Mesoscopic Systems

働くルールを理解してこれからの働き方について考えよう!

このまま日本型雇用慣行を維持し続けるとどうなるのか?

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日本型雇用慣行とは

日本型雇用慣行は、終身雇用・年功序列賃金・企業別労働組合の3つによって構成されています。

これらは、高度成長期という経済環境の下で次第に形成・定着していった日本独特の雇用システムです。

高度成長期は、今から半世紀以上も前の1955年に始まり、その後20年ほど続いたとされています。

「明日が今日よりも豊かになる」が一般的だった時代です。

また、出生率も高く、生産年齢人口がどんどん増え続けた時代でもありました。

言わば、低成長かつ少子化の現代日本とは全く逆の状況でした。

このように、日本型雇用慣行は今とは逆の状況で設計されながら、一部企業において制度だけが今もなお色濃く残っています。

今回は、かつては安定の象徴とされた日本型雇用慣行が、現代ではどのような弊害をもたらすかについて考えます。

年功序列賃金

 年功序列賃金のもとでは、勤続年数に応じて賃金の額が定まっています。

企業規模が拡大し、生産年齢人口が増え続けていた当時でないと成り立たない賃金体系です。

最初に、雇用する立場に立って考えてみます。

仮に、新卒一括採用によって若年労働者を雇用したとします。

彼らも勤続年数に応じて賃金が肥大化していきます。

年功序列賃金を維持するためには、企業の年齢構成が定常的でなければなりません。

年齢構成が定常的とは、各世代別の比率が常に一定であり、賃金の高い中高年側に決して偏ったりはしないということです。

しかし少子化が叫ばれる中、若年者の労働力不足は今後進展していきます。

したがって企業内の年齢構成が高年齢側にシフトし、人件費がますます肥大化することになります。

高度成長期の日本では、こういう事態を想定していませんでした。

では、入社する立場に立って考えてみましょう。

仮に、年功序列賃金を採用する企業に入社したとします。

労働者の平均年齢の上昇が賃金コストの上昇に直結し、若年労働者の不公平感がますます大きくなります。

それを知った若者が入社を避けるようになり、ますます平均年齢が上昇していきます。

すると、ますます若年労働者に大きなしわ寄せが来ます。

その結果、再び若者が当該企業への入社を避けるようになり…と悪循環が続くでしょう。

企業の業績拡大が、人件費の肥大化に追い付かなければ、いずれ特異点を迎えます。

就活生のうち賢い人は、決して年功序列賃金を採用している企業を選ばないのです。

終身雇用制

 そもそも、年功序列賃金は、若い頃の低めの賃金を中高年になってから回収する仕組みであり、終身雇用制を前提としています。

言わば、社内預金に類似したシステムです。

世代間扶養という観点からは、年金のシステムに類似しているともいえるでしょう。

少子高齢化の進展によって年金制度が破綻に向かいつつあることと同様に、若年労働者の減少によって年功序列賃金が破綻に向かいつつあることも明らかでしょう。

生産年齢人口が減少し続ける日本にあって、若年労働者が年功序列賃金に固執しても割に合わないのです。

 年功序列賃金を維持するためには、人件費の増大スピード以上に業績拡大していかなければなりません。

一方で、終身雇用制を維持するということは従業員を解雇できないことと直結します。

グローバル競争に常に晒されながら、今後40年間安定に業績を伸ばし続ける企業があるでしょうか?

仮にあったとしても、自分が所属する企業がそうである保証はありません。

下記記事で書いたように、パナソニックは、2010年3月期から2015年3月期に至るまで、連結ベースで13万人従業員が減少したとされています。

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 パナソニックがもし2010年から現在に至るまで企業規模を維持したままだったら、今は存在していないでしょう。

終身雇用制を堅持するということは、企業規模を安定に維持しなければならないことを意味します。

終身雇用制は過去の話であって、低成長かつ少子化の現代日本では絵に描いた餅であることが容易に推察できるでしょう。

企業別労働組合

 大企業正社員の多くが加盟している企業別労働組合は、労使協調路線を採用しています。

労使協調路線とは、円滑な雇用調整を図るために労使が一体となった既定路線のことをいいます。

また、大企業の殆どはメンバーシップ制を採用しています。

したがって、自己が雇用する正規従業員のみでなるべく雇用調整を図ろうとします。

そのためには、勤務地・仕事内容・労働時間・出向先などは無限定としなければなりません。

ひとたび使用者から辞令や命令を受ければ、それがどんなに不服であっても応じなければなりません。

因みにこれらを固辞した場合懲戒解雇の対象になることが最高裁判例によって明らかになっています。

すなわち、正社員とは勤務地・仕事内容・労働時間・出向先の決定を全て使用者に委ねるという意味が込められた包括的労働契約なのです。

現在社会問題となっている長時間労働の問題も、正社員のこの無限定な働き方と大きく関わっています。

先日、企業別労働組合の代表(ナショナルセンター)である連合が、時間外労働の上限規制をめぐって月100時間未満を提案しました。

残業月100時間未満と言えば、99時間も含まれます。

過労死の危険性がある非常に問題のある労働時間です。

実際に、月100時間未満の時間外労働でも、過労死の労災認定が多数報告されています。

本来、労働組合は賃金交渉だけでなく、労働者の健康や福利厚生も使用者と交渉しなければならないはずです。

なぜこのようなことになってしまったかは、終身雇用を堅持したいとする既定路線を鑑みれば明らかですね。

生産年齢人口の増加も経済成長も見込めないのに、日本型雇用慣行に固執する企業に就職することの意味

 日本型雇用慣行を採用する企業では、若年労働者が賃金の面で搾取の対象になることは明らかです。

まして、労働時間も無限定となれば、なるべく賃金の低い若年労働者をこき使いたいというインセンティブが働くことも明らかでしょう。

 かつては、高度成長ないしは安定成長期にあったため企業の存続が危ぶまれることはあまりありませんでした。

低成長期の今、これだけリストラや事業所閉鎖・企業の吸収合併などが相次ぐ中で、日本型雇用慣行にこだわる理由は全くないのです。

 なぜならば、これだけ日本型雇用の大前提たる終身雇用制が揺らいでいるのに、使用者に全面的に人事権を委ねる必要がどこにも見当たらないからです。

まとめ

オーストラリア出身の看護師にウェア・ブロニーさんという方がおられます。

彼女は、緩和ケアの介護を長年つとめ、数多くの患者を看取ってきました。

彼女は、著書「死ぬ瞬間の5つの後悔」の中で、人生最期の日を迎えつつある患者一人一人と向き合う中で患者らが語った後悔トップ5を次のようにまとめています。

  1. 「自分自身に忠実に生きれば良かった」
  2. 「あんなに一生懸命働かなくても良かった」
  3. 「もっと自分の気持ちを表す勇気を持てば良かった」
  4. 「友人関係を続けていれば良かった」
  5. 「自分をもっと幸せにしてあげればよかった」 

http://Top five regrets of the dying | Life and style | The Guardian  

 

ひとたび一つの会社に入社するやいなや、勤務地も職種も労働時間さえも無限定に受け入れざるを得ない正社員の働き方はやはり問題があると言わざるを得ないのです。