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賃金格差訴訟判決「同一労働を不認定」:東京地裁

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東京地裁の判決について 

東京メトロの駅構内の売店で契約社員として働いていた女性4人が、待遇に格差があるのは不当だとして、東京メトロ子会社を相手取り損害賠償を求めた訴訟の判決が23日ありました。

東京地裁は「契約社員と正社員の間の責任の度合いは大きく異なる」として、原告側の訴えを棄却しました。

参照元:産経新聞 

www.sankei.com

 筆者が繰り返しこのサイトで主張してきた通り、現在の雇用慣例の下では、「同一労働・同一賃金」の実現は不可能です。

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 雇用の流動化が実現していない状態で「同一労働・同一賃金」を求めるというのは無理ゲーなのです。

正社員という就業形態について考えてみよう

正社員は給料が高いので良いことばかりかと言うと、そうではありません。 

正社員は、入社時において使用者と、定年までの雇用が保障される代わりに使用者による広範な人事権を全て受け入れるというコミットメントの交換がなされます。

反対解釈すると、正社員は、この広範な人事権の受け入れを拒否した場合、入社時の約束を違えたことになり、信義則違反で解雇の対象となります。

広範な人事権とは

広範な人事権とは具体的に次のようなものがあります。

これらは、表向きには雇用調整を名目にしています。

①配転(担当業務や勤務地の無制限の変更)

②出向(グループ企業において第三者の指揮命令のもとで働くこと)

③残業(労使協定(36協定)に記載された延長時間を限度として、所定労働時間を超える労働に服すること

  このように、特定の会社において長期間にわたる職業生活を営むにあたっては、正社員は、担当する業務も勤務地も不明確です。

ただし、残業時間については、これまでは特別条項の36協定を労使間で締結すれば事実上青天井でしたが、つい先日、この延長時間の上限が、繁忙期に限って100時間未満とする合意が労使でなされ、政府案として固まりました。 

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 また、企業グループを形成しているような大企業の場合、使用者は出向命令権をも取得しているので、系列企業を含めれば正社員は勤務する会社すら不明確です。

恣意的な人事とは

正社員に対しては、雇用調整という表向きの目的を逸脱し、使用者による懲罰的・制裁的意味合いが込められた、恣意的な人事がなされることもあります。

たとえば、

①これまでキャリアパスと全く異なる閑職や意味のない業務に追いやる

②マイホームを購入した途端に片田舎への転勤を命じる

③担当業務の売り上げが上がらないことを理由に子会社への出向を命じる

④繁忙期であることを理由に特別条項の36協定を締結し、過労死ラインすれすれの残業を強いる

 などなどです。

その他にもいろいろと考えられるでしょう。

前回、ある老舗出版社の元編集者で、現在ある中国企業で通訳の仕事をされている初田さんの話を紹介しました。

初田さんは、出版社での勤務を振り返り、過労死を実感したといいます。

現在は、上海で幸せに過ごされているそうです。

こちらの記事に、初田さんが受けた理不尽の数々と解説が記載されていますので、参考にしてください。 

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 正社員の人はどんなに不条理とわかっていても、これらのことを拒否するとどうなるかおそらく肌感覚でわかっていることでしょう。

定年までの雇用が保証される限りにおいては、これら不条理な命令を渋々受け入れざるを得ないのです。

特に大企業において出世争いが熾烈を極める訳

また、大企業においては、たまたまその会社のサラリーマンであったものが経営者になる場合が殆どです。

外部から、経営者が招聘されることは滅多にありません。

これだけ強力な人事権が付与されているのですから、誰だって使用者の側になりたいと思うのは当然でしょう。

しかし、全員が出世し、使用者に到達できるわけではありません。

したがって、特に大企業においては、出世争いが熾烈を極めるのです。

 正社員はこれだけの我慢を強いられているのだから、給料が少しくらい多めに与えられても良いのではと東京地裁は判断したのでしょう。

しかし、正社員はその代償として失うものがはるかに大きいのです。

正社員は非正社員に比べ過労死に至る確率が約18倍

 また、先日次のような記事を書きました。 

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 このように、政府の過労死白書によると、正社員が過労死に至る確率は非正社員の約18倍です。

自動車の購入という問題に置き換えて考えてみる 

ここで、次のようなことを仮に設定してみます。

みなさんが車を買おうと店舗に出向き、車種Nと車種Pの2種類の車を勧められたとします。

①車種Nは価格が180万円

②車種Pは価格が10万円と安いものの、車の構造上の問題からブレーキが利かなくなる確率が車種Nの18倍

 とします。

皆さんはどちらの車を選びますか?

筆者は間違いなく車種Nを選びます。

中には、車種Pが危険とわかっていてもPを選ぶという人がいるかもしれません。

そういう人は、それでよいのです。

しかし、ブレーキが利かなくなる危険性があることを伏せたまま車を販売するのはアンフェアです。

命にかかわるような危険性は、あらかじめ消費者に周知徹底されなければならないのです。

就業形態によって過労死に至る確率が異なることをちゃんと周知徹底しよう

就業形態によって過労死の危険性が異なるという問題についても同じです。

過労で命を失うという観点において、正社員は非正社員に比べて18倍も危険な働き方です。

ちゃんとその危険を知った上で、それでも給料が少々良いので正社員で働きたいと願う人はそうすれば良いのです。

しかし、このように重要なことは国民にちゃんと知らされなければならないのです。

政府は法律に基づいて過労死白書を作成しています。

過労死白書を作成しておきながら、客観的データに基づくこの重要な事実を、国民にちゃんと周知徹底しないというのは、税金の無駄遣い以外の何物でもないでしょう。

まとめ

 原告は今回の判決を不服として控訴する意向を示したそうです。

しかし、非正社員の方々は今回の判決に決して悲観しないでください。

 

非正社員は正社員に比べて、お金では換え難いはるかに多くのものを享受しているのですから