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中間管理職はなぜ労基法の労働時間・休憩・休日規定が適用されないのか

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関電課長の過労自死について

 関西電力高浜原発の運転延長を巡り原子力規制委員会の審査対応をしていた関西電力の男性社員が過労自死し、敦賀労働基準監督署が労災認定をしていたことが昨年明らかになりました。この男性社員は、いわゆる管理監督者の立場にある人でしたが、近年管理監督者の過重労働も社会問題となっています。関電の事例は、電通や三菱電機の36協定違反による書類送検事例とは性質が違います。今回は、労働基準法において管理監督者がいったいどのような扱いを受けるのか考えます。

関電課長の労災認定に至るまでの経緯

  • 関西電力の工事関係の課長職の40代男性が関西電力高浜原発1、2号機の運転延長を巡って原子力規制委員会の審査対応をしていた
  • 2016年2月の残業時間200時間
  • 自殺前日までの19日間の残業時間も、少なくとも150時間前後とみられる
  • 2016年4月20日に過労自死
  • 敦賀労働基準監督署が男性の過労自死を労災認定
  • 参照元:『The Huffington Post』2016.10.20

www.huffingtonpost.jp

労働基準法において労働時間等の適用除外者をどう規定しているか

 労働基準法に次のような規定があります。 

労働基準法41条  

この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一  別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

二  事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

三  監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

 この条文は、事業の種類や業務の性質上そもそも時間による労務管理が適さないため、労働基準法上の労働時間・休憩・休日の規定を適用しない(適用除外する)ことを定めたものです。 第一号から第三号まで順に見ていきます。

 ㈠農業・畜産業・養蚕業・水産業に従事する者

 天候に左右される仕事や生き物を扱う仕事です。台風や集中豪雨などの天候不順や家畜伝染病の蔓延などのときは、時間に関係なく咄嗟の作業に対応せざるをえません。海の状態も然りですよね。漁師さんに、始業何時、休憩何時から何時まで、終業何時などという規則正しいことは言っていられません。これらの場合はある程度は仕方がないことなのかもしれません。

 ㈡監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

 前者は、管理監督者の地位にある者のことです。後者は、政治家や企業の役員といった時間管理に適さない人の秘書の仕事です。そもそも時間管理に適さない人と活動が一体不可分なわけですから、ある程度は仕方が無いことかもしれません。

 ㈢監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

 監視の業務に該当するには、一定の部署にあって身体的・肉体的疲労の蓄積が少ないことが条件です。例えば、守衛さんや今は少なくなりましたが踏切番の人が該当するでしょう。

 断続的業務とは、作業自体が間歇的で手持ち時間の多いことを常態とする業務をいいます。例えば、寮の管理人さんや政治家・役員の専属ドライバーが該当するでしょう。

 いずれにしても、この項目に該当するか否かは、行政官庁(労働基準監督署)の許可が必要です。従って、勝手にこれらの人を監視・断続的労働だと決めつけて残業代なしというわけにはいきません。あくまで、就業の実態として判断されます。

法41条の管理監督者が法律の抜け穴となりやすい

 法41条において、もっとも法律の抜け穴とされているのが、㈡の監督若しくは管理の地位にある者です。法律上は、管理監督者を「労務管理について経営者と一体的な立場にある者」と定義しています。経営者そのものではないけれど経営者に限りなく近く、部下の労務管理もしている人たちです。例えば、取締役〇〇本部長みたいな肩書ではないけれど、〇〇課長くらいの地位にある人のことです。俗にいう中間管理職の人たちです。定義もあいまいで行政官庁の許可も必要ないため、ここが一番盲点です。

 記事によると、今回の関西電力で過労自死した方も課長職で労働基準法上の管理監督者の地位に該当する人でした。経営者のように重役出勤できれば話は別ですが、中間管理職の方で重役出勤している人をあまり見たことがありません。

 その一方で、中間管理職の方は経営者と一体的な立場の者と見なされ、労働時間・休憩・休日に関する規定の適用が除外されています(但し、深夜業における割増賃金および年次有給休暇に関する規定は適用されます)。

 このように宙ぶらりんな状態が、長時間労働に陥りやすい原因となっているのです。