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働くルールを理解してこれからの働き方について考えよう!

残業時間の上限規制「100時間未満」とは「99時間」のこと

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「働き方改革」は結局お題目に過ぎなかった 

昨日、残業時間の上限規制を巡り、繁忙月に例外として認める残業を「100時間未満」とすることで固まりました。

www.nikkei.com

当初、経団連が月100時間以下、連合が月100時間未満を主張していて、首相裁定によって月100時間未満で決着したという形をとっています。

連合にせよ、首相にせよ、月100時間以下でなく月100時間未満と主張することで、「働き方改革に一応まじめに取り組んでいますよ」という空疎なアピールをしただけですね。

筆者は、ニュースの映像を見ましたが、完全に出来レースのようにしか見えませんでしたね。

特に連合は、月99時間の残業を容認するとは、労働組合にあるまじき姿ですね。

そこまでして、守りたかったものは何なのでしょうか?

月100時間未満が認められた以上、法改正後、特別条項付き36協定において99時間という文字が躍ることはほぼ確実でしょう。

高橋まつりさんの母、幸美さんのコメントが全てを物語っている

 これを受けて、高橋まつりさんの母、幸美さんがコメントを発しました。

www.asahi.com

筆者が特に印象に残った箇所を抜粋します。

人間は、コンピューターでもロボットでもマシーンでもありません。長時間働くと、疲れて能率も悪くなり、健康をそこない、ついには命まで奪われるのです。

 このコメントは、本質を鋭く突いています。

先日トヨタ自動車系列社員の過労死裁判を紹介しました。 

www.mesoscopical.com 

労働基準監督署は、亡くなった三輪さんの直近1か月の時間外労働時間が100時間を超えておらず85時間と認定したため、労災保険不支給の決定をしました。

しかし、2017年2月23日、名古屋高裁は、「直近1カ月は100時間超の時間外労働に匹敵する過重な負荷だった」と労災を認定する判決を下しました。

国も上告を断念し、判決が確定しました。

このように、直近1か月の時間外労働が100時間未満という場合でも過労死と認定する裁判例が存在するのです。

厚生労働省の過労死認定基準について

また、厚生労働省の過労死認定基準においても、単純に直近1か月の時間外労働が100時間を超えているかどうかだけで、過労死を判断するわけではありません。

 人間の体は機械と違うので、時間外労働時間が99時間から100時間になった途端に、過労死発症リスクが急激に高まるわけではありません。

長時間労働は、脳血管疾患や虚血性心疾患と強い関連があり、これらの発症リスクは、時間外労働が月45時間を超えると徐々に強まるとされています。

また、これらの発症リスクは、単に労働時間だけでなく、不規則性・労働密度・頻繁な出張・深夜勤務・温度や騒音等作業環境条件・精神的緊張などさまざまな負荷要因と深い関わりがあります。

厚生労働省の過労死認定基準にもはっきりとそのように記述されています。

 政府は、今回の残業時間100時間未満という上限規制と、先日の名古屋高裁での裁判例や厚労省の過労死認定基準との整合性をどのように説明するのでしょうか?

国際競争力との関連について

 経団連は国際競争力を鑑みて100時間という数字に拘っていたようです。

しかし、果たして、長時間労働をすることが国際競争を勝ち残ることに繋がるのでしょうか?

外国の事例を見れば、長時間労働と国際競争力との相関性が無いことは明らかです。

日本の労働生産性はOECD各国の中で低い位置にあり、むしろ、これを上げることのほうが、国際競争力の強化につながるのではないでしょうか。

長時間労働から抜け出せない真因

では、長時間労働の弊害がこれだけ盛んに言われているのに、なぜそこから抜け出せないのでしょうか?

それは、大企業を中心として、未だ閉鎖的な内部労働市場によって雇用調整を図っているからです。

この雇用慣例を改めない限り、長時間労働はなくならないのです。

まとめ

 今回の決定で、「働き方改革」というチャンスを逃してしまいました。

働き方改革の一丁目一番地は長時間労働の是正であり、そのためには雇用の流動化が不可欠です。

しかし、またもそこにメスを入れずに中途半端な結果に終わってしまいました。

これは、裏を返すと、終身雇用が安定した働き方だという幻想が未だ根強く残っていることの証でしょう。

しかし、筆者は終身雇用が安定した働き方だとは決して思いません。

 

終身雇用を維持しようとすると、企業の国際競争力は低下し、企業はますます終身雇用を維持できなくなるというジレンマに陥るでしょう。