「人間関係がよい」でした。

これは、近年パワハラが著しく増加傾向にあることを鑑みれば、当然の結果でしょう。

パワハラの最大の原因が、職場に同質性を求めること、すなわちメンバーシップ制を基調とした労務管理にあることは先に示した通りです。 

www.mesoscopical.com

 雇用を流動化し、多様な価値観を認めなければ、パワハラを決して食い止めることはできないのです。

新入社員が2番目に会社に望むことは何か?

2位は、「自分の能力の発揮・向上ができる」でした。

しかし、「自分の能力の発揮・向上ができる」を1~3位までのいずれか選択した人の割合を見ると意外な結果がわかりました。

下図は、その割合の2004年度から現在に至るまでの推移です。

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出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

グラフから明らかなように、右肩下がりの傾向にあることがわかります。

年々、会社が能力発揮の場として若者から支持されていないことがわかります。

これは、終身雇用が機能しなくなりつつあることを現しています。

終身雇用を前提とすれば、業務内容が無限定の労働契約が締結されます。

したがって、実際に入社し配属されるまでどういう仕事を担当するかわかりません。

配属された部署が必ずしも自分の適性に合ったところとは限りません。

また、首尾よく適正に見合った部署に配属されたとしても、今度は逆に、適正に見合わない部署へと異動になる可能性もあります。

すなわち、長期雇用を前提としたこのような内部労働市場をベースとした雇用調整は、適材適所の人材配置の手法としては機能しないのです。

終身雇用制がうまく機能しなくなってきたことが、会社を能力発揮の場として支持しないという若者の意識変化として現れたのです。

「残業がない・休日が増える」と「給料が増える」との関係

次に、会社に望むこととして「残業がない・休日が増える」と「給料が増える」を1~3位までのいずれか選択した人の割合を考えます。

下図は、それらの割合の推移を表すグラフです。

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出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

「給料が増える」の割合がほぼ一定で推移しているのに対し、「残業がない・休日が増える」の割合が、2012年度を境に右肩上がりで推移していることがわかります。

そして、今年度初めて、それらの割合が逆転しました。

2012年以降の、「残業がない・休日が増える」の期待値の高まりは、景気の回復基調に伴う人手不足感が顕在化したことに一致しています。

今後、生産年齢人口比率の急激な減少を受け、この傾向は一層強まるものと予想されます。

これは、労働時間の短縮を疎かにし、賃上げを主体としてきた労働組合運動の方向性が、若者を中心に機能不全を起こしていることを現しています。

旧態依然な労使交渉を行っている企業は、若者から敬遠されることになるでしょう。

残業に対する考え方

アンケートでは、「給料が増えなくても残業はしない方がよい」と、「残業が多くても給料が増えるのだからよい」のどちらが自分の考えに近いかについての結果も示されています。

下図は、それらの割合の推移を示したグラフです。

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出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

「残業が多くても給料が増えるのだからよい」の割合は年々右肩下がりの傾向を示しているのに対し、「給料が増えなくても残業はしない方がよい」の割合は年々右肩上がりの傾向を示しています。

2013年度に両者の割合が逆転しました。

従来、終身雇用を前提とした雇用調整の一つに残業時間というものがあります。

繁忙期には、特別条項付きの36協定を労使間で締結するなどして、内部労働市場による雇用調整を図ってきました。

逆に、閑散期には、残業禁止命令を発令するなどして、使用者はダラダラ残業の未然防止に対応してきました。

上のグラフにあるのは、2004年度から現在までの推移です。

その間の2008年には、リーマンショックという未曽有の経済危機がありました。

現在、日本経済はリーマンショックから脱却し、2012年度から景気の回復基調にあります。

しかしながら、景気の好不況にかかわらず、2004年度以降、両者の割合がともに、単調な変化にあるということは、もはや、労働時間の長短でもって雇用調整を図るというやり方が通用しないことを現しています。

これが、若者の残業に対する考え方として現れたのです。

まとめ

 以上をまとめると、新入社員が会社に望むことである、「人間関係が良い」についても、「自分の能力の発揮・向上ができる」についても、「残業がない・休日が増える」についても、終身雇用から脱却し雇用の流動化を図らなければ彼らの望み通りに実現しません

また、好不況に関わらず、「給料が増えなくても残業はしない方がよい」の割合が年々高まっていることは、内部労働市場の労働時間の長短で雇用調整を図るという手法がもはや限界にまで差し掛かっていることを示しています。

すなわち、新入社員意識調査アンケートは雇用流動化への布石を打つ結果となっています。

 

旧態依然とした労使関係にある企業は、今後ますます若者から敬遠され、健全な事業活動が継続できなくなることでしょう。