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徹底解説:「遅刻で罰金1万円」は労働基準法違反

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はじめに

兵庫県姫路市の「わんずまざー保育園」(小幡育子園長)が、保育士に「遅刻で罰金1万円」など不当な労働条件を課していたことが、同市の調査で分かった。

市は労働基準法違反にあたる可能性があるとして、姫路労働基準監督署に報告した。

出典:毎日新聞(2017年3月22日)

このケースは、労働基準法違反です。

以下、解説します。

「賠償予定の禁止」について

最初に、次の条文をご覧ください。

労働基準法16条

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

 これがいわゆる賠償予定の禁止を定めた条文です。

「労働契約の不履行について違約金」とは

 労働契約の不履行とは、労働契約に基づく労働の義務を労働者が履行しないことです。

正当な理由なく遅刻・早退・欠勤することなどが挙げられます。

例えば、所定労働時間が、

9:00~18:00(休憩12:00~13:00)とします。

正当な理由なく、

  • 10:00にしか来ない(遅刻)。
  • 16:00に勝手に帰宅する(早退)。
  • 欠勤する。

などが例として挙げられます。

 違約金とは、債務不履行の際に債務者が債権者に支払うべき旨をあらかじめ定めた金銭のことです。

「わんずまざー保育園」の場合で言えば、「遅刻で罰金1万円」の1万円が違約金に相当します。

労働基準法16条によれば、このような契約をしてはならないことになっています。

したがって、「遅刻で罰金1万円」は労働基準法違反になります。

法16条では、主語が「使用者は」となっていますので、今回のケースですと、「わんずまざー保育園」と、園長が労働基準法違反に問われます。

一方で、労働基準法には、ノーワークノーペイの原則というものがあります。

これは、労働者に欠勤・遅刻・早退などがあった場合に、それに相応する分の賃金を支払わないことを言います。

労働基準法では、これは認められています。

労働日に遅刻した場合、遅刻に相当する時間分の賃金が支払われないのは当然のことですよね。

 つまり、遅刻相当分の賃金が控除されるのは当然だけれども、罰金まで払う必要はないのです。

この違いを明確にして下さい。

なお、日給月給制で欠勤1日につき1日分の賃金が支払われない旨が定められてあっても、これは賃金請求権が発生しないことを定めた旨なので、本条違反にはあたりません。

「損害賠償額を予定する契約」とは

では、後半の、「損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」について説明します。

例えばみなさんが飲食店に勤めていたとします。

労働契約書に、「皿を割ったら罰金1000円」という旨の定めが書かれていたとします。

この定めは、明らかに労働基準法違反です。

このように、何もそんなことをしていないのにあらかじめ損害額を規定する労働契約を結ぶことが✖なのです。

では、次をご覧ください。

昭22.9.13発基17号

法第一六条関係

(一) 本条は、金額を予定することを禁止するのであつて、現実に生じた損害について賠償を請求することを禁止するところではないから差し支えない。

 これは、労働次官から発せられた通達の一部(該当部分)です。

上記に、「現実に生じた損害について賠償を請求すること」とあります。

ここで、先ほどの飲食店の例に話を戻します。

仮に、皿の値段を1000円とします。

何らかの不注意で皿を割ったとします。

使用者が、皿を割った労働者に対し「1000円弁償してください」と言ったとします。

使用者は、労働基準法違反に該当するでしょうか?

答えは、「労働基準法違反には該当しない」です。

使用者が、現実に生じた損害に賠償請求することは労働基準法では禁止されていません。

先ほどの、遅刻したら、遅刻に相当する時間分の賃金が支払われないというのと原理的には同じですね。 

 

この違いを明確にしておかないと、なんら根拠のない罰金を使用者から徴収されてしまうことになるので気を付けてください。