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大企業と中小企業の雇用慣例におけるダブルスタンダード

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雇用慣例におけるダブルスタンダードとは?

前々回・前回に渡って、正社員の定義と特徴について述べました。

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正社員の定義を再掲すると、

  1. 定年まで雇用が保証されていて
  2. フルタイムで
  3. 就業場所の企業に直接雇われている

という点ですが、2と3については大企業でも中小企業でも同じです。

しかし、1については企業の規模で趣が異なっています。

この点が、大企業と中小企業の雇用慣例におけるダブルスタンダードの決定的な特徴になっているのです。

企業別労働組合の存否がダブルスタンダードの要因

では、1について大企業と中小企業で趣が異なるのはなぜでしょうか?

それは、企業別労働組合の存否が起因しているのです。

 次の条文をご覧ください。 

労働契約法第16条

 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 いわゆる、解雇権濫用法理を規定した条文です。

日本食塩製造事件最高裁判決(最高裁昭和50年4月25日)を労働契約法の成立に際し、改めて条文として成文化したものです。

 解雇権濫用法理とは、客観的・合理的理由社会通念上の相当性を使用者が主張・立証しない限り、権利を濫用したものとして裁判所はその労働者の解雇を認めませんよということです。

客観的・合理的理由には具体的に次のようなものがあります。

  • 傷病等による労働能力の喪失
  • 能力不足や不適格性
  • 非違行為
  • 経営上の理由(整理解雇)
  • ユニオンショップ協定によるもの

 また、社会通念上の相当性の判断においては、上記の理由が軽微な物で過酷に過ぎないかや、他の労働者と均衡がとれているかという点が最大限に考慮されます。

使用者側がこれらの点を主張立証できないと、解雇無効と判断されます。

もちろん、大企業であろうと中小企業であろうと主張立証責任が使用者側にあることには何ら変わりはありません。

しかし、ここからが少し事情が異なってきます。

大企業においては、企業別労働組合といって、その会社ごとに労働組合が存在します。

終身雇用を前提としていますから、複数の企業が一体となった組合が形成されにくいのです。

電機・鉄鋼といった産業別の労働組合が発達していったヨーロッパと異なります。

大企業における労働組合は資金力も数の力もあるため、使用者が組合員たる労働者を解雇するのは容易ではありません。

 一方、中小企業において企業別労働組合は殆ど存在しません

解雇を巡って使用者と争いが生じた場合、背後に大きな組合組織の無い中小企業の労働者は自力で裁判で戦わなくてはなりません。

大企業では訴訟リスク回避のために解雇規制を守る一方で、一部の中小企業では解雇規制を無視しているというダブルスタンダードがよく言われるのはこのためなのです。

「すき家」で出来たことが「電通」や「東京電力」や「三菱電機」で出来ない理由とは何か

 ここまで、「正社員とはそもそも何か」・「大企業正社員の雇用慣例とはどういうことなのか」・「大企業正社員と中小企業正社員との違いは何か」ということについて考えてきました。

ここで初めて、「すき家」で出来たことが「電通」や「東京電力」や「三菱電機」で出来ないことの説明ができます。 

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「すき家」の場合、アルバイト雇用主体のため雇用が極めて流動的です。

長期雇用を前提としないために、労働条件が悪ければアルバイトは比較的容易に辞めていきます。

しかし、「電通」や「東京電力」や「三菱電機」といった大企業の場合は従来型の雇用慣例を維持しているため、雇用が硬直化しています。

つまり、正社員として同等の仕事が探しにくいから、なかなか辞められないのです。

そして、なかなか辞められないから、体を壊すほどの長時間労働に耐えてしまうのです。

全ては、時代錯誤の雇用慣例に問題があったのです。

労働条件が悪ければすぐに辞めたほうが、つまり、雇用を流動化したほうが却って労働条件を改善しやすいことは、「すき家」のワンオペの件ですでに立証されていることなのです。

解雇権濫用法理を無視するブラック企業

先ほど、中小企業の一部に解雇権濫用法理をも無視するような企業が存在することを述べました。

この種の企業ももちろんブラック企業に該当します。

しかし、中小企業に勤める多くの労働者は上記のようなダブルスタンダードの要因を理解していないため、このような企業においてもなお

退職するという選択肢を採らず長時間労働に耐えている場合があります。

万が一この種の企業に勤めてしまった場合、一刻も早く退職することをお勧めします。

次回は、この種の企業の持つ特徴とその対策について考えたいと思います。