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厚生労働省による雇用のミスマッチ解消のための制度とは

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はじめに

 昨日3月1日から、2018年春に卒業予定の学生の企業説明会が解禁されました。新聞報道を見ると、学生らの働き方への関心は高く、「残業時間はどのくらいあるのか」といった質問が相次いでいるそうです。

学生「働き方」への関心高く 就活スタート:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)

 一方で、次のような報道もあります。

【就活本番】電通志望の学生に聞いてみた「過労死気にならない」 - 産経ニュース

 中にはそういうレアなケースがあるかもしれませんが、いったい何人の学生に同様の質問をしてそういう答えが返ってきたのか、産経新聞さんにはちゃんとしたデータを示してもらいたいと思います。

 このように様々な報道が飛び交う中、今回は厚生労働省が進めるある一つの制度を紹介します。ブラック企業の完全な予見に繋がるとは限りませんが、積極的に活用してください。

就労実態等に関する職場情報を企業に求めることができる制度について

 厚生労働省は、次の資料にあるように新卒者の雇用のミスマッチ解消のためある取り組みをしています。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000110450.pdf

 ここでは、法律的なややこしい話は極力避け、この仕組み概要について説明します。

新卒採用を予定する企業に対する努力義務

 まず、新卒採用を予定する企業に対しては、幅広い職場情報の提供の努力義務が課されています。努力義務なので、提供しなければ直ちに違法となるわけではありません。しかし、努力義務があるのに、積極的に当該情報の提供を行わない企業は、「何かあるのかな?」と思って差し支えないでしょう。では、具体的に、幅広い職場情報とは何かを説明します。

職場情報の提供項目について

 まず下の図を見てください。 

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 企業がこれら12項目のうちどれくらい情報提供を行っているのかを確認してください。 

希望する企業が、上記の情報の全部または一部の開示を行っていない場合 

 企業によっては、上記12項目について開示を行っていない場合があります。そのときは、次のような3通りの手続きを取ることによって開示請求を行うことができます。

  1. 求人の紹介を受けたものまた受けようとするもの(応募の前段階の学生)が直接開示請求する
  2. ハローワーク、特定地方公共団体、職業紹介事業者が開示請求する
  3. 応募者が直接開示請求する

 ハローワーク、特定地方公共団体、職業紹介事業者が取り扱っている求人であれば、2が最も良い方法でしょう。そうでない場合は、直接企業に開示請求するしかありませんが、なるべく早い段階に情報を入手しておくことが望ましいので、3の方法はあまりお勧めしません。1の場合、プレエントリーの際に書面や電子メールで情報提供を求めることもできますが、説明会等で企業の採用担当者に直接口頭で情報提供を求める方法が最も良いでしょう。

開示請求を行った場合の対応

 開示請求が行われた際、企業は上の表の(ア)~(ウ)うちの1つ以上の情報提供が義務付けられています。1つ以上ということは、(ア)~(ウ)全ての情報提供を求めたのに対し1項目の情報提供だけであったということもあり得ます。この場合は、不誠実な対応とみなして差し支えないでしょう。

 ただし、敢えて(ア)~(ウ)うちのどれか一つを選べと言われたら、筆者は間違いなく(ウ)を選択します。特に、⑨は最も重要な項目です。具体的な数値についてですが、少ないことに越したことはありませんが、現在の雇用慣例の下で0ということはあり得ません。その場合、月45時間を超えているかどうかを目安に判断してください。

 この数字は、本サイトでも何度も出てきましたが、厚生労働大臣が定める労働時間の延長の限度等に関する基準(限度基準)です。業種や職種によって異なるので一概に言えませんが、この数字を超えている場合は特別条項付き36協定を労使間で締結している可能性が高くなります。

まとめ

 筆者は、そもそも新卒一括採用という時代に合わない採用プロセスを撤廃すべきという考え方に立脚していますが、現在もそのような雇用慣例が色濃く残っている以上仕方ありません。新卒の就活生にとっては、最初に入社する企業がその後の職業人生に大きな影響を与えることは間違いありません。したがって、なるべく一人でも多くの就活生に上記のような情報提供の制度を活用してもらいたいと思います。